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『死因:熊。転生先はマンモス時代でした』  作者: 忍絵 奉公


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第64話 オロチの嫌う匂い


 しばらくして。

 城壁の向こうから、四つの影が走ってきた。

「戻ってきた!」

 ユキ。

 ハヤテ。

 ゴウ。

 コマ。

 四頭が何かを咥えている。

 そして。

 近づくにつれて、強烈な匂いが漂ってきた。

「……なんだ、この匂い」

 タカシが鼻をつまむ。

 ユキが地面に次々と置いていく。

『見つけたぞ!』

 タカシはしゃがみ込んだ。

「これは……」

 見覚えのある植物。

「行者ニンニク!」

 さらに。

「こっちは……キノコか?」

 形を見て首を傾げる。

「これは何だ?」

 クロベも分からない。

 そして次。

「マツタケ!」

 タカシの目が輝いた。

「こんなところにあったのか!」

 さらに。

 鮮やかな青い実。

「青唐辛子!」

 タカシが触る。

 そして少しだけ舐めてみる。

「……」

 一秒。

 二秒。

「辛っ!」

 タカシが顔をしかめる。

「痛い!」

 ユキが尻尾を振る。

『だろ?』

「これは面白い!」

 さらに大蒜。

 コンニャクイモ。

 その他にも、見たことのない野草がいくつも並んでいる。

 タカシは目を輝かせた。

「これ……」

 食材だ。

 しかも。

 調味料にもなる。

 保存食にもなる。

 料理の幅が一気に広がる。

「食材革命になるぞ!」

 クロベが苦笑する。

「今はオロチのほうが問題では?」

「……あ」

 タカシが振り返る。

 その時だった。

 ドドドドドッ!

 ユキたちの足音を聞きつけたオロチが、再び城壁へ向かっていた。

「まずい!」

 タカシが手を振る。

「ユキ!」

「止まれ!」

「しっ!」

 ユキたちがピタッと止まる。

 タカシは大蒜を持ち上げた。

「これだ」

 そして青唐辛子も。

「これもだ」

 ユキが首を傾げる。

『これを?』

「そうだ」

「これを大量に持ってきてくれ」

 タカシは大蒜を指差す。

「特にこれ」

 そして青唐辛子。

「こいつもだ」

『分かった!』

 四頭が一斉に向きを変える。

 城壁を飛び越える。

 ダッ!

 ダッ!

 ダッ!

 四頭が遠ざかっていく。

 その足音に。

 オロチが反応した。

 グルン!

 巨大な頭が動く。

 ズズズズ……。

 また追い始めた。

 しかし。

 狼たちの速度は圧倒的だった。

 ドドドドドッ!

 音が遠ざかっていく。

 オロチも少しだけ追う。

 だが。

 すぐに音が聞こえなくなった。

 オロチは立ち止まった。

 何もない。

 静寂。

 しばらく辺りを探る。

 そして。

 ズルズル……。

 また元の場所へ戻る。

 グルグル。

 巨大な体を丸める。

 再び、とぐろを巻いた。

 タカシは城壁の上から見つめていた。

「……面白いな」

 クロベが隣に立つ。

「何がです?」

「オロチは、音を追う」

 タカシは大蒜と青唐辛子を見る。

「そして、俺たちはあいつの嫌いな匂いを見つけた」

 タカシの頭の中で、何かが組み上がり始めていた。

 ただ倒すだけではない。

 追い払えるかもしれない。

 誘導できるかもしれない。

 もしかすると。

 この怪物を利用することすら。

 タカシは大蒜を握りしめた。

「……食材としても使えるしな」

 クロベが笑った。

「そちらが本命では?」

「いや、今はオロチだ」

 そう言いながらも。

 タカシの目は、マツタケとコンニャクイモにも釘付けだった。


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