7話:ウォズニアック出会いとブルー・ボックス
高校2年生~3年生の間にジョブズはマリファナを始めた。ある時はマリファナを愛車に置き忘れて父親に見つけられることもあった。なんだこれは?ジョブズは決して慌てない。マリファナだよ、珍しく、この時の父親は烈火の如く怒った。おやじと本気で喧嘩したのはこの時がはじめてだったとジョブズは言う。しかしジョブズは折れることはない。
「二度と使わないと約束しろと言われても約束はしなかったよ」
この頃、学校の先生を通じてジョブズはある一人の卒業生に出会った。彼は当時から天才として
伝説になっていた。ジョブズのつ年上だ。彼の名前はスティーブ・ウォズニアック。後にアップルを創業する2人の天才の出会いだ。ジョブズは自分よりエレクトロニクスに詳しく、エンジニアとして優れているウォズに興味を引かれた。
ウォズもまた自分の話をこれほど理解してくれる人は初めてだ。と感じ、二人は意気投合した。ある時、ウォズの母親からもらった「エスクァイア」誌1971年10月号に掲載されていたブルー・ボックスと呼ばれる装置を使って無料で長距離電話をかけるというフリーキング「不正行為」の記事を読んだ2人はスタンフォード大学の図書館に入り込み技術資料を見つけ出して自分たちでオリジナルのブルー・ボックスを作り上げた。
2人は、この装置で長距離電話をかけまくって楽しんだ。なかでも有名なのはヘンリー・キッシンジャーのふりをしてバチカン宮殿のローマ法王へ電話した話だろう。結局、取り次ぎの人にいたずらだとばれてしまいローマ法王とは話せなかったのだが・・・。
実はこの時、後に定着する2人の協力体制がはじめて登場する。ジョブズはブルー・ボックスが趣味以上のものになり得ると考えた。
「電源、キーパッドなどの部品を集め、いくらで売ったら良いか考えた」とジョブズもアップル創業時の役割分担がこのとき始まったと証言している。ジョブズとウォズはこのブルー・ボックスを百台ほど作りすべて売った。ところが、楽しみの金儲けにも終わりがくる。ジョブズは早くお金が必要だったため隣のテーブルに座っていた男たちに声をかけた。
興味を示したので外の電話ボックスからシカゴまで電話をかけてみせた。車まで金を取りに行くと男たちが言うのでジョブズとウォズがついて行くと、シートの下から拳銃が出てきてジョブズの腹に突きつけた。強盗された。これにより販売は停止となった。こういう馬鹿な経験をしたから自分たちは後にもっと大きな冒険的事業に乗り出せたのだとジョブズは語る。
ブルーボックスがなければアップルもないと思う。それは間違いない。この経験からウォズも僕も協力することを学んだし、技術的な問題も解決し、製品化できるという自身を得た。ウォズも同じように感じている。あれを売ったのはまずかったけと思うでも僕のエンジニアリング力と彼のビジョンでなにができるのか、それが何となくわかった。ふたりはそれから、ブルーボックスから生まれたパターンで協力していく。
高校卒業が近づいた頃、ジョブズは一歳年下のクリスアン・ブレナンと付き合い始めた。
「アニメーション映画を一緒に作っているうちにデートするようになった」、
「はじめてのガールフレンドとなったとジョブズは話す」
「彼女の友人ブレナンは、スティーブは、かなりおかしかったわ」
「だから惹かれたのと評している」
実際、ジョブズはおかしかった。ホイペット犬くらいになるようにと食事は果物と野菜だけにしていた。まばたきをせずに相手を見つめる練習もしていたし、長めの沈黙と畳み掛けるようなマシンガントークとを織り交ぜる話し方の練習もした。加えて、肩までの長髪に、ひげもじゃでまるで狂気のシャーマンというイメージだった。
1972年、高校を卒業するとロスアルトスの山の小屋でブレナンと暮らしはじめた。「小さな家でクリスアンと暮らす」と両親に宣言すると両親は激怒したがここでもまた、ジョブズは我を通し、さよならの一言で出て行ってしまった。