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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜超天才美少女(?)が、世の理を解き明かし塗り替える!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十三節 鈴守神事の攻略

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第14話 照れもしないユキが元凶

第四位階中位

 



 待つ事数分。


 気配を感じてスマホから顔を上げると、ちょうどミサキが角を曲がってやって来る所だった。


 白をベースに臙脂色の花が舞う柄の浴衣を着て、同じデザインの巾着を持ったミサキは、いつもと違って髪を下ろしており……大人びた印象を受ける。


 ……馬子にも衣装ってこう言う事か? いや失礼か。



「あ、あのっ、タク……ま、待たせちゃった、かな?」

「いや? 掲示板見てたからな、大して待ってねぇさ」

「そ、そう……タクはほんとにゲーム好きよね……」



 そう言ってミサキは微笑んだ。

 服装のせいか髪型のせいか、その笑みも何処か大人びて見える。


 ……こう言う時はあれだろ、褒めれば良いんだ。ユキが言ってた。



「浴衣、似合ってるぞ。可愛いよ」



 そう言いながら笑い掛け……これはそう。本当に無意識と言うか、最近ちび達と触れ合う機会が多かったのと、ユキ程じゃないがミサキの背が少し低かった事で、頭を撫でそうになった。

 同い年の女子の頭を撫でるとか、子供扱いすると怒る子もいるらしい、咄嗟に手を逸らし、ミサキの髪を一房軽く持ち上げる。


 ——そして失態を悟った。


 ミサキが顔を真っ赤にした事で。



「なっ、なななっ……!?」

「おっと、すまん」



 髪は女の命とか言ってたしな、勝手に触れたのはマジで悪かった。

 悪いと思ったら直ぐ謝る。これ大事な。


 まぁ、何が悪いのかは今一分からんが、そんな時は顔を見せない様にしろとユキに言われている。

 本気で理解して謝る顔をしていないと駄目なんだそうだ。


 ミサキに背を向けて、下駄を履く。


 何でも、着物には草履で浴衣には下駄が一般的とからしい。

 今俺は浴衣だから、巫女のおば……お姉さん方も下駄を準備してくれていたんだろう。


 ……っうか、謝って直ぐに離れたのは駄目だったか? いや、ミサキも直ぐに並んだしOKだったか。



「……ミサキは境内は初めてだったか?」

「え? う、うん。と言うか、お祭り自体あんまり行った事無くて……」

「そっか」



 うーん、ミサキって結構ぼっち体質だよなぁ。この前のフードコートも初めてとか言ってたし。

 ま、初めてならやっぱり最高に楽しませてやらねぇとなっ!



「そんじゃあミサキ。今日できっと、祭り、好きになるぜ」



 そう言って俺は手を差し伸べ、おずおずと伸ばされたミサキの手を掴んで、立ち上がらせた。


 そのまま手を引いて玄関から出た所で、気付いた。ミサキの顔が赤くなっている事に。


 な、なんでだ? ……手? そ、そうか……くそ、俺も学ばねぇな。

 子供扱いされると怒るから頭撫でるのを回避したのに、手を引っ張ったりしたらそれこそ怒るだろうよ。


 そうと理解したら、引かれるままだったミサキから直ぐに手を離した。



「ぁ……」



 ミサキが小さな声を上げた気がしたが、訝しんで顔を見ると、何でも無い! と大きな声を出して歩き出した。

 まぁ、良いか。


 カランコロンと音を立て、ミサキの後を追いかける。



◇◆◇



 お祭り。


 同い年くらいの子達が綺麗な着物を着て、楽しそうに遊んでいるのを何度か見た事がある。


 昔は全然素直になれなかったから、興味の無い振りをしてたけど……どうしてかな? 今は新しい事を見る度に、楽しそうでやりたいと思える様になった。



 でも、祭り、やっぱ駄目ね。楽しいは楽しいけど……人が多いし、なにもかもちょっと値段が……焼きそば1パック600円とか、自分で作れば200円も掛からないし。


 ……でもでも……なんか、楽しい。


 ……やっぱり…………た、タクが隣にいるから、かな……。



 タクはどう思ってるんだろう? そう思ってチラッと視線を上げると……いなかった。



「え? な、はぐれ……あれ?」



 ちょっと慌てて周りを見ると、タクは少し後ろの櫓の前にいた。


 近づいて見ると、どうも名札の所を見ているらしい。


 掛かってる札は2枚。


 セイトって言う確か、リア充っぽい人と……青い札。名前が書いて無いけど……うーん?



「チッ」



 その音は喧騒に紛れて消え去る前に、私に届いた。


 人波を避けながら早足で歩き出したタク。

 いつもと殆ど変わらないのに、その表情は何処か怒っている様で、それでいて……。


 なんでかは分からない。

 ただ、今手を伸ばさないと、置いていかれてしまう様な、そんな気がした。


 歩き去ろうとするタクの手を捕まえて——



「ま、待って」



 ——視線が合う。


 やっぱり、その瞳は何処か寂しげだった。



 でも、直ぐにいつものタクに戻った。



「……すまん。早かったか?」

「……ううん。人が多いからさ……はぐれない様にって」

「……そう、だな」



 タクは私の手をぎゅっと握った。


 なんで怒ったのか、何でちょっと寂しそうだったのか分かんないけど……今は大丈夫そう……良かった。



「なぁ、ミサキ。射的、やろうぜ」



 ニッと楽しそうに笑うタクを見て、私はそう思った。



◇◆◇



 掛けられたセイトとユキの札。


 きっと今、ユキはセイトの好感度稼ぎをしてるんだろう。

 薄暗い櫓の上で、2人っきりで。


 それがユキのやり方だ。邪魔は出来ない。



「チッ」



 何故か無性に腹が立つ。


 そう、ユキだ。

 そうやって、色んな奴を仲間にして……それが鈴守の家訓だってのは分かるがよ……別に守んなくても良いだろ。俺達がいるのに。


 ノイズが走る様に、反論の言葉が浮かぶ。

 ユキは、鈴守は合理的だ。仲間を増やす事は何もおかしな事じゃない。何よりセイトの奴は割と強い。



 ——あぁ、でも



 駄目だ、考えるなっ。何処かで誰かがそう叫ぶ声が聞こえた気がした。



 ——でもよぉ



 また、またかよっ。と誰かが怒鳴り付ける。



 ——俺達は



 またそうやってっ。



 ——そんなに



 甘えるの——


 ——役立たず——



「——ま、待って」

「っ!」



 視線が合う。


 俺の手を掴んだミサキは、どうしてかとても苦しそうで、それなのに心配するかの様に俺の目を見詰めて来た。

 そんなミサキを見ていると、原因のよく分からない苛立ちが薄れていった。


 完全になくなった訳じゃあ無いが……そう、今はミサキを案内してるんだった。



「……すまん、早かったか?」



 どうも冷静じゃなかった。

 案内するって言ったのは俺なのにな。


 ミサキは少し困った様に微笑んだ。



「……ううん、人が多いから、さ……はぐれない様にって」



 ミサキは控えめに俺の手を握る。


 はぐれない様に、か。まぁ、そこまでは混んで無いが……理に適ってはいる。

 と言うか……何つーか、心配掛けた感じだな。



「……そう、だな」



 謝る意味、ちゃんと案内する意図も込めて、ミサキの手を強く握る。


 そういやミサキは可愛い物が好きとかユキが言ってたな……。


 それとなく周りを見回すと、目に入ったのは射的屋。そこに置かれた小人熊のぬいぐるみ。

 好きな物をプレゼントするのは好感度稼ぎに良いらしいし、詫びの為にもあれを取るとするか。



「なぁ、ミサキ。射的、やろうぜ?」



 ラッキーな事にあれは簡単に取れる奴だ。


 俺は勝利を確信し、ニヤッと悪い笑みを浮かべてミサキに問い掛けた。



 

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