第162話 東方制圧前線
第五位階上位
人間の領域の東方は、西方と比べるとかなりごちゃごちゃとした地形をしている。
一般的に西方と呼ばれる領域は、北に魔と人の領域を分かつ山脈、南西に女神アシュリアの聖域があり、中央にナイオニス大清流がある。
モンデシウル共和国以外はどこもなだらかな地形であり、全体的に外敵も少なく、ハイネシアさんの恩寵があったから恵みは豊か。
人間領域の真ん中は、北に魔割山脈の谷間となる平原があり、中央に帝国が、南に幾らかの小国がある。
しかし、今や南方の小国群は帝国に隷属し、普通に地上を通過するには、南方の隷国を遠回りし、更に大量の袖の下を払う必要がある。
また、帝国は元々大陸有数の……他と桁が違う程の穀倉地帯である。
原因は、帝国領土に土属性の精霊王の封印があるからだ。
幸い無防備な精霊王達の居場所は、賢神の直弟子である仙人達の中でもアニスしか知らなかったトップシークレット情報なので、精霊王は無事だろう。
東方領域は、北に魔割山脈の連峰に属するやや低めの山があり、その横に魔と人を分かつ様にL字型の巨大な湖がある。
ルヘーテの領土は湖の先の極東地域で、徒歩でルヘーテの領土に向かうのなら南東の樹海を越える必要がある。
大雑把な地形は、大陸から海へ向かって二本の角が突き出す様になっており、西の角には砂漠の国が、東の角には低い山と樹海がある。
また、帝国寄りの北部にはちょっとした穴だらけの岩山がある。そこが今は亡きメナの故郷、ハルク公国だ。
おそらく風の精霊王がそこに眠っている物と考えて間違いない。
他にも、幾らか強力な魔物が住んでいる小さな山や小規模な湿地帯など、進軍するには邪魔となる自然の要害が各地に点在している。
差し当たって目標を整理しよう。
先ず第一にやるべきは、少数精鋭で砦に籠る帝国軍の制圧。
次に、東方連合に所属しない勢力の制圧。
続いて、東方連合の制圧。
これらの処理に続けて、東方の迷宮捜索及び攻略。黒霧の支配領域の増強。新規配下の育成、他様々な雑事がある。
のんびりしている暇は少ない。
早速各地の砦を強襲しようか。
◇
今回落とす砦は、帝国側にある大きな物1つと小さな物2つ、東方にある大きな物4つと小さな物5つだ。
大きな砦5つの内、純粋な砦として機能する物は3つ、残り2つは城砦都市である。
敵の内訳は、帝国側の大砦に合成獣5万と援軍で来たらしい帝国十傑の1人『キメラマスター』のバーチス・アルディがいる。
前回は逃げられたが、今回は逃がさない。
続いて東方の大砦2つには、それぞれおおよそ5万ずつの悪魔獣とそれを使役する低級の悪魔王がいる。
レベル的に見て成り立ての悪魔王なので、そう強い物ではない。
次に東方の城砦都市。
片方は帝国十傑の1人『人形劇』のアーシアこと『鳳凰院 結鶴瑠』とそれが率いる人形部隊3万がおり、もう片方には同じく十傑の1人『禁忌の魔女』ヤカルナ・プリエールとその支配下にある魔物3万がいる。
帝国側2つの小砦は、援軍として送られた転生者が詰め込まれており、その総数は2,000人に達している。
両方には将として超念力のハルソンこと『本郷 渉』と雷霆ムンディスこと『佐竹 穂奈美』がいた。
簒奪王がいないのは気掛かりだが、彼等もさっさと捕縛してしまおう。
続いて東方5つの小砦には、それぞれ1万ずつの魔物部隊とそれを使役する合計数百名の帝国軍人がいる。
此方は正直魔物の質から見ても旨味が少ないので、砦毎すり潰しても良いかもしれない。
そして最後……槍道仙のマハーカ・クラージュと弓道仙のカーナシア・フィエルテ、それと彼等の弟子数十名が、リベリオンのメンバーと思わしき小集団の陣地に接近中だ。
彼等が襲撃を仕掛けるとしたら昼食時だ、一刻を争うと言う程の事では無いが、早めに対処した方が良いだろう。
差し当たって5つの魔物小砦は霊魂結晶を持たせた配下の子達に潰させるとして、私は帝国側の転生者小砦と合成獣大砦を解体するとしよう。
◇
《【砦クエスト】『要塞制圧:1』をクリアしました》
《【砦クエスト】『要塞制圧:2』をクリアしました》
両砦の解体が完了した。
折角なので、砦に使われている石材や金属、備蓄されていた穀物や保存食などは全て収奪し、後に残ったのは綺麗な円形にくり抜かれたクレーター状の地面だけ。
回収した石材は、後日水増しゴーレム軍団にでもして帝国にけしかけよう。
入手した物は、スキルポイント4P、神子結晶4個。選択報酬から領域の御旗を6個。そして転生者2,000と余名。
倒した敵の質に対して得られた物は非常に少ない様な気もするが、その実戦闘自体は二砦合計で3分掛かっていないので、そんな物だろう。
戦闘方法は、結界を張って生命活動に必要な気体を抜いただけ。
ただの人族や上位人族ではまず生き残れないし、そもそも何が起きているのか理解する事も出来なかっただろう。
捕縛した転生者達は、トロイの木馬的罠が掛けられてないかしっかり確認した上で迷宮へ転送した。
今は個別に封印処理を施されて眠りについている。
彼等が目覚めた時が私の配下になる時である。
次はキメラマスターのバーチス君を捕獲しに行こう。





