第17話 僕は何時でも此処にいる
第七位階中位
白扇宮鴉は、大きいモノで翼開長2メートルを超え、雑食性で山奥に生息している。
山奥にいるのに名前に宮がついている理由は、古くからその高い知能を買われて動物を養えるだけの余裕がある家に飼われて使われていたから。
現代では、各街にある保護森林だけではその大きな体を維持出来ないので、人類の発展に伴い山奥へ逃げていった様である。
リンカちゃんのペットであるカー助は、鈴護の家で代々飼っている血統書付きの白扇宮鴉で、普通の白扇宮鴉と比べると綺麗で頭も良い。
そんなカー助にひとっ飛びしてもらい、人影らしき物が見えたら合図を送ってもらう。
程なくして、カー助は人を見つけた。
◇
真夏の陽気な昼下がり。
燦々と降り注ぐ陽光もなんのその、深響の森は涼しく快適である。
長い髪を一纏めにし、涼しい森を小走りに進む。
「ふっふっふーん♪ ……お、いた」
目前に見えて来たのは、森の小道を歩む数人の影。
不審者でさえなければ身内の人達である。
勿論身内なので、一番後ろにいた浩三氏に声を掛け……る前に振り替えった浩三氏に声を掛けられた。
「おや、リンカちゃんかと思ったらユキちゃんじゃないか。運動かね?」
「やぁ、こうじいちゃん。ボケた?」
「はっはっは」
深響の森で運動とか、流石に適度な運動を逸脱するよ。
僕の接近に気付いていたらしい達人級の爺様方が、此方へと歩み寄る。
「おうおう、お前見ねぇ内に、まぁ、変わらんなぁ……嬢ちゃん」
「鈴守はヘルパーさんにも伝があるからね、げんじいちゃんは安心してお家に帰りなさい」
「だぁれがボケ老人かっ。儂ゃ後30年は現役よ」
威勢と図体と声がデカいこのおじいちゃんは、真金玄三。
真金は城や砦での防衛術に優れ、単独では大盾や小盾を扱う古い護鈴の御家だ。
僕を見てニコニコと微笑む好々爺なお爺ちゃんは、柳茂吉。
小柳のユリちゃんから見て大伯父さんに当たり、小柳は柳の分家である。
茂吉さんは病床の妻に先立たれて以来結婚せず、あわや御家断絶、流派断絶となりかけたが、分家の小柳でユリちゃんが生まれたので、危機回避と相成った。
血筋なんぞ気にするお堅い連中は、ヤヨイの時代に纏めて粛清されて介護施設で余生を謳歌しているので、特に継承云々の問題はない。
「しげじいちゃんも、こんにちは」
「こんにちは、ユキちゃん」
僕の頭を撫でてニコリと微笑んだ彼は、子供好きで僕等が小さい頃なんかは良く撫でられた物だ。
タクやチサトはもう撫でられないのに、何故か僕とかアヤとかは撫でられる。おかしい。
続いて、鈴護伽夏。
カナはまだ30代の若造で、旧代鈴ヶ森女学院の卒業生。
キリナの先輩であり、元は鈴守とは全く関係のない中流家庭の出だが……そこは鈴護なんかに嫁に来る変人と言う事で、既に鈴守の代行女主人としての威厳と風格が出ている様に見えない事もない。
「こんにちは、カナ」
「こんにちは、ユキちゃん……リンカがまた変な事しなかったかしら」
「うん、何時も通りだったよ」
「うーん……まぁ、ユキちゃんが可愛いのがいけないんだから、仕方ないわねぇ」
うむ。罪深きは僕の美貌よ。抱きしめたりクンクンしたくなるのは仕方ない事なのだ。
させるか否かは僕の一存で決まるので……仕方ないと言えば仕方にゃいにゃー。
……さて。
「やぁ、ユキだよ♪」
片手を上げ、サービスでニコッと微笑んであげた。僕の目の前にいるのは、初対面と言う事になる4人の若者。
あろう事か当主の僕に指を指す、教育のなってない長身女性。
あちらの姿よりも少しデカい胸部装甲を有する女性。
普段は半目な瞳をぱっちり見開いて僕を凝視する小柄な少女。
間抜けに口を開いて此方を見る長身イケメン。
「……ゲームの、中?」
「僕は此処にいるよ」
とぼけたマヤの一言にそう答え、近付いて両手を広げる。
マヤはしばらく沈黙した後、おずおずと僕に抱き着いて、僕はそれを抱き返した。
……左手に包帯巻いてるけど、怪我でもしたのかな?




