第7話 居なくて良い≒居るだけで良い
第七位階上位
午前中の謁見は、やはり特に問題は無かった。
縁が浅いと言うのもあるし、基本的にはただのご挨拶。
私は〜出身の〜です。ご挨拶の栄誉を賜りうんぬん。心ばかりの品を献上致したくかんぬん。
一般の応募から10組、企業等から10組、アーティストやアスリート等の著名人から10組。
そのどれもが、鈴御霊とは即ち『三寸鳴金鈴珠』だと思っているだろう。
ほぼ全員が鈴巫女へ視線を向けているのがその証拠だ。
結局、僕が特に気にしておくべき相手は今回はいなかった様である。
下の社務所で売ってるお守りよりも良い物お守りを渡して、彼等には自由にして貰う事となった。
午前謁見の面々は、観光名所である奥響市の鈴守御用達の宿でおもてなしだ。
のんびりと昼食休憩を取り、次は少し重要性の高い謁見である。
鈴巫女はリナとリンカちゃん。護鈴はアマネとケイとミユと柳茂吉ことしげじいちゃん。
何も問題が無ければ、ティータイム休憩まではこれで通す予定だ。
◇
午後前半の謁見は、通算2度目だったりサトリが縁を繋いだ者の中でも比較的重要ではない取引相手の謁見である。
比較的企業が多く、次点で資産家。あとは……武人の様な立ち居振る舞いを持つ数組の老若男女。
彼等は、滞在中は天界の館で過ごして貰い、サトリ達が送って来たプロの侍従やその卵達に世話をさせる。
明らかに一般人ではないタイプの老若男女は、同じく一般人じゃない大人達が対応する事になっている。
そんな前半の謁見をこなし、特にこれと言った事件や注意事項はないまま終わった。
正装のままティータイムで貢物のお菓子と紅茶を楽しみ、後半。
午後後半の謁見は、冠成以外の諸外国から来た官僚達等が中心だ。
政治屋達は忙しい身の上なので、比較的仲のいい国等で纏まって謁見し、その後直ぐに東冠都へ取って返して人民向けに友好アピールをし、その後しばらく政を行い各国へ帰還する。
そんなこんなでやたらと長く感じられる謁見は終わりを迎えた。
いつも思う。
——僕居なくて良いよね。
大事な話は夜に改めてする事になってるしね。
その上件の大事な話も、サトリとマナカがあちこち回って話を付けているので、僕には全く仕事が回って来ない。
◇
明日の祭りに備えた最終確認を終え、各員の本日の業務は終了だ。
鈴守はホワイトなので残業はありません。
後は、音葉決起会なる高校の前夜祭。
鈴守から差し入れした高級食材、紅玉や翠玉が嵐を巻き起こしたり。
各部活が本番でやる歌や演奏やダンスを始めたり。
最後は何故か校歌を歌って締めたり。
そうかと思えば、割り当てられた各自の部屋やパーティールームで二次決起会が行われている。
……ちゃんと防音だから良いけど、君らの泊まっている館には各国の著名人が泊まってたりするんだよ?
ちゃんと防音で広いから大丈夫だけど。プロの用心棒もいるからね?
まぁ、毎年問題は起こしてないから心配してないけどね。
その後、のんびりゆったり温泉に入り、寝る準備や定期連絡等の諸業務を終え……ようやく自由時間である。
◇
さてさて、今夜は残りの機神を狩る。
数は6体。
海中の機神、ニライカナイ。
洞窟の機神、エリュシオン。
奈落の機神、アガルタ。
天空の機神、パラダイス。
霊峰の機神、ユートピア。
塔の機神、アヴァロン。
近付くと起動してしまうので、ざっと見た感じだと……アガルタとニライカナイが主に群体系で集団戦闘が可能。
次いで、ニライカナイとパラダイスは海と空と言う都合上戦う相手を選び、尚且つ小さめなので戦闘に参加出来る人数が限られる。
エリュシオンはやや巨体なので数体で囲う事が可能。
ユートピアとアヴァロンは小型且つ万能で、此方は質を揃えて挑まざるを得ない。
全体的に面倒なのが残っている形だ。
手札が限られるので、あまり考えずに戦う事が出来る相手と言う意味でもある。
現状僕もやる事が山の様にあるので、今夜の見守り役は黒霧に一任しよう。
差し当たって、人選と装備の選択を行う。
先ずは、アガルタ。
雑破な判定によると、アガルタは死神と同様に闇の霧を噴出し、無数の死神を出現させる。
奈落の底と言う地形の都合上、視界は暗く閉ざされ、死神の闇と相まって、視覚に依存する種族では満足に戦えないだろう。
よって、アガルタに当たる戦力は、死に強く、闇を物ともしない力を持つ集団。
アンデット組に行って貰う予定である。
合計102名のレベル500オーバーだし……大丈夫だろう。多分。
念の為、100名の部下には精霊金属のナビメントで作った武装を付けた。
次いで、アッセリアにはスディプダグからドロップした『勝者の意思』と言う宝石と、まだまだ沢山あるヒヒイロカネを使って作った剣『プロメテウス』を装備させた。
能力は、不撓不屈である限り一定量の力を生み出し続ける原理不明の宝石と、それが生み出した魔力を聖属性と火属性に変換するヒヒイロカネの剣身である。
聖骸のアッセリアなら十分に扱えるだろう。
尚、本来なら暴れ狂っている筈のその膨大な精神力は、僕の都合で封印してある。
アガルタ戦後に改めてプロメテウスを完璧に作り上げよう。
一方ルーレンには、バロールの腓骨片を使って作った魔杖『パンドラ』を装備させた。
これは、バロールの死の力を杖の先端部分一点に集約させ封印、適宜解放して、アガルタの死の力にバロールの死の力をぶつけ、相殺するのが目的だ。
此方も、勿論精神を封印している。
……ネーミングはコトノチャンである。当然だよね。
更に、アガルタが必殺級の力を持っていた場合の備えとして、地味にスペックが高いアトラを見守り隊長に任命した。
黒霧とアトラが居れば十分だろうが……念には念を入れて、アトラに風神の手と雷神の手を眷属化させておく。
雷神の手には、イテアが保有する神名、畑の神ミネロラの名を継承させた。
ミネロラは、ベルツ大陸東方諸国で信仰された豊穣の神で、起源はルゥスリシュ湖ことルゥスレルクから水を引いて稲を育てていた国々。
例によって、雷が降ると稲が良く育つとされ、ミネロラは雷の神であると同時に豊穣の神と呼ばれる様になり、時が経つにつれて豊穣の神の側面が強くなって畑の神と呼ばれる様になった。
雷神の手には相応しい名前だろう。
一方風神の手は、ラーベスタから名を継承し、魔割山脈から吹き降ろされる風の神性であるアグリールの名を得た。
これで、アガルタ戦は勝てるだろう。




