EP 4
天然サイコパスの闇医者ムーブ
「お任せください♡ 私に、とってもいいアイデアがあります!」
絶望に包まれたヤクザ事務所(料理屋)のド真ん中で、リアナは愛用の『マイ包丁』をキラキラと輝かせながら、満面の笑みを浮かべた。
「お、おい……お嬢ちゃん? なんでそんな物騒なモン持ってんだ?」
フェンリルが、嫌な予感に尻尾の毛を逆立てながら後ずさる。
「ふふっ。3千万円なんて大金、どうやって返そうかと思ったんですけど……簡単なことでした! お二人の『内臓』を売ればいいんですよ!」
「「「…………え?」」」
フェンリル、リーザ、そして闇金のブタジマすらも、一瞬何を言われたのか理解できず、ポカンと口を開けた。
「ブタジマさん、闇金業者さんなら『裏の臓器売買ルート』って持ってますよね? 狼王さんの強靭な心臓や腎臓、それから人魚姫さんの美しい肝臓なら、きっと高く売れると思うんです!」
「い、いやァ……まぁ、ルートはありますケド。いくら高く売れるっつっても、臓器なんて取っちまったら死んじまうでしょォ?」
本職の悪党であるブタジマが、リアナのあまりにも無邪気な狂気に押され、少し引き気味に答える。
すると、リアナは「えっへん」と得意げに胸を張った。
「そこが私のアイデアのすごい所です! ブタジマさん、私が回復魔法をかければ、欠損した部位なんて一瞬で元通りになるんですよ?」
「……ハ?」
「つまり! フェンリルさんとリーザちゃんのお腹を包丁で裂いて、臓器を取り出して売る! そして私が回復魔法をかける! すると新しい臓器が生えてくる! それをまた取り出して売る!」
リアナは包丁を持ったまま、ウキウキとステップを踏みながら恐るべき『錬金術』の全貌を語った。
「これなら元手ゼロで、『臓器の取り放題、売り放題』です! ね? 3千万円なんて、すぐに返せちゃいますよね♡」
「「「ヒィィィィィィィィィッ!!?」」」
ついに、フェンリルとリーザが恐怖のあまり悲鳴を上げた。
ギャンブルで身を滅ぼした末路とはいえ、「無限に内臓をえぐり取られる(しかも死ねない)」という罰は、地獄の責め苦よりもエグい。
「や、やめろリアナ! 正気か!? いくら回復するからって、お腹裂かれたらめちゃくちゃ痛いんだぞ!?」
「嫌ですぅぅ! 私の綺麗な臓器がぁぁ! お金なら、お金なら鼻に五円玉詰めて稼ぎますからぁぁ!」
涙と鼻水を撒き散らして土下座する二匹のクズ。
「大丈夫ですよぉ。痛いのは最初だけです! すぐに慣れますから、ちょっとだけ我慢してくださいね♡」
リアナは完全に『親切なナース』の顔で、包丁を構えて二人へとにじり寄っていく。
「エグい……エグすぎるスよこのお嬢ちゃん……ッ! ウチよりよっぽど闇じゃねェか……!」
百戦錬磨のブタジマでさえ、額から脂汗を流してドン引きしていた。
「——ストォォォォォォップ!!!」
ここでついに、カウンターの奥で顔面蒼白になっていた極道邪神・デュアダロスが、全力で間に割って入った。
「お嬢! 落ち着け! 包丁をしまえ!!」
「えー? でも、デュアダロスさん。これならすぐに借金返せますよ?」
「そういう問題じゃねぇ! お嬢、ご乱心でっせ! 仮にもファンタジー料理小説の主人公が『無限臓器売買』なんて闇医者ムーブかましたら、一発でサイト運営にBAN(垢バン)されますわ!! コンプライアンス違反の極みだろ!!」
デュアダロスの魂からのメタツッコミが炸裂する。
「うぅ……せっかくの名案だと思ったのに……」
リアナは不満げに頬を膨らませ、渋々といった様子で包丁を下ろした。
「はぁ、はぁ……助かった……」
フェンリルとリーザは、床に崩れ落ちて安心の涙を流した。しかし、彼らの借金3000万円が消えたわけではない。
「じゃあ、臓器売買がダメなら……」
リアナは少し考え込んだ後、再び天使の笑顔を浮かべて、とんでもないことを言い出した。
「お店のみんなで、『慰安旅行』に行きましょうか! ブタジマさん、お魚釣り(マグローザ漁)の船の手配、お願いできますか?」




