第33話 vs.涅槃機神・ニルバーナ 二
第七位階中位
2枚目の壁を削っている折、背後からの攻撃を受けた。
直前に全ての魔物を駆逐したので、本来であれば復活するにはまだ少し時間が掛かる筈だった。
その上、攻撃を仕掛けて来た敵は、獄峰の魔物と同じくらい強かった。
護法童子 LV200
護法天将 LV350
宮毘羅大将 LV500
伐折羅大将 LV500
因達羅大将 LV500
12種の大将が数十体の天将と無数の童子を率いて襲い掛かって来たのだ。
一気に難易度が上がった様な気がするが、良く考えて見るとアトランティスも無数の銃翼を用いて戦っていたので、こんな物だろう。
むしろ切り札を隠し持っていた分、アトランティスの方が脅威度は高い。
……まぁ、ニルバーナも切り札を持っている可能性はあるが。
件の魔物軍は、どうやら湖の迷宮に生える蓮の花から生まれたらしく、周辺一帯にこれでもかと咲き誇っていた水生植物の中から蓮が殆ど無くなっていた。
残っていた蓮も、次々と童子や天将に変わっていく。
天将くらいなら面倒で済むが、12体いる大将は放っておいて良いモノでは無い。
仕方が無いので、獣人ちびっ子隊とレベル限界に到達してしまっているリオン、ルェルァを派遣し、後はロッテの指揮の元上手く戦う様に言っておいた。
◇
確実に敵を倒せるだけの最低限度戦力で外側からやって来る敵を討ち、その多くがニルバーナの結界へと攻撃を続ける。
大将達は皆強かった。
様々な動物の形をした各種大将は、各々が数十体の天将と連携し、巧みに攻撃を避け、時に味方をも盾にしながら、此方へ的確な攻撃を続けて来るのだ。
しかし、それらも多少の苦戦をしつつ討ち破った。
仙人達やちびっ子、オートマタ達も、これで多少は成長出来ただろう。
残念なのは……経験値が全く入らなかった事だ。
本来なら青白い粒子となって霧散する敵は、結界と同じ白い粒子となって霧散し、それが原因で経験値が入らなかった訳である。
12体の大将が倒れ、時同じくして2枚目の結界が白い粒子となって霧散する。
そして、現れた3枚目、宝珠の様な物も無くなり、おそらく最後であろう結界へと皆の攻撃が集中する。
……ところで……皆は気付いているのだろうか? 暗かった湖が、明るく照らされている事に。
もし気付いていないのだとしたら、アレには強力な存在隠蔽の力が働いていると言う事なのだろう。
そして、それこそがニルバーナの切り札なのだ。
◇
残った童子や天将を掃討し、結界へと攻撃を続け、遂に3枚目の結界が白い粒子となって天に昇った。
予想通り、4枚目の結界は現れず、後に残ったのは魔力を殆ど持たないニルバーナのみ。
対する此方は、全員がレベル400を超える程の力をもつ300余名の大戦力でありながら、その残存魔力量は殆どが1割以下。
中には魔力切れで威力を高められず、単純な肉体の力のみで極僅かずつ結界を削っていた者もいた。
ただ攻めるだけでこれ程満身創痍になっている。
もし4枚目があれば、それを破る事は叶わなかっただろう。
しかし、ようやく終わりが見えたのだ!
……と、皆はそう思っているだろう。
勿論、中にはそれの存在を感知し、呆然と天を見上げている者もいる。
——仏の顔も三度まで。
結界を破った事が三度として、四度目は護法達を倒した事だろう。
正に怒髪天を衝いたのだ。
ニルバーナはこの時、初めて動いた。
片手を空へと掲げて見せる。
天に輝くそれは、その時初めて存在隠蔽を解かれた。
——太陽。
否、そうと見紛う程の白き光の塊。
レーベは険しい表情で空を見上げ、メロットは眩しいと言わんばかりに椅子ベットに顔を埋め、白羅は少し困った様に苦笑いしながら僕をチラ見している。
そして、その時は訪れた。
『——救いを』
響いたのは機神の声。いや、音。
意味を持つ音がこの場にいる全員の魂に響き、ニルバーナは片手を振り下ろした。
——白き光は大地へ落つる。
その巨大さ故に、ゆっくりと落ちて来る様に見えるそれは、この戦場で戦う者の多くを消し炭に出来る威力を持っていた。
アトランティスの切り札は、アトランティスの魔力の2割を用いて使う、連発不可ながらも最大5回放てる超威力の主砲だった。
ニルバーナの切り札は、アトランティスと同じ程度あるニルバーナの、全魔力を用いて放つ、超広範囲型の必殺技だ。
もはや現状の戦力だけでは防ぎようが無い。
普通にやったら、魔力を少し温存出来ていた者だけがギリギリ生き残り、最後の力を振り絞ってニルバーナ本体に攻撃を開始する所だが……死んじゃったら次の機神狩りが出来ないので仕方ない。
「……切り札を切りまーす」
『ほっ』
凄く慌てて僕と空を交互に見ていた何名かが、安堵の吐息を漏らした。
……加護を使えば簡単に防げるが、機神と戦う度にそんな事をしていれば、流石の僕でも3回目位で寝落ちする自信がある。
本当は、機神と戦う度に切り札を切らねばならないと言うのは良くないが……今は新たなマレビトが来るまでに街を用意したいのだ。
誠に遺憾だが、仕方ない。
今回使う切り札は、ゲームから持ち帰ったとあるアイテム。
——アジ・ダハーカの魔石。
さぁ、ザッハーク君。
君に名と力を与えよう。
君は僕の期待に応えてくれるかな?





