1-3.転生
1-3.転生
「あーーーーー。」
俺の声は1オクターブほど高かった。
「あらあら、ラルスちゃん、お腹がすいたのかしら。」
すごい美人にあっさり抱きかかえられた。母親か?
――ホントに赤ちゃんやん。
やがて、口に乳首を当てがわれると、反射的に母乳を飲むことになった。腹が満たされると何だか眠くなった。
――いつぶりだろう?無条件に安心できたのは?
ラルスと呼ばれた俺は瞼が重くなった。
――不覚。ぐっすり寝てしまった。何しろ、泣く、吸う、排泄するしかできないのだ。
どうやら、母親はネリナと言うらしい。父はピウス。俺はこの若夫婦の第一子らしい。二人は仲良く、温かい家庭だった。そう、前世と違って…。
――怒鳴らない父。品の良い母。
――もう、それだけで最高じゃん。
――親だけは…。選べないからな。
両親は仲が良かった。
――時々目を塞ぎたくなるほど熱々だが、それも含めて平和な家庭である。
――チート能力、要らねぇよ。この母と父がいるなら、もう何も要らない。
俺は泣けてきた。
「あー、あー。」
赤ちゃんの泣き声にしかならない。ネリナが慌てて俺を抱き上げた。おむつでもおっぱいでもないのに呼んでしまって何だか申し訳ないが、呼んでも全く怒られない。
――安心。黄金にも替えがたい。
俺はまたもや、眠り落ちた。
こうして俺の異世界ライフは始まった。たっぷり寝ながら、言葉を覚えたり、魔法を使っているシーンを興味深くみたりしながら、少しずつ成長していった。
そして、5歳になった。俺はラルス・ソリジュン。自警団の腕利きである父ピウスと、小さな家が似合わないどこか品のある母、ネリナ。母は何でも知っていた。何を聞いてもそれはね、と講釈が始まる。分からないことがあれば数日後には調べてくるのか詳しく教えてくれた。母が物知りなことは驚くべきことだった。
――それにしても、開けてのお楽しみ、というチート能力が一向に何だか分からないんだが…。
子供とはいえ、中身は元青年である。
超能力が使えるのではないかと思ってスプーンをこすってみたが曲がることはないし、念じればものが浮くかと思ったがそれも違った。俺のことを惚れさせる能力がないかと母親をじっと見つめてみたが、
「大好きよ。」
といつものように応答されてしまった。何でも言うことを聞かせられるか、と思ったがそんなこともなかった。
いつものように母親にまとわりついていると、母親は、人差し指が、着火の杖のように使えるのだ。プチファイヤが出せるらしい。
――すげえ。生活魔法だ。本当に使えるんだ。これはネリナだけのものなのだろうか?俺も使えるのかな。でも火は怒られるぞ。どこかで実験しないと…。
…などと考えている内に、寝落ちしてしまった。




