第36話 vs.永生機神・ティルナノグ
第七位階上位
《【探索クエスト】『楽園の鍵:命泉』をクリアしました》
精霊帝達が各地で獲物を駆逐し、大量のドロップ品と経験値を獲得した。
ボス石像の稼働条件は、弱体化している大将の殲滅と、各六種のエリアに隠されていた菩薩やら如来やらの幻影の撃破だと推測される。
また、不可思議な力を放つ仏像や地蔵は、破壊しないと敵を強化するので全部破壊したが……それが稼働要因である可能性もある。
或いは、救済の太陽の様に倒した敵の数で稼働すると言うのもあるかもしれない。
風神雷神のドロップ品は、左手と右手。
込められた力は一級品だが……形状と質量的にいまいち扱い難い。
大きさは僕の頭を鷲掴みに出来る程デカイが、所詮はそのサイズ。
力は強力だが、使い道で思い付くのは、爪を鏃にした矢か骨を掻き集めた小剣、肉は焼いて食べる。くらいだ。
これならまぁ……アトラに眷属化させてみるのが良いかな。
迷宮攻略の報酬は、『雷神太鼓』『雷太鼓』『風神袋』『風袋』、『光杯』『光晶の種×10』『命泉:引換券』と『シャスティアの大鉱脈:引換券』、スキルは『極光耐性×5』と『神聖耐性×5』に『光属性』、そして『楽園の鍵:命泉』。
雷神太鼓は、叩くと指定の場所に雷撃を放つ太鼓。
風神袋は、開くと風を吐き出す袋だ。
雷太鼓と風袋はそれの下位互換である。
その他のアイテムは特に真新しい物は無い。希少素材なので大事に使おう。
◇
さてさて、十分な休憩も取ったし、次の獲物を狩りに行こう。
次は沼の機神、永生機神・ティルナノグ。
この機神は、妖精の機神だ。
主な能力は、魔法特化。
どの様な切り札を持っているかは不明である。
戦場の環境は、超高熱の毒沼に、嫌な湿気と茹だる様な暑さ。
大気中には種精霊がムンムン飛んでいるが、特に意図されて増殖している物では無さそうだ。
では早速ティルナノグに挑むとしよう。
今回戦うのは、先のメンバーに加えて、セバスチャンとリアラを抜いた吸血鬼一行。白雪一行。リオン。桃花。ミュリア。
少し過剰戦力にも思えるが……切り札がニルバーナやアトランティスの使う一撃必殺の魔法攻撃とは限らない。つまりは、防ぐのに瞬間的な高火力を必要としない何らかの切り札である事を願っての布陣だ。
一々切り札を切りたく無いと言う事である。
◇
「ユキなの、柔らかいの……かぷっ」
「ぉい」
僕を膝に乗せ、頬に齧り付いたのは、アルネア。
『ロード・オブ・ナイトメア』。ナイトメアスパイダーの王種の進化した種族、『アトラク・ナクア』だ。
蜘蛛は肉食なのだ。
自作と思わしき黒い戦闘服を着込む彼女は……何でも昔マレビトの配下だったらしい。
詳しい事は知らないが、色々な魔導具や武具を所持している模様。
……もう僕の配下だから全部貰っちゃって良いと思うんだ。
「けろぉ〜……」
「にゃふん……にゃ、にゃで、にゃぁ〜〜」
僕の左右に着いたのは、賢者級の魔法使い、レイエルとレイーナだ。
頰をガジガジされているので声を掛ける事は出来ないが、撫でる事は出来る。
レイエルはニュイゼがいないので大分リラックスしている。
ニュイゼは単にレイエルの事が好きなだけだが、良く舌で唇を舐める癖があるせいで、レイエルが凄く怯えている。
レイーナ、もといレイーニャは、猫人の姿で顎を撫でられ、蕩けた表情で僕に擦り寄っている。
時々正気に戻り掛けるが、僕の魔の手からは逃れられない。
そうこう遊んだり遊ばれたりしている間に、戦いは始まった。
ティルナノグは、その身を周りの沼と同様に虹色に輝かせ——
——衝撃。
大気が揺れ、虹色の水が弾け飛ぶ。
ティルナノグに近付いていた子達は、その衝撃波に吹き飛ばされ、ティルナノグから遥か遠くまで飛んで行った。
質量が巨大な子はそんなに飛んで行っていないが、軽い子達は僕の目前まで転がって来ている。
斯くして、ティルナノグとの戦いは始まった。
◇
——妖精は舞う。
煌びやかな舞台で。
飛び交うのは無数の光球。
ティルナノグを中心に、幾多の光が乱舞する。
秒間数千発放たれる光の玉は、全てが上級魔法の威力を持ち、ティルナノグへの接近を許さない。
それを乗り越えたとしても、近付けば直ぐに王級魔法の雨が降り注ぐ。
それを突破した先に待つのは、最初と同質の超衝撃波だ。
然りとて、遠距離攻撃をしても、光弾と結界によってティルナノグには届かない。
——ティルナノグは攻防一体の機神だ。
当のティルナノグ本体は、岩の上でそれはそれは楽しそうに踊っている。
此方の接近等意に介さず、一人でくるくる回っては、思い出した様に手を振って、その方向に常態の5倍くらいの光弾が放たれる。
魔力切れを待とうにも、飛散した魔力をほぼ全て再吸収している為、殆ど減っていない。
接近して倒す事も出来ない以上、此方に出来る事はひたすら耐え忍ぶのみ。
飛散している魔力を少しでも多く吸収し、魔結晶として回収するのが最善手なのだ。
ただし、僕等には少々時間が無い。
少しでも多く魔力を削る為に接近し、少しでも早く終わらせる為に魔力結晶を素早く生成、回収する。
このティルナノグとの攻防は、きっと皆を大きく成長させてくれるだろう。





