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ロータリーの中心で○○を叫んだ勇者

 高校に入って最初の休日は、新しくできた友人のために使う予定だった。

 街に繰り出し、カラオケ、ゲーセン、ボーリング、ビリヤード……イメトレだけはばっちりの遊びを通して親交を深め、一気にリア充高校生活を送る――!



 はずが。



「現実は魔王の出不精を解消するためのオトモか……」


 声に出して言ってみたら余計むなしくなった。


 なんだよ魔王の出不精解消って。

 魔王なんて基本出不精じゃん。

 城で豪勢な椅子に座って不敵に笑ってるのが仕事だろ。


 ……その仕事奪ったの俺だけど。


 ちなみに本来の魔王の従者であるアストリッドはバイトが入っており、夕方までいないらしい。

 魔王の従者がこちらの世界で普通の仕事をしていることもびっくりだが、あのアストリッドが喫茶店のウエイトレスをしているということに世界レベルの危機感を覚える。


 マジで大丈夫かこの世界……。


 まあ異世界の魔王やら姫やらが入りこんでる時点で、とっくに手遅れな気もする。


「それにしても……遅いなあいつ」


 待ち合わせに指定された場所は、隣街の駅前広場だ。

 ここら辺では一番大きな繁華街、それも休日とあって人混みでかなりごった返しているが、あの派手な外見ならまず見逃すことはない。


 あっちから場所を指定してきたくせに遅れるとか魔王マジ魔王――なんて適当なことを考えていたら、いきなりケータイが鳴った。


 知らない番号だったが、この状況でかけてくる相手が一人しか思い当たらなかったので出てみる。


「もしもし?」

『も……もしもし……コウスケ?』

「やっぱりルーテシアか……なんで俺の番号知ってんの?」

『アストリッドに、聞いたから』


 アストリッドがなんで知ってんだよ……と思ったが、深く訊くと怖いのでやめる。


「早く来いよ、待ち合わせの時間すぎてるぞ」

『つ……ついてる』

「ついてる? なにが?」

『もう到着してるって言ってるの! ――ひっ』

「はあ? どこに?」


 改めて周りを見回してみるものの、どこにもルーテシアの姿は――んん?

 駅前広場の中央、タクシーやバスが忙しなく行き来するロータリーの中心にでかいオブジェが鎮座している。


 その土台部分から、金髪のツインテールが生えていた。


「……なにしてんのお前」

『人がいない場所がここしかなかったの! い、いいから早く迎えに来て!』


 そりゃ人がいるわけねえだろ。ロータリーのど真ん中に。

 どうやら車が多くなりすぎて一人で戻れなくなったらしい。


 木に登ったまま降りられなくなった猫かよ……。


 仕方なくこちらから出向くと、さらなる衝撃が俺を襲った。


「もう一回言っていいか……なにしてんのお前」

「だから、待ち合わせって――」

「俺が言ってるのはその素敵なかぶりもののことだ」

「え……そんなにオシャレに見える?」

「見えねえなあ、ただの紙袋にしか!」


 オブジェを抱きしめるようにして立っているルーテシア。

 その頭には、ばっちり紙袋がかぶせられていた。


「タダのって、失礼ね……ちゃんとお金を払って買ったやつだもん」

「金の話をしてるんじゃねえ! 一億払っても紙袋は紙袋だろうが!」

「な、なによ怒鳴らないでよ……ビニール袋ならよかったの?」

「――――」


 世界の中心ならぬロータリーの中心で、俺はバカみたいに青い空を仰いで思った。



 帰りたい。



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