第47話 vs.ヒドラ・亜種
※490万PV達成
第四位階上位
夜が明ける。
リベリオンリコード起動から実に27日で負の力を持つ敵と相対する事になった。
以前戦った負の化身は、あらゆる物質や魔力と対消滅する性質を持っていたが、質は兎も角量がそれ程でも無かったので、莫大な魔力を押し付けて消滅させる事が出来た。
今回の敵は、化身という程負属性が濃縮されている訳では無いし、負属性の量が多い訳でも無い。
ただし、生物としての格は此方の方が上だ。
幸いにして図体が大きいので全配下で事に当たれるし、体が大きい分レベルに比して耐久力が低いので、弱い子達でも十分ダメージを与える事が出来るだろう。
——決して勝てない相手では無いのだ。
その為の準備はして来た。
切り札も幾つか用意したし、何より最悪の事態に対する最強の切り札がある。
保険の為に細工した魔結晶まで用意してあるので、転移か何かで物凄く強い敵の援軍が来ない限り負ける心配は無いだろう。
「……さて」
夜が明けた。
遥か東の地から偽物の太陽が昇り、夜闇を纏う冷たい風が極北の荒野を走り抜ける。
北の大地は遮る物が無いからか風が強く、髪がはためいて鬱陶しい事この上無い。
だが、待つのももう終わりだ。
僕は魔典を取り出し、魔法を選択する。
超広範囲に浄化効果を与える結界魔法『アークピュリフィケーション』。
山が白い光に包まれて行き——
「始めますか」
——決戦が始まった。
◇
「ふぅ……案外余裕だった」
北側の首は、開幕10秒で浄化された。
やった事は単純。
念動力で動きを縛り、魔典の浄化魔法を半分以上消費して首を浄化。
負を削られ黒から白に変わった蛇の黒と白の境目へ高空からのダイビングキックを打ち込み貫通。
腕の長さ的都合で断ち切れずに残った半分を念動力でねじ切り、傷口を延々と妖狐火で焼き続ける。
浄化されて切り取られた頭含む数十メートル分のヒドラ肉は、しばらくうぞうぞしていたので頭を潰し、狙い通り魔物化しなかったのでインベントリに回収した。
一部黒い方から流れた血液は、案の定魔物化したのでささっと捻り潰した。
後は周りの皆が首を殲滅するのを待てば良い。
流石に格上を念動力で押さえ付けたり捩じ切ったりするのは消費魔力量が多く、王級魔法一発分の魔力を使ってしまった。
幾ら首が無いとは言え、胴体は未だに念動力で抑えておかないと暴れ出しそうなので、皆には手早く首を仕留めて貰いたい所。
まだまだ魔力は1,000と100%分残っているし、万が一となれば回収した素材から魔力を吸収すればまだまだ持つが、早いに越した事は無い。
皆の頑張りをテイム越しに確認しつつ、浄化魔法でも掛け続けていよう。
◇
「ふぁ……ねむ……」
欠伸が出る。
僕がここまでの消耗を強いられたのは、白いのが寝惚けて出入り口に入っていったのが原因だ。
白鬼が寝惚けていた所為で、赤鬼はほぼ単独で格上と戦う羽目になり、瀕死の重傷を負う事となった。
仕方がないので2鬼に思念を送り、白鬼の方は目を醒まさせ、赤鬼の方は適当に誑かせて意思を統一させ、切り札を切る事にした。
その切り札とは、調整した魔結晶と僕の演算力、精神力を使ったかなり消耗の激しい″裏技″である。
先ず魔結晶の膨大な魔力を直接魂に注ぎ込む。
次に僕の演算力を使ってその魔力をそれぞれの魂にある魔力と同質の物に変換する。
続いてテイムの命令などを用いて魂と肉体の接続を解除する。つまり一時的に殺害する。赤鬼の方は死に掛けだから簡単だ。
完全に離れると面倒なので、切り取った僕の魂を繋ぎにしておく。
最後に、レベルアップと強い意思の統一による進化を暴走して肉鬼人みたいにならない様にコントロール。肉体をアップデートする。
後は魂を肉体に接続するだけだ。
これが裏技——『強制進化』である。
……ゴブリンにやったのと同じ事を同格にやっただけだが。
無理矢理進化する代償の全てを僕が引き受ける事で、対象は何の消耗も無く進化し継戦出来るのである。
どうせ魂も偽物なので、実験も兼ねて自分の魂を抉り取ってみたが……かなり痛いし疲れる。
しかしその分の価値はある結果となった。
新種 LV?
新種 LV?
意思の統一を図ったのは、進化の条件がレベルアップ、つまり魂の成長と、強い意思の存在、つまり精神力の成長を必要とする為である。
幸いにして2鬼は、鬼人の属性変異種にしては強過ぎるくらいにレベルが高かったので、後は少しレベルを上げ、比較的弱めだった精神力は意思を統一させて瞬間的に意志力を高める事で補い、進化時に足りない分の演算力を僕が代行する事で進化を可能とした。
最後に名前を付けてあげるとしよう。
名前は意外と重要な物だ。
名前を付けると様々な能力が少し上昇するのである。
原理的には、本人と他人が個体を識別する事で、己やそれ以外の境界をはっきりと認識し、不安定な器が安定する。のだと思う。
それ以外にも、信仰が力になる様に、存在を意識される事がほんの僅かに力となるのだろう。
と言う事で……。
『白鬼君。君の名前は白夜。種族名は……白夜童子だ』
武器と同じ様に、彼女が暗闇に怯える事が無い様に願いを込めて『白夜』と。
種族名は全くの新種らしいので、酒呑童子にあやかり、童の名を付け『白夜童子』とした。
続いて赤鬼。
『赤鬼君。君の名前は紅花。種族名は紅花童子だ』
此方も白鬼同様の名付け方。
武器の方は戦場に紅い花を咲かせるから紅花だが、名前の方は美しい紅の花という意味を込めてある。
少しぐらいお淑やかになってくれたら嬉しい限りである。
そんな2鬼は、レベルで言うなら250前後の力がある筈だ。
装備と相まって2人なら首の1つくらい余裕で潰せる事だろう。
見た目は、角が結晶質になり、少しだけ白鬼が成長した以外に大した変化は無い。
ともあれ、これで南は勝ったも同然である。
他のメンバーを見て回ろう。





