第36話 原初の人型
第七位階上位
メロットと少女が激戦を繰り広げてる一方で、ウルル班が大広間に到着した。
立ち上がった人形は姿を変え、若い細身の……性別がイマイチ分からない人間になった。
髪は短く、地は白だが毛先は金色っぽくて、瞳の色は黄色。
土、砂、聖の使徒の特徴を備えている。
そんな優男? は微笑みながら、ゆったりとした足取りで階段を下る。
珍しく接近戦をするメロットを見て目をパチクリとさせていたウルル班は、敵が動き出した事で改めて優男? に向き直った。
……ざっと見た感じ優男はこちらの敵程強くはない様だし、ウルル達で十分対処可能だろう。
ウルル班が戦闘を開始して間も無く、今度はミルちゃん班が入ってきた。
相対する敵は、鬣の様な長い髪を持つ少女。
地が金で毛先が白い髪の少女は、その赤い瞳を光らせて、ミルちゃん班に襲い掛かった。
それと時を同じくして、アルフ君班が部屋に入る。
敵は、水色と黒の短い髪に緑の瞳を持つ女。
まぁ、どちらも対処可能なレベルだろう。
4つに仕切られたこの大広間。
その四方で、4人の王とその挑戦者達の激戦が、今——始まった。
◇
メロットが機能停止をして数分後、代わりに送り出した3人がやられた。
死なない様に注意していたから生きてはいるが、これ以上の継戦は不可能だろう。
結局削れたエネルギーは使徒2体分程度。
他は順当に戦えている事から分かる通り、この少女は頭一つ抜きん出て強い。
勿論レベルは同じだが、魔力総量では他より2割程多く、何より魔力コントロールや体捌きの技量がずば抜けて高い。
まぁ、ずば抜けて高いと言っても、見た感じ他のゴーレムの1.5倍程度の技量。
此方側で特に強いウルル、ディルヴァ、メロット、アルフ君がおおよそ1.2〜1.3倍くらいなので、オリジン・ゴーレム全員が極めて高い戦闘技術を誇っていると言う事になる。
魔力量は単身で最低でもクリカくらいあるし、それと技術とサイズを考慮すると……ゴーレムは機神並の脅威、僕が相対する少女はアヴァロン並の脅威と言えよう。
その程度なら全力全開で戦う必要はない。僕自身に修行はほぼ無意味だし、さっさと捻り潰してしまおう。
僕はインベントリから星珠を3つ取り出した。
……まぁ、ちょっとくらいなら遊んでも良いよね。
◇
訂正。
オリジン・ゴーレムの脅威は機神を遥かに超えていた。
激しい拳と蹴りの応酬。
凡ゆる魔法は有利属性で相殺し、大規模魔法の発動を阻止しつつただの肉弾戦で遊んでいた。
戦闘技術は極めて優秀。その戦闘力はシャングリラをも越えている。
ただし、体術と体術のぶつかり合い、即ち超近接戦闘は、ミリ単位のズレが致命傷に繋がる極限戦域だ。
得物が長くなれば長くなる程リスクが下がって行くモノで、体術は戦闘技術の差が如実に現れる。
戦闘技術は優秀であるが、僕の脅威では無い。
そう判断を下そうとした刹那、その魔法は放たれた。
なんて事はない水槍。
十分な有利属性で相殺を試み——失敗した。
風の槍を貫き、続け様に放った火、土、水の槍を粉砕して尚減衰せず、魔力をごっそり使ったアルカナムでようやく受け流す事が出来た。
おかげさまで防御に続き戦域の離脱を余儀なくされてしまったよ。
『ケヒヒ、神気を撃ってきよったのぉ。嫁御殿、当たると死ぬぞ?』
『僕も一応使えるし、当たっても死なないさ』
ニヤニヤしてるベルツェリーア。
使えると言えども、神気はあまり使いたく無いのが本音だ。
神気は僕の意思で練り上げる事が現状出来ないし、総量も幾らあるか分からない。
ロジックポイントなら使っても良いが、備えを考えるとあまり削られるのも好ましく無い。
……そも、神気とはなにか?
今までに得た情報だと、神気は凡ゆる全ての生物が魂に内包している力と言える。
神気を宿した攻撃は、基本的に魔法では防げない。
——質が違い過ぎるからだ。
つまり、神気は仙気を更に練り上げた高質の力。よって仙気を練り上げる事で神気を得る事が出来る。
それと同時に、神気は信仰によって得る事も出来た。
凡ゆる生物はその内に神気を持ち、信仰によって神へ神気を捧げる。
それはつまり……全ての生物は自力で神気を練り上げていると言う事になる。
つまり僕にも神気を練り上げる事が出来る。否、出来ている筈だ。
魔法の修行と同じ。
神気を感じられるかどうかが鍵となる。
そして僕はそれを感じられる筈だ。
精霊帝の名前を移す時、大きな力の移動を感じた。
生物の魂魄に触れた時、その内部に魔力とは違う力を感じた。
フィールド制限の壁に触れた時、それは魔力では絶対に破れない壁であると理解した。
それらは全て神気だ。
そしておそらく、神気は何処にでもある。
大気中に存在する微細な、然りとて膨大な神気を感じろ。
幸い足掛かりはある。
先程敵が放った神気が。
幸い経験がある。
神に至った経験が。
幸いツールがある。
神気を操る加護が。
『ベルツェリーア。シュフォール。キット。少し時間を稼いで』
『ケヒヒッ、任せておくのじゃ!』
『カラカラ、シュー!』
『……』
楽しそうに笑うベルツェリーアと、謎の声を発するシュフォール、踏ん反り返るキットに少女の相手を任せ、僕は魔覚を発動させた。




