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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜超天才美少女(?)が、世の理を解き明かし塗り替える!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十二節 楽園の守護者の攻略

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第30話 刹那の思考

第三位階中位

 



「乾杯!」

『乾杯!』



 ユキの掛け声で皆がジュースを持ち上げた。



「か、乾杯……」



 縁側に座る私も、少し遅れてグラスを持ち上げる。


 私のグラスがカチッと音を立てた。宮代だ。



「ぁ……みや——」

「——タク、乾杯!」

「おう、乾杯」

「タクヤ君、乾杯」

「タクで良いぞ、乾杯」

「たっくーん、死ねやコラァ!」

「うるせぇ、ネイコさんに言いつけるぞ」

「さーせんマジ勘弁」



 私が声を掛ける前に、宮代は鈴木とか知らない男子達でグラスを交わらせた。


 知らないと言っても、見覚えはある。


 特に、セイトはアナザーで一緒に行動してる人だし、コウキはアナザーの有力プレイヤーだ。

 宮代は誰にでも優しいから、皆に好かれる。私は……。



「魚も良いけど、肉が足りん」

「おけ、先行っててくれ」

「僕は……ちょっとで良いかなぁ」

「遠慮すんなって、消費しきんねぇと廃棄だからな」

「それなら……」

「ところでタクー……エリさん来るって聞いたんだけど……」

「あ? ……あぁ、エリサンなら別館だな」

「マジかっ、明日会えるかなぁー」



 タクが話してる姿を横目で見ながら、私はオススメされた桃ジュースを飲む。

 私ご飯の時はお茶派なんだけど、このジュースはこのジュースで美味しい。


 ……思えば、友達とこうやってご飯を食べるのは初めてかもしれない。

 乾杯なんてやったのも初めて。


 凄い沢山の人達が一つの目標に向かって頑張って、その中に私がいて、今こうして今日の頑張りを労い合う。

 私は今日、ずっとドキドキしてて、色々動き回って疲れたけど……それでも楽しかった。


 だから、今日はもう、良いや。


 宮代が皆と笑って、皆が楽しそうにお喋りしてる。

 私はそれを見てるだけで——



「あーもう、先行ってろって、直ぐ行くからよ」

「うーい」



 宮代が鬱陶しそうに鈴木を追い払うと、ふと、宮代と目があった。



「ミサキ」

「ぅぐ、ゴホッゴホッ」

「あぁ、すまん。急に声掛けて」

「いや、ゴホッ……良いよ……」



 ちびちび飲んでいたジュースが気管に入った。


 慌てて、私は息を整える。



「コホッ……んん……宮代、直ぐに行くんじゃなかったの?」

「あぁ、その前にミサキと2人で話がしたくてな」

「んぐ、ゲホッゴホッ!」

「え……すまん」

「ゴホッゴホ」



 唾をのみ下すのに失敗した私の背中を宮代が摩り始める。


 そ、そう言うのじゃ無いしっ!



「今日は疲れただろうけど……楽しかっただろ?」

「コホッ……ま、まぁ、うん」

「そりゃ良かった。明日はもっと楽しいぞ?」



 宮代は心底楽しそうに笑顔を浮かべた。


 か、顔が……近い……!



「……風邪か? 休むか?」

「……ち、違うから」

「顔が赤いぞ? 無理するなよ?」

「だい、大丈夫……」

「遠慮しなくて良いんだぞ?」

「だ、大丈夫だって……何でそんなに風邪を疑うのよ……」



 ……気にして貰ってるって思うと嬉しいだけどさぁ……。


 宮代は暫く首を傾げると、一つ大きく頷いた。



「あぁ、そうだ、思い出したわ」

「……何を?」

「俺が小さい頃になぁ……」



 そこまで言うと、宮代は少し体を震わせた。



「宮代?」

「あぁ、いや……俺もチラッと見ただけなんだが……」

「?」

「ユキがな、今でこそ病気なんてした事ありませんけどとでも言わんばかりだが、一回だけ……死に掛けた事があったんだわ」

「え!?」



 あのユキが!? ……いや、でも小さいし、病気になったら実は結構やばいんじゃないかしら?



「本当にチラッと見ただけなんだけどな……あぁ、この子、死ぬんだ。って思ったのは覚えてる。子供ながらにそう思って凄ぇショックだったみたいでさ……暫く夢に出て来たんだわ」

「そ、そんなにヤバかったの……?」

「あぁ、ほんとに……呼吸が浅くて真っ白で……まぁ、翌日にはケロッとしてたけどな」

「そ、そうなの……まぁ、ユキならそんな感じよね」



 何でもかんでも1人で完璧に出来ちゃう感じ。



「それ以来だな、俺が病気とか気にする様になったのも……」

「ふーん……」



 ……それにしても、宮代はいっつもユキユキユキ……小さい頃に病気してたからって…まぁ、ユキは見た目が凄く良いし中身も良いけどさ……気に掛け過ぎじゃないかしら。



「そう言や、ユキが小さいまんまなのも、その病気が原因かもしんねぇな」

「……そう、かも?」

「まぁ、問題があるならユキがなんかしてるだろうがな」

「そうねー」



 ユキユキユキ……そりゃユキは可愛いけどさ……それに鈴守の当主様でお金も権力もあって…………頭が良くて性格も良くて、面倒見が良くて、ちょっと意地悪するけどでもそこがまた可愛くて………………私とユキなんて比べ物にならないもんね……!



「……そう言えば、ミサキ」

「……なに?」

「何で機嫌悪い……いや、良いや……そうだな、何で俺は宮代なのにユキの事は呼び捨てなんだ?」

「え?」



 え? ……そ、そうよね。私なんかが鈴守様の当主様を呼び捨てなんて…………。



「……ご、ごめんなさい」

「いや、何で謝る?」

「これからはちゃんと鈴守さんって呼ぶ……」

「は? あ、いや、そっちじゃなくて」



 ……そっちじゃない?



「俺の事」

「……宮代……?」

「それだ」

「……?」

「……いや、タクって呼べよ」

「? ……っ!?」



 不満顔で宮代は私を見ている。


 い、いきなりは、むり……は、恥ずかしいし……と言うか何で……あ、ユキの事ユキって呼んだからだった。



「ぁ、う……」

「なぁ、ほんとに大丈夫か? 無理そうだったらユミとかに言えよ?」



 ユキ、またユキ……も、もう……やるしかない!



「だ、だい、大丈夫っ、宮代に、ちゃんと言うわ!」

「え!? ま、まじで……せめてユキに——」

「——宮代に!」

「わ、分かった……善処する」



 ふぅ、ふぅ……そ、そう、名前を言うだけ……アナザーでは言えてる。現実で言うだけよ。



「そ、その…………た、タク……!」

「お、おう、じゃあ行こうか」

「……へ?」



 行こうか……?



「ど、何処に……?」

「あー、ひとけの無い」



 ひとけの無い!?



「……風呂場とか?」



 お、おふろ!?



「な、ななな、何でっ!?」

「え、だってその……アレの日なんだろ?」

「あ、あれのひ?」

「……や、やっぱりユミに頼むわ。女子同士の方が良いだろ」

「女子同……っ!?」



 ままま、まさか……!?



「アー、ナンノハナシシテタッケナー。取り敢えず調子悪かったらユミに頼ってくれ。おーい、ゆ——」

「ま、待って! 違うから!?」



 何て事考えてんの!?



 

 



「何で機嫌悪い——



(まてよ……そう言えばミサキは今朝からずっと赤くなったり不機嫌になったりと情緒不安定だったな……つまり……女子特有のアレか……となると追及しない方が良いだろうな。……万一泣かれたらまたユキとかに白い目で見られるぞ、多分)



 ——……いや、良いや……そうだな、何で俺は宮代なのにユキの事は呼び捨てなんだ?」

「え?」



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

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