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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第四章 雪のプレゼント編
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第46話 モテ期到来!?

 11月12日。

 球技祭が終わり、いつもの日常に戻る。

 昨日の激しい運動のせいで身体中が筋肉痛で登校するまでの道のりが果てしなく遠く感じる。足取りも重い。


 「はぁ〜痛いよ〜。今日くらい学校サボってもよくなぁーい?」

 「駄目です。学生らしく勉強しなきゃです。生徒会の私が許しませんよ?それに、2週間後は全国模試ですよ?」

 「…私、テストキャンセルで」

 「いや、そんなの無いっすよ?」


 「全国模試」と言う単語が五花と三和の足取りを更に重くする。

 2週間後、今年最後のテストがある。中間テストはなんとかなったが、期末テストは話が違う。範囲も難易度も別次元だ。夏休み前の様に勉強しなければ補修もあり得るだろう。


 「先輩は大丈夫なんですか?」

 「まぁな。一応生徒会の一員だからな。成績は維持している。どこかの誰かと違って勉強はしっかりとしているしな」

 「むむ?マコトっち、それは誰に言ってるのかな?」

 「…私は大丈夫だもん!」


 2人がぷくぅと頬を膨らませて俺の方を睨んでくる。その姿を見て皆んなで吹き出してしまう。


 ○ ○ ○


 「球技祭も無事に終わって、次は全国模試だからなー。お前ら切り替えて勉強しろよー」


 先生の呼びかけにクラス中からブーイングが先生に向けられた。まぁ気持ちもわからなくもない。楽しかった後のテスト程学生にとって辛いものはないだろう。

 また勉強会をする事になるんだろうな。前は図書室だったけど、今回は家で出来るのか…。

 頭の中で想像していると、顔がにやけそうになった。太腿をつねって表情を元に戻す。なんで「嬉しい」と感じたんだろう。幸せな疑問が浮かんだところでホームルームが終わるチャイムが聞こえた。


 5限目の国語の授業中。黒板に向かって先生が解説をしている。チョークのコツコツと言う音と先生の解説は、まるで子守唄の様に生徒達の睡眠を促す。気づけばクラスの皆んなも必死に睡魔に抗い、眠らない様にしている。シャーペンで手の甲を刺す者、頭がカクンと動くたびに起きる者、既に諦めて突っ伏して寝る者。暖かい昼下がり、自然と眠くなるのもわかる。実際、俺も眠い。


 「ここは模試にも出るからなー。じゃあここの問題を…飯塚答えてみろ」

 「ふへぇ…?」


 今の時間帯、気持ち良さそうな窓側の1番後ろの席。俺の隣の席の飯塚咲(いいづかさき)は、さっきまで教科書で顔を隠し、突っ伏して寝ていた。

 そんな彼女が急に指名されて答えられる訳がない。当然の様に焦った様子で席を立つも、何をやっているのか、どこの問題なのか…いや、あの顔を見る限り問題すら聞いていないだろう。


 「えぇっと…その…へぇ…?」

 「…『精神的に向上心のない者はばかだ』」

 「え?」

 「ん?どうしたぁ?飯塚、わからないか?」

 「い、いえ!『精神的に向上心のない者は馬鹿だ。』です!」

 「おお、その通り。座っていいぞ」


 肩の力を抜いて、脚の力が抜けた様に自席に座り、そのまま、ぐたぁっと上半身が机にもたれかかる。

 体はそのままで、彼女は顔をこちらに向けて俺が答えを囁いた様に小声で話しかけて来る。


 「ありがとう!助かったよ」

 「気にしなくていいよ。確かに眠くなるよね」

 「いや〜あの先生の声って抑揚がなくて眠くなっちゃうんだよね」


 淡々と授業を進める姿は、わかりやすくもあるが、聞いていると確かに眠くなる。まるでロボットの事前に録音された音声を聞いている様だった。静かな授業中、そこから彼女の視線は前の黒板ではなく、横の俺に向いていた。

 授業終了のチャイムが鳴り響き、号令の後に皆んな体を伸ばす。先程まで眠そうだった飯塚さんがまるで別人の様に元気になり、休み時間を待ち望んでいたと言わんばかりに話しかけて来る。


 「ねぇ、門川くんってやっぱり頭いいんだね!さっきは助かったよー。いっつも学年一位だし、授業も誰よりも真面目に聞いてる。本当に凄いな〜!私には出来ないよ!」


 茶髪のロングヘアーがさらりと揺れ、僕の顔を覗き込む様に見上げて来る。机の上を片付けようとすると、彼女は椅子をぐいっと近づけてさっきまで書き写していたノートに視線を落とした。彼女の着崩した制服は、ブラウスの胸元のボタンが開いており、前屈みになっている事もあって視線が自然とその隙間へと吸い寄せられる。

 そんな自分を必死に抑え込み、見ない様に目線を上げる。


 「へぇ〜本当に勉強出来るんだね……」

 「ま、まぁ生徒会だし、これくらいはね…はは。」

 「へぇ〜…」


 ○ ○ ○


 放課後、生徒会の仕事を終えて下駄箱に向かう。四羽と三和と二奈が昇降口で待っている筈だ。急足で廊下を歩く。廊下を曲がって階段を降りようとした時、階段の踊り場で見たことのある女子生徒が、壁に寄りかかりながらスマホを覗き込んでいた。


 「あ、門川くんやっと来た〜。生徒会って大変なんだね」

 「飯塚さん?まだ残ってたの?って言うかスマホは禁止」


 まぁ、自分も言える立場じゃないんだけど…。

 軽く注意すると「いいじゃんそのくらい」と文句も言いながら素直にスマホをポケットにしまう。飯塚さんが何故ここに居るのか聞こうとしたが、先に生徒会室を出た四羽の存在を思い出し、その場を去ろうとする。すると、制服の裾をぎゅっと握りられて止められる。


 「?飯塚さん、どうしたの?」

 「ねぇ門川くん。この後付き合ってくれない?」

 「え?それはどう言う…」

 「私、テストの点悪くてさぁー。今度の模試でいい点数取っておかないと進路的にやばくて…だからお願い!勉強教えてくれない?」


 パチンっと手を合わせてお願いされる。正直、こっちにも三和や五花と言うギリギリな子が居るから断ろうと思ったが…さっきの授業中の姿を見ると、大分深刻な問題なのは容易に想像できた。放課後に少しくらいなら付き合ってあげてもいいだろう。


 「わかったよ。結構、危ういっぽいしね」

 「本当!?真くん付き合ってくれるの〜!!??ありがとうー!!」

 「ちょっ!声がデカい!」


 廊下に彼女の喜ぶ声が響き渡る。反響し合って波紋の様に学校中に広がる。エコーが、かかった様な声を3人の許嫁が聞き取った。


 「…真が付き合ってくれる?」

 「先輩が付き合ってくれる?」

 「真が付き合ってくれる?」


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