エピローグ
「おめでとう、香百合」
「すごく綺麗よ」
「いろいろあったけど本当に良かったね」
たくさんの友人の祝福の言葉を受けて、私は誠也さんと共に披露宴の円卓にキャンドルを灯しながら歩いた。
反対のドアからは香蘭が竜司さんと共にキャンドルを灯している。
誠也さんのリベンジプロポーズを受けて、なぜか香蘭と一緒に合同結婚式を挙げることになってしまった。
もともと私と竜司さんで予約していた式場だった。
前代未聞の結婚式になったが、香蘭がどうせ挙げるなら一緒にしようと言い出し、それもいいかもしれないと思ってしまった。
友人たちは傷心の私の復讐劇だろうかと戦々恐々と披露宴にやって来たが、あまりに幸せそうに笑っている私に面食らったようだ。
最初は負け惜しみで演じているのかと思ったようだが、時間が経つにつれ演技ではないのだと気付き、帰る頃には何の違和感もなく、この二つのカップルを受け入れてくれていた。
最初は興味本位で見ていた人々も、屈託無く笑う私に興味を示さなくなった。
人の目などこんなものかもしれない。
本人が気にしなければ、他人の不幸なんてすぐに忘れていく。
記憶はどんどん書き換えられ、新しい私が塗り重ねられていく。
ここでしっかり書き換えてもらうためにも、合同結婚式にして良かったかもしれない。
私と誠也さん。
香蘭と竜司さん。
ハッキリ目の前で見せ付けられた人たちは、もう勝手な憶測で噂する必要もないだろう。
「ところで竜司さんとはどうなったの?」なんて聞いてくる人も、もう現れない。
聞かれたところで、胸が痛むことももうなかった。
まるで禊のように、リベンジシステムによってあらゆる毒が流されたような気がする。
「いいなあ、お姉ちゃん。この後ヨーロッパ周遊ハネムーンか……」
新婦二人を挟むように四人で前に並びながら、香蘭がそっと呟いた。
最初は竜司さんと行く予定だったがキャンセルしていた。
まさか相手を変えて同じ日程で行くことになるとは思いもしなかった。
「香蘭も無事子供を産んだら、三人で行けばいいわ」
妊婦の香蘭はさすがにハネムーンは行けなかった。
「竜司さん、私はドバイがいいわ。産んだら連れてってね」
「……」
ずっとふて腐れたような顔をしている竜司さんにも香蘭は動じない。
「もう! なんて顔してるのよ。もっと幸せそうな顔しなさいよ! 少しは誠也さんを見習ってちょうだい!」
「え?」
私は反対の隣に立つ誠也さんに振り返った。
誠也さんは慌ててコホンと咳払いをして弛んだ顔を引き締めていた。
今日はイケメン仕様でメガネをはずしているので、細まった目元が隠せてない。
私は「ふふ」と微笑んで誠也さんの腕にそっと寄りかかった。
誠也さんは私を見下ろし、ポーカーフェイスを諦めたのか、幸せそうに微笑んだ。
これで課題が終わったわけではない。
生きている限り……。
きっとまた難しい課題が降りかかってくることだろう。
死後裁判の記憶は、もうおぼろげにしか思い出せなくなっている。
でも、言葉で表せないなにか。
とても尊いものが体の中に根付いた気がする。
だから怖がらずに進んで行こう。
この愛しい世界を……。
END
完結です。
年をまたいでの完結となりましたが、最後までお付き合い下さりありがとうございました。
たくさんの感想、評価、ブックマーク、ありがとうございます。
とても励みになりました。
前半はかなりシビアな展開となるため、感想が荒れるだろうと思いましたが、そんなこともなくラストまでたどり着けて良かったです。
この作品は書籍化作品の続き物でもあり、あまりWEB向きではなく、ライトなものだと思って読んで嫌な気分になる方もいるかもしれませんので、ある程度アクセス数が落ち着いたら非公開にするつもりです。
またいつか、読んでもらいたいと思う方がいたら再び公開するかもしれませんが、1週間ほどで非公開にするかもしれませんが、お許しくださいませ。
元旦の完結となりましたが、皆様が新たな年を楽しく過ごせますように。




