第171話 200の精鋭
第五位階上位
翌朝。
ターザハルダ領の迷宮踏破が完了した。
見つかったのは、小迷宮12個。負の化身はいない。
入手したのは、スキルポイント12P。神子結晶12個。
朝から皆大義であった。
◇
東西南の帝国国境に魔物型の子達を配備し、帝国を完全に封鎖した。
ターザハルダから徴兵したり、エヴァンスタから志願兵を募る事で新たに2万程増員された『黒鎧騎兵団』は、黒霧の端末11人に2万ずつ率いさせ、効率的に小国を制圧して行っている。
西方の支配領域拡張は随時進められているし、西方国民の教育も無事終わった。
各種雑務から戦争、侵略まで、その全てを黒霧に任せるとして、僕は僅かな手勢を率いて東方の支配に本格的に乗り出す事にする。
連れて行くのは、1日みっちり仕込んで狐火を使える様にした睡蓮と茉莉花。それから黒霧の端末を2人。
昨日邪神の断片と相対した子達は大事を取ってお昼まで休息、その他の子達は帝国の包囲と小国群の侵略、更に下位の使い魔達は各拠点の防衛、今や50人を超える黒霧の端末はそれらの管理、と其々相応に忙しく、東方攻めに参加出来るのはたった5人だけになってしまった。
まぁ、2人の黒霧は中規模迷宮の核を用いているので実力は400〜500程、狐母娘に至っては500を超え、出せる狐火も僕のを合わせて最低でも20体以上。
——そして何より僕がいる。
東方は落ちたも同然だ。
先ずは前線まで上がって来ている部隊の回収。
まぁ、専ら転生者達だ。
総数は凡そ3000だが、その内転生者は500人いない。
普通に攻めても勝てるだろう。
内2000はリベリオンメンバーで、残りが別の複数の団体だ。
戦力は、北の森。北東の山林。東の岩山に配置されており、リベリオンメンバーのみで構成された1800が北の森。リベリオンメンバー含む1000が北東の山林。岩山には残り200が布陣していた。
山林にいた団体さんは、ハーカとカーニャとその弟子達によって壊滅させられたのを回収したので、残すところは森と岩山の団体のみ。
会話して味方にするのは容易いが……それよりも叩いて潰した方がずっと早いだろう。
差し当たって数が多く広範囲に潜んでいる森側には僕以外の4人を向かわせ、僕は少数精鋭の方を落としに行く。
彼等は僅か200で数十万の軍勢を相手取ろうとしてた連中だ。黒霧の端末や睡蓮達では手間取るかもしれないしね。
◇
岩山の陰に隠れた陣地内へと転移した。
陣地内には砂色のテントが張られ、其処彼処で武器を携えた人が談笑していた。
8:2くらいで女性が多く、更に一頭のヒポグリフと風妖精がいる。
森の攻略は程々に時間も掛かるだろうし、折角だから200名を鍛えてあげるとしよう。
そう思いながら態と気配を放って待つと、転移後僅か3秒で一本の矢が飛来した。
それを二本指で受け止める寸前で、その声は聞こえて来た。
「クラスターブースト!!」
どうやら強化系のユニークスキルを使った様で、陣地内にいる10と余名の女性達やヒポグリフと風妖精がふた回り程強くなった。
「だ、だめ! その人をもごぉ!?」
風妖精の子が不都合な証言をしそうになったので、念動力で捕獲する。
ついでに結界へ閉じ込め、岩を錬成して禍々しく見える鳥籠を作って入れておいた。
所謂人質である。
「フィーを解放しろっ!」
飛び掛かって来たのは、重装鎧を着込んだ金髪の美女。
5メートルを超える大型の突撃槍を難なく操り、高速の突進を繰り出して来た。
それを片手でやんわりと受け流し、もう片方の手で背後から近づいていた幼女の毒ナイフを摘んで根元からへし折る。
渾身の突きを受け流された金髪美女は、足を引っ掛けられて転がっていき、犬人と思わしき黒髪の幼女は投げ飛ばされつつも宙空で一回転して着地した。
間断を許さず放たれた矢と土の槍を、片方は先と同じ様に摘んで止め、もう片方は裏拳で受け流す。
受け流したクレイランスは、態と鳥籠の目前に直撃させ、フィーと呼ばれた風妖精はそれに驚いてひっくり返った。
「くらえっ!」
即座に接近してきた赤髪の熊人と思われる美女が、身の丈以上もある巨大な両刃斧を振るい、僕はそれを右手で掴んで止める。
ついでに左後方から迫り来る居合抜きも、左手で摘んで止めた。
「っ!?」
「うわぁー!?」
黒髪鬼人の美女は刀を捨てて離脱し、赤髪の方は斧ごと投げ飛ばされてテントに突っ込んで行く。
ここまでまぁまぁの連携だ。
流石に強い連中の攻撃が容易く受け流されたとあっては迂闊に飛び込んで行く事も出来ない様で、敵の攻勢が止まった。
「あの無数の力、奴がカインで間違いありません。まさか女だったなんて……兄さん」
「あぁ、全力で行くさ。二葉、来い」
「はい、兄さん!」
停止した戦場に一歩踏み込んで来たのは、黒髪褐色の青年、ウォルテス・ヴァルヌこと四月一日 葉一と、金髪碧眼の美女、サイファこと四月一日 二葉。
どうやら兄弟で転生した様である。
2人は此方へ歩みながら手を繋ぎ——
「オーバーレゾナンス!」
「ライフインテグレーション!」
——瞬間、光が放たれた。
光の中から現れたのは1人の女性。
四月一日 三葉 LV206
魂合して肉体も混ぜ、更に何十人の女の子達からも力を掻き集めて、1人の新しい人間へと進化した。
複数の力が統合されているので、レベル以上に強いだろう。
「……行くぞ」
仄かに薄青いオーラを放つ彼女に、手招きをしてみせる。
「おいで」
どの程度の力か見てあげよう。





