第27話 あっちもこっちも修行中
第七位階上位
殴られる事おおよそ四半刻。
筋肉組のカリキュラムも大詰めとなり、既に闘気を十全に扱える仙人達は組み手等初めている。
僕の配下達もやはりレベル300を超えているだけあり、手解きを受けて直ぐに闘気または仙気を練り上げる事が出来る様になった。
ヴァルハラナイツの彼等は未だ微妙と言わざるを得ないが、本来なら一朝一夕で身につく物では無いので仕方ない。
操気法の基本的な鍛え方。心の在り方。そう言った事を学び、日々実践して行く事が大切だ。
……要するに、闘気法を習得するのも魂だけで行動出来る様にするのも、死ぬ気で毎日戦い続けるのが一番効率的と言う事である。
問題があるとすれば、その死ぬ気。100%の力を発揮し、更にその限界を越えんとする意思をその身に宿す事が出来るか否かだが……出来てしまう者は出来るし、出来ない者は追々出来る様になれば良い。
差し当たって、各員と対話を行い、レーベにはカリキュラム終了後に裸王と相対する様に指示を出した。
◇
クラブの王は僕をぶん殴る事がお気に召したらしい。
最後は肩で息をしながらも、清々しい笑顔で金棒を地に下ろした。
クラブの王曰く、とぉっても〜、気持ちよかったですぅ〜。
……そりゃ良かった。此方も殴られた甲斐があると言う物だ。
気配から察するに、クラブの王には最低でも10人の弟妹がいるので、長女として、国主として何かと鬱憤が溜まっているのだろう。
他の子達も、時に爆散し、時に亀になり、或いは喚き散らし、稀に喜び、色々と地獄絵図ながらも無事試練を突破した。
その後、満足気に消え去ったクラブ共の城を漁り、ネズミがチョロチョロしている街に戻った。
おそらく短いであろう道程の間に、今回の戦果を整理する。
先ず、得られた物は、ニコラメダル13枚。
そして、元々筋の良いサンディアは、血塗れでキャッキャッしながら仙気をマスターし、迅斬の領域に大きな一歩を踏み込んだ。
良き師に鍛えられていたレイーニャも、物理はともかく操魔力、とりわけ魔力吸収において成果を得た。
操魔力においてかなり器用なクラウは、涼しい顔で早々と吸収、分解を行える様になったし、ルカナもなんだかんだ言って出来る奴なので、今回の事で硬属性仙気のコツや打属性への対抗手段を得られた様だ。
同じく、魔力操作技術に嗜みがあるルーレンやリーンは操魔力を鍛えられたし、無口で脳筋の疑いが大きいセロとロニカは仙気と言う面でそれなりの成長を得た。
ワーストは茉莉花だが……彼女等母娘は肉体性能が他と比べて見て分かる程に違うので、成長と言う観点ではもう放って置いても良い様な気がする。
と言うか、魔物型の子は肉体が局所的に魂魄の性能を超えている場合が多いので、時間さえあれば鍛えなくても一定量の力をつける事が可能なのだ。
例えば、重力を操作する力を持つ角。例えば、膨大な魔力を保持しそれを操作する事が出来る宝石。竜や亜竜の肉体はそれそのものが大きな力を持ち、甲殻持つ魔物のそれは硬属性の仙気を宿す。
それ等と同じ様に、睡蓮と茉莉花は尾に力が宿っていて、僕の経験上それは十分育てば余裕で仙気に匹敵する力を持つ様になる。
まぁ、彼等彼女等の強化は後で纏めて行なう予定なので、今回は次回への初歩の予習だと思って貰おう。
散々ぴーぴー言ってたけど……次は喚く暇も無いだろうね。
それにしても……改めて考えると緑系統って結構洒落になってないね。
僕が青系統なのもあって青の事ばかり考えていたけど……緑ってつまり、十分な資材と緑への適正さえあれば、レベル1でも下級の神と張り合えるって事だよね?
……そう言えば、配下になった時にエクストラ評価で緑の瞳討伐とかどうとか書かれてた子がいたな。
…………ちょっと後でお話ししようか。
◇
地表を滑る様に移動する事おおよそ1キロ。
素早く移動すると視覚的に凄まじい違和感を感じるのは、街の至る所で空間が湾曲し、場所によっては一歩が数十メートルにもなる地点があるからだ。
それでも普通に歩いたのなら僕個人の創造力により違和感無く収まるのだろうが、高速移動するとそこらへん綻びが出るらしい。
そんな調整不足な街を抜け、スペードの城に到着した。
大きく開かれた門の前には、スペードの王が立っていた。
威風堂々たる立ち姿。その細身から発する威圧感はレーベをも超えている。
刃の様な気を立ち昇らせるスペードの王は、そっと目蓋を持ち上げた。
「……やぁ、ユキくん。壮健そうで何よりだよ」
ニコッと微笑みこそすれ、その闘気は決して緩まない。
他の王に対してツッコミをしていた者と同一人物とは思えない程の変わりようだ。
強い言霊を宿す声に対し、僕も言霊を使って相対する。
「——直ぐやるのかな?」
ゾワリと闘気が昂ぶった。
僕の言霊に反応してか、スペードの王は笑顔を歪める。
今にも斬りかかりそうな張り詰めた気を、どうにか抑え込んでいる様だ。
……なんかちょっと、込める量を失敗したらしい。
「ふ、ふふ……場所を変えよう」
スペードの王は、ピクピク動く口元を隠す様に背を向け、歩き出す。
そんなスペードの王に対し、僕はちょっと申し訳なく思いながら、刺激しない様に、背後に立たない様に気を付けつつ後を追う。
……言霊の操作も慣れればそう難しく無さそうだな。





