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ルーナさんと呼ばないで……。



「アギラオさん、いつもいつも筋トレに明け暮れるのは女性としてどうなんでしょうか! 一緒にウィンドウショッピングでも行きません?」


「何を藪から棒に……。と言うか俺が女だって話したっけ?」


 思わず言ってしまってから疑問に思う。


「何言ってるんですか。先日、ノルドさんが皆に就労タグくれたじゃないですか。ばっちり女性って書いてましたよ、ルーナさん。それに本気歌いの時、衣装も髪型も女装になるのに今更だすって」


「その名で呼ぶなよ! まあそうか、女装癖とかに勘違いされんのも困るし良いか。んで、なんでウインドウショッピング?」


「実はですねー。フォルクさん達と話してる時に呪歌の衣装の話になったんですが、地味に毎回衣装の違うフォルクさんに対してアギラオさんの衣装が何時も同じなのはどうしてだろう? って話になって……、最終的にアギラオさんの興味の無さによるのかもって事になりまして。勉強がてらどうですか?」


「おいおい、地味とかさらっと言ってやるなよ」


 苦笑しながらも、悔しいがあながち間違いじゃないと思う自分とどうでも良いと思う自分がせめぎ合う。


「マリさんのマリナちゃんも隊を担うボーカリストとしてどうなのって言ってますよ?」


 笑顔で言い放たれた衝撃の一言に戦慄する。


 マリは良いとしてマリナまで!! シャリナ、恐ろしい子!?


 かくて、へこたれたアギラオはあれよと町に連れ出されて行った。同行者はシャリナ、マリ、マリナの4人。荷物持ちにシンタが居たら良かったが既に出掛けて不在だったのは幸運だったのかもしれない。後にアギラオは思ったとか無いとか……。


「まずは通りに面した大型店からですよね」


 猫耳をそばだてて俄然やる気のシャリナにアギラオを除いた2人も意気揚々と唱和する。既にげんなりしたアギラオは無抵抗に引きずられる様に連行される。


 女性陣がやいのやいの言いながら冷やかし歩くのを慣れないアギラオが必死について行く。無駄にするのもあれなので、わからない時は皆に質問しながら見て回る事3時間。流石に疲れてきたアギラオを除いて皆はまだまだの様子。


 この体力何処から出るのさ? 俺の鈍器演舞よりも、ものっそい疲れる。見る量に比べて買う物は少なく、店を戻ったりしてまで安くて可愛いを追求する姿勢に脱帽する事然り。


「ごめん! もう無理~、俺はもう疲れたよ。少し休まない?」


「もう疲れちゃったんですか? 仕方無いですねー。なら喫茶店でも行きます?」


「喫茶店てどういう所?」


 好奇心旺盛のマリナが元気一杯に質問する。


「ふふ、甘いもののある休憩所ですよ。マリナちゃんの気に入ると思います♪」


 楽しみだとキャッキャする3人には申し訳無いが、俺はおっさんが淹れるほろ苦い珈琲が1番恋しいとは言えない雰囲気だ。


 何だかお洒落な店名の喫茶店に落ち着いたアギラオ達。目の前にはとりどりのお菓子と果汁ジュースが並ぶ、辛うじて俺は珈琲を頼めたのでホッとする。


「どうでした? 少しは気になる服ありました?」


 前のめりで訪ねるシャリナ。


「良い鎧や武器ならもう少し気力が沸くんだけどねー。何と無くは見つかったよ」


 自然と長くなってきてしまった髪を無意識に弄りながら答えるアギラオ。


「そう言えば、髪伸びましたねー。私、癖っ毛だからアギラオさんみたいな真っ直ぐな髪質羨ましいです」


 良い事思いついた! みたいな雰囲気でとんでもない事を言い出すシャリナ。


「この際だから美容院で散髪して貰ってお化粧しませんか!? 私、お化粧道具持ってますから!」


 冗談じゃない。生まれて一度も化粧なんざしたこと無いよ!


「勘弁してー。流石に恥ずかしいから。無理無理無理無理!」


 悲鳴の様にお願いする俺に彼女等は容赦無く。俺は美容院とやらに連れて来られた。


 店内は綺麗な女性で溢れ、場違いさに身が縮む思いがする。


「俺、浮いてるだろ……、気不味い、帰して~」


「大丈夫ですって、絶対綺麗になりますから!」


「助けてー」


 問答無用とばかりに座らされ、微笑ましくしている店員がケープを掛けてくれる。


「女性らしく整えて下さい。長さは変わらない位でお願いします。後で化粧机借りますが良いですか?」


 すらすらと注文していくシャリナ主導の下、アギラオ大改造作戦が発動される。遂に諦めた俺は観念して力を抜いた。


 整えるだけだった髪はそんなに手間の掛かるものじゃなく、サクっと済ませ流れだけ意識して形を作る、伸びたとは言えまだ肩口迄の長さ。襟足を遊ばせて動きを出すとか何とか。


 日焼けした肌は無理やり塗り潰すより生かす方向で決定。場所を借りて着替えを済ませる。今まで小さなブラで押さえ付けていた胸が顕になって息を呑む外野。


「アギラオさんて、実は巨乳だったんですね」


 唖然とするシャリナの視線が恥ずかしい。憎憎しげに胸を叩くマリが怖いってば!


「うぉっ。そんな所から肉寄せんの!? 痛い痛いー」


「けしからん、まだ大きくなるのか」


 マリが慄き、シャリナがブラの位置決めに全力を尽くす。正に阿鼻叫喚。当初は少し盛り気味にしようと話していた服をアクセント程度に留めて、腰周りに太目の細工縫いの柔らかいベルト短めの白いスカートにタイツに軽い生地のショールを巻く。


 キメの細かい肌らしい肌に薄化粧を施して、明かるい色の紅を引きどちらかと言うと精悍な顔立ちを綺麗系に書き換える。


 たっぷり2時間程掛かったが、そこには別人に変身したエロ綺麗系ミニ女が存在していた。


「うわぁ~。お姉ちゃん、綺麗!」


 飛び跳ねてうっとりするマリナ。更なる変わり様に打ちのめされたマリ。満足そうなシャリナ。三者三様の高得点な反応にいまいちついて行けないアギラオが頬を搔こうとして化粧が崩れると気付き辞める。そんな光景があった。


「勿論、皆さんにもお披露目しますよね?」


 笑顔で今日1番の爆弾を落とすシャリナ。


「え゛。……見せるの?」


「皆に?」


「はい♪」


 …。


 ……。

 

 ………。



 結果から言うと逃げられませんでしたとも。焼けになった俺は開き直って堂々と帰宅した。



 男性陣の反応は節句。


 暫く、誰も俺がアギラオだって事に気付かなかったのは笑えたが、男性陣のエロい目線に俺が1番びっくりした。


 今後、無闇に着飾るの辞めた方が良い気がする俺だった。


 

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