大正ロマン探偵もの 1-1
ベタに大正ロマン×探偵ものです
題材としては丸く、シリーズものとして投稿してもよさそうに感じるのですが、
あまりにも遅筆でやる気がなくなってきたので、
書いた先からここに投稿します。
もしあらすじができるくらい続いたらちゃんとシリーズ化します。
心というものは、どうしてこう、持ち主の邪魔をするのだろうか。
人は生きていると、様々な場面で選択を迫られる。
そんな時に必要なのは、選択の先にある未来を考えることだ。
それなのに心というヤツは、過去のことばかり掘り起こして、品定めをする。
あれは楽しかった。
これは悲しかった。
それはどうだ。
そんなことをわめくヤツが隣にいるせいで、未来を考えることを、人はやめてしまうのだ。
現に私は、愚かしくも花札で一文無しになってしまった。
始めは今後ひと月のことを考えて、手持ちの半分は賭けに使わないと決めていた。
しかしもう半分が一時、倍ほどに膨れ上がってしまった。
これほど楽しいことは他にあるまい。
私は花札を続け、気がつけば負け始め、気がつけば手持ちの全てを賭けていた。
こうして一文無しになった私に、胴元はいやらしい決まり文句を浴びせた。
「いやぁ、惜しかったですねぇ、丹羽の旦那。どうです、これじゃ収まりがつきませんでしょう?お得意様のよしみでいくらかツケますよ」
すると、後ろから娘の声がした。
「いけません、先生。そんなことをすれば、あなたは今度こそお父様に見捨てられてしまうでしょうよ」
振り返ると、仕立ての良い洋服を着た娘が仁王立ちでこちらを睨みつけていた。
娘は財閥一木家のご令嬢、一木奈緒だ。
奈緒が怒るのは、寝食小遣いを与えてやっている書生、つまり私が博打に呆けるせいだろう。
私は胴元の誘いを断り、奈緒とともに賭場を出た。
「これは失敬、奈緒様。もしや何か御用で?」
「ええ、お父様が仕事だって。先生はどこかと言うから、どうせ花札をしてらっしゃると思って、連絡役を承りましたの」
奈緒の父は財閥一木家のご当主、一木征之介だ。
征之介から与えられる仕事の半分は書生らしく、奈緒の家庭教師、お使い等の雑務だ。
もう半分は出資先の内情を推し量ったり、一木家の愛娘が通うかもしれない学校の評判を尋ねて回ったり、何やら探偵のような仕事だ。
(しかし休暇中の呼びつけとは珍しい。難しい仕事でないといいが)
征之介が呼んでいたという一木邸に、私たちは向かった。
一木邸に着くと、女中が奈緒を引き止めつつ私を空き部屋に案内した。
「だから知らねえって。盗んだのは俺じゃねえ!!」
わめき声の主、下男は後ろ手にして椅子にしばりつけられていた。
その見張りのため、脇に老下男が立っている。
老下男はこちらに気づくと、お待ちしてましたよ、と私にメモをくれた。
「どうやら使用人の誰かが家内の遺品を盗んだらしい。
大したものではないがしかし、取り締まり我が家の風紀を守る必要がある。
どうか内々に解決することを試みてくれないだろうか。
征之介」
事件を考えるの面倒…




