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司馬懿ちゃんをオトそうとしたら男装百合ハーレム!?  作者: 寝留ひびき


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第16話最終回「司馬懿ちゃんをオトそうとしたら男装百合ハーレム!?」

「あれが漢王室の正統な血筋を引く劉備《りゅうび》将軍……!」

「なんて立派な方なのかしら……!」

「劉備将軍が長安を解放してくださった! 万歳っ! 万歳っ!」

 ここは前漢の首都であった長安。我ら、蜀漢の緑の旗を大きく掲げ劉備将軍が入城した際には、大きな拍手と宴《うたげ》で歓迎された。

 やがて、我々が長安に入り八ヶ月ほどの初夏が始まる頃。首都への移動、防衛の再軍備、民への発令など、忙殺《ぼうさつ》されるような日々が続き、やっと落ち着いた――と思った段階で大急ぎで準備したのは戴冠式《たいかんしき》であった。劉備将軍を中心に、関羽《かんう》と張飛《ちょうひ》、そして諸葛亮《しょかつりょう》が並ぶ。その諸葛亮の付き人がボクとなる。

 王室宣言の厳《おごそ》かな式だというのに、張飛はずっと我慢するようにメソメソ泣いている。真っ赤ツンツンセミロングが泣く度にふわふわと左右に揺れる。

「劉備のあねさん……ついにやりましたよ……! オレたちはぁっ!」

「ああ。あとで、しっかり泣こう……」

 静かに注意する劉備。そして、諸葛亮が立ち、祝詞《のりと》が書かれた鮮やかな絹の巻物をしずしずと広げる。

 宮殿の大広間に、諸葛亮先生の朗々(ろうろう)たる綺麗な声が広がる。長安奪還と漢王室復興宣言の祝詞。内容は堅苦しいものだが、女性の低音ボイスは耳に優しくて無限に聴いていたいくらい好きだ……。

 さて、少しの緊張の中。付き人のボクがなんと劉備の頭に冠《かんむり》を捧《ささ》げる立場となってしまった。この役割も、長安奪還の立役者であるボクが推薦されたからであった。ボクは策で目立つのが好きなのであって、権威的なのは好きじゃないのだけれど。

 冠を乗せた瞬間、劉備は微笑む。ボクは聴衆に向き直り、諸葛亮の声のイメージを作り、大きく息を吸った。

「新皇帝、劉備皇帝陛下のご誕生である!」

 大きな拍手喝采が広がる。その聴衆の歓声は厳かな雰囲気が吹っ飛んでしまうくらいであった。

「皆……ありがとう……ありがとう!」

「うぉおおおおお!!! 劉備のあねさんんんん!!!」

 劉備がボクら皆に目配せすると、張飛がついに大声を上げて泣き出してしまった。男泣きのような剛胆な女泣きであった。関羽が礼を拝して裏に連れて行く。

 そんなこんなで、バタバタな戴冠式も宣言も、無事に終える事が出来た。


*


 桃酒の宴が始まった。初夏なので、青い葉桜の下、ボク特製レシピの桃の酒を振る舞う。

 ここは、付き人も遠くに付けただけの、我々だけの宴の場所。その離れた場所で、遠慮した魏延《ぎえん》がしっとりと飲んでいたりする。趙雲《ちょううん》は飲まないまま警護に当たっている。

 そんな中で、張飛の叫び声が広がる。

「えーっ! 司馬懿を魏に逃したのかよーっ! 大丈夫かーっ!?」

「ええ。彼女の才はボクの元で飼い殺すには惜しいと思ったのです。長安の戦いではボク一人では敵いませんでしたので、次に魏軍として攻めて来るときには一対一でと約束しました……。あっ、もちろん、司馬懿ちゃんをねっとりと束縛して愛して言葉責めにしてボクの子を産ませた後にですよ? 出産後は大変でしたが」

「そんな軽々しく言う事かよぉ……」

「鳳蓮《ほうれん》殿……それは恥辱《ちじょく》的であり、また冷酷な話では……」

「ニシシ……我が弟子の狂喜の瞳、ここまでのは久しぶりに見たわい……」

 ドン引きする張飛と関羽。しかし、龐統《ほうとう》はいつものように笑っている。

 そこで、諸葛亮がパンと手を叩いた。

「となると、鳳蓮さんは、今、お相手が居ない状況ですよね? 今度こそ我が側室として迎え入れてもいいでしょうか?」

「んがーっ! ダメぇーっ! ワシの子! いや、ワシの側室にするもんっ!」

「えーっ! ほうれんはピッチピチの僕の方がいいってぇ~! ねぇ? ほうれん?」

「諸葛亮先生だけじゃなく龐統師匠も馬謖《ばしょく》さんまでっ!? そんなの聞いてませんよっ!」

「そりゃあ、運命の相手が居るみたいな事を言って、結局逃したのはソナタではないかぁ~! ワシの子として、蜜月の奇策を語り合う飲み会を毎晩やろうな?」

「龐統さんっ! それ側室だろうと師弟だろうと関係ないじゃないのっ! 僕の方が! 鳳蓮の第二の子を産ませるのに性格一致よっ!」

「馬謖よ、性格一致だからなんだと言うのでしょう。では、碁で勝負というのは?」

「それはダメーっ!」

「あははははっ!!!」

 碁の勝負では勝ち目がない、大軍師の言葉にボクら軍師三人の声がこだました。大笑いする張飛とほかの皆。

「いいねぇいいねぇ。女同士、やっぱこのくらいハッチャケちゃーなっ!」

「なんだい張飛。"あのくらいの"仲の良さが羨ましいのかい?」

「い、いやぁ。あれほどとは……流石に言わねーわ! オレも妻がいるし」

 劉備に言われ赤髪をボサボサとかき回す張飛。流石に酔いとは別の紅さが頬にでている。

 考え直してみると、男装女子が妻とか言うの、すごい世界だなって思う。桃の誓いとは百合の暗喩だろうか……なんて、どうでもいいオタク事を考える。

 そこで、関羽がしみじみと言う。

「軍師殿たちの仲は、我ら義姉妹の仲とは、違ったモノなのでござろう」

「そうだな……」

 少し返事をした劉備が、諸葛亮の真似をするように手を打って、みんなの注目を集める。

「さて、宴もたけなわだから、きいておくれ。花は散っても、葉桜として囲まれた桃の実が結び始めている。我らの絆もまた、この青桃のように固く結ばれ、やがて天下太平、安寧の世という大きな果実を実らせようじゃないかみんな。では、再び、かんぱい!」

「かんぱーいっ!」

 みんなで言ったはずなのに、なんだかんだ張飛の声しか聞こえないくらいの大声であった。あはははと笑うボクら。

 ここは男装女子の三国志。武将は皆男装である。そんな世界で、ひとまずは、劉備将軍の元で漢室復興の宣言を立てる事が出来た。

 この先はどうなるのかな。この平和は一時的であり、魏と呉は健在である。安寧の世を築くまで、まだまだ時間がかかりそうだ。

 その前に……司馬懿ちゃんと策の一騎打ちをして、次こそ完封なきまでに叩きのめさなくては……!

 司馬懿ちゃんをオトそうとしたら男装百合ハーレムになっていた。それでも、ボクの心は一筋だ。

 ボクの戦いは、これからだ!


勢いで書き始めて6万文字弱。

まだまだ修正部分はありますがとりあえず投稿し終えました!


最終回にしてやっと私の癖の百合が出せた……。


三国志にわか知識ながら、最後まで楽しく書けました!


応援いただいた方々、ありがとうございました!

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