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第21話:決戦! 百合はみんなの為に

 ポイント二倍デー。本日一話目。

 「最終回」の一つ前なので「終回」ですね。

「……はぁはぁ」


 荒い息遣いで薄暗い路地裏に隠れる影が一つ。

 まともな栄養状態ではないからか、年端も行かぬ少女であることを差し引いても痩せぎすで不健康そうな体躯。


 そんな小さな少女をを追うように路地裏に駆けこんだ三人組みの男たちは気配を探るように辺りへと視線を巡らせる。


 この男たち三人は、それぞれが強面、武器持ち、不潔の三拍子そろった分かり易い悪人だ。


「居たか?」

「ここに来た形跡はある」

「もう、遠くに逃げたのか?」


 三人は一通り探すが、隠れる気配を見つけることは出来なかった。


 そうして三人の男たちが去ると、もの物影からその影は這うように出てきた。


「早く……、あの方に……」


 だが、ここに来るまでに何があったのか。全身を大小様々な怪我と、その傷から溢れる血が少女のこれまでの苦労を物語っている。


 先ほどの男たちにしてもそうだが、この少女も被害者という面で普通ではない生活を強いられていたのだろう。


「あ……」


 少女は再び歩き出そうとして、全身に力が入らないことに気づいた。

 夢中で逃げてきたのだろうが、それもここまでのようだ。


 意識は段々と薄れゆき、地面に倒れてしまう。とても起きあがることは出来そうにない。


 路地裏には浮浪者や、表を歩けぬ者が多いため、少女の現状は非常に危険だ。


 先ほど去った男どもとは別の悪漢が、倒れた少女を金儲けに利用すべく手を伸ばすが少女は目を覚まさない。このまま路地裏の住人に蹂躙されてしまうのか……!?



 ◆ ◆ ◆



「たっだいまー♪ みんな大好き、イングリッド様のお帰りだぜー♪」


 イングリッド邸の玄関戸が派手に開かれ、入ってきたのはこの家の家主、イングリッド・ゾーション。

 この始まり方もこれで最後となるだろう。



「お帰りなさいませ、イングリッド様。

 お昼ご飯は食べてくるかと思って用意してませんけど、パパスコ社のパンならありますよ。

 食べます?」


 出迎えるのはクラミル一人。ハルカトーゼはいつものようにギルドへ出勤し、イオリーンは自室で書類仕事の整理をしている。


「昼飯はさっきナンパした子と一緒・・に食べて来たけど、また腹減ってきてんだよ♪」


 意味深な発言は、両方食べてきた、という意味である。わざわざ解説する必要もないだろうが。



「ところでイングリッド様」


「おう、なんだ?」


「その肩に担いでいる少女は?」


「拾った♪」



 先ほど、イングリッドが帰宅途中に百合にのみ備わる<百合レーダー>によって探知し、悪漢の食い物にされそうだった少女は助かったのだ。


 全身の傷も、これはイカンと思ったイングリッドの適切な触手粘液で包むことでほぼ完治しており、失った血液にしても、自身の体液を呑ませることで補っている。


 イングリッドの触手は他人への治療にも使えてかなり便利なのだ。


 そして勿論、意識の無い少女を相手に、同意無く手を出すことはない。年齢から言えば処女である可能性も高く、初体験を意識のないまま奪うことを彼女は是としないのだから。


 まぁ、治療粘液を塗りたくる過程で、揉みっとしたりはお約束なのだが。



「それでまぁ~、この子。なんか人探してるみたいでさ。

 掃除屋ギルドにでも連れてってハルちゃんにでも任せようと思うんだよ。

 このままだとワタシはこの子を同意がなくとも食べてしまいたくなるからな」


「確かに可愛らしい子ですね。

 常に清く正しく性活を送る、イングリッド様が理性をかなぐり捨てそうになるのも分かる気がします」


「お、クラミルもようやくワタシに似てきたのか?」


「御冗談を。私は従者にしてあなたの馬でありペット。

 余計な感情はあなたへの一応ある忠誠心を濁らせますので控えていますよ」


 だが、その発言とは裏腹に、内心ではイングリッドの連れ帰った少女に惹かれているクラミル。


 普段は冷静沈着にして、イングリッド以外の女性に惹かれることが少ないクラミルにしては珍しいものだ。


 しかし、このまま談笑しつつ少女を眺めるのも良いが、ここで雑談していても何も始まらない。

 イングリッドはテーブルの上のパパスコ社のパンを触手状に伸ばした腕で食しながらギルドへと向かうことにした。


 彼女は口以外にも体の至る所から消化液を出して吸収することも出来る触手と人間の良い所取りの身体構造なのだ。


 そして場面は飛び、ギルドへと場所と時間を進めよう。



 ◆ ◆ ◆


 

「うっはぁ~、面ッ白くなってきたぁぁぁぁー♪」


「ちょっとイングリッド様! もう少し速度落としてください!」



 瓦礫の山を吹き飛ばしながら駆けるイングリッド。追うクラミル。


 はて? 二人は謎の少女を担いでギルドへと向かったはずなのだがこれは一体何をしているのだろうか?



「まさか拾った少女が、実は腹違いのワタシの妹で、触手王である親父がこの街を滅ぼしに来るのを知らせに来る途中だったとはな♪」


「こんなことならもう少し早く起こしてあげるべきでしたね。

 あの子が探している人がイングリッド様だったなんて気づけませんでしたし」



 そう、イングリッドが助けた少女――名をラン・バンムという。


 彼女の母親は養鶏場を経営し、鶏肉のスペシャリストの家柄だが、触手王が散歩の時に通りかかって襲われたという不幸から生まれた子。


 母親はランを産むと同時に死亡。母の仇を討つべく、イングリッドと同じく触手型クリーチャー達への復讐を誓いつつ、うっかりヤクザまがいの連中に奴隷にされそうだったところを逃げ出して来たのだとか。


 そして自宅の養鶏場近くに別荘を建てていた触手王が丘の上から「今日はお昼からドレバス・シティを襲うぞー!」という叫びを偶然聞いてしまッたと言う訳だ。


 何と言うご都合主義! しかし物語とは、往々にしてそのようなものだったりするのでいちいち突っ込んでいたらキリがないだろう。


 少なくとも、イングリッドは気にしていない。



「ワタシの恋人たちと妹に手を出しただなんてゆるさねぇぞ親父ぃぃぃ~!」



 街に侵略してきた触手型クリーチャーの群れは、街の掃除屋たちが討伐。さすがは大都市!


 残るは触手王のみ! だが……、強い!!



「どうしたどうした我が娘よ!

 貴様の母は、実験動物として生み出された我が人類の敵となったことを知ると、わざと我の種を受け入れて貴様を身ごもった。

 何故か分かるか? イングリッド」


 触手王は人語が話せる。


「ワタシという強力無比な人類の希望を生み出すためだろう」


 会話をしながらもイングリッドの強力無比な拳が触手王の顔を抉る。


「そうだろうな。貴様の母は賢しかった。

 では我は、貴様の母親の企みに気づきながら、なぜ孕ませたか分かるか?」


「天才と名高い母さんの策略を――ワタシを今この場のような衆人環視の状況で殺すことで人類の希望を潰えさせるためだろう! 親父!!」


 唐突ながらも古き因縁のあるイングリッドと触手王。


 二人の会話は大勢の人間が気になるであろう事柄だ。


 とはいえ、“あの”イングリッドの父親なのだ。



「我がお前の母を孕ませたのは、貴様の母が美人過ぎたからだ!

 色気に勝てなかったからだ!!」



 触手王、意外と人間じみた欲求の権化である。触手というのは大体そんなものだが。


 幾度目かの拳の応酬でお互いの肉体は大きく欠損し、イングリッドも両腕を失い、すでに蹴り技のみで応戦していた。腕を生やそうにも、切断面に触手王の体液が塗られたため、洗い流さなければ無理だろう。


 ついにはイングリッド。触手王の反撃により、大地に縫い付けられてしまった!


「諦めて死ぬと言うのなら一撃のもとに殺してやろう。どうする?」


「だぁ~れが死ぬってんだぁぁぁぁ~!?」


 強気で返すも両腕が無ければ立ちあがることも出来ない。

 しかし、彼女は半分が触手型クリーチャーであると同時に、もう半分は人間なのだ。


 どんな困難にぶつかろうとも、拳固めてゲンコツが作れるなら、まだやれる! それが人間の強さだ!


 たとえ腕が無かろうと、足がある! 常人の三倍はあろうかという脚力が!


「「うおおおおおおおおおぉぉーー!!」」


 そしてお互いに最期と決めて打ち出した最大の一撃が閃光を放ち、街の住人たち皆が見守る中、決着がついた……。



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