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【WEB版】迷い込んだ異世界で妖精(ブラウニー)と誤解されながらマイペースに生きていく  作者: 明太子聖人
第三章  砂漠のオアシス・空中都市サヘール編

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第167話 迎撃作戦準備中


 食料は戦略物資である。

 安全保障上不可欠な物資、それが食料だ。

 国を豊かにする上で重要なのは食料の確保であり、民が飢えることなく暮らすために農家の方たちを護らなければならないと言うのがアラバマ殿下の考えだった。

 もし他国から食料を輸入できなくなったら大変だからね。自然災害で農作物の不作によって備蓄が減れば、他国に輸出する余裕も無くなる。

 お金があっても買う食料がなければ意味がないということを、この国の富裕層は忘れているのだ。

 だからこそ食料の需給率を上げたい殿下の考えに俺は賛同したわけだ。

 しかしその計画を邪魔する邪知暴虐にして無知蒙昧な輩が現れた。

 これは宣戦布告と受け取って良いだろう。いや既に賽は投げられた。

 食べ物を粗末にした者は、食べ物で泣く羽目に陥らせてやらなければなるまい。


「竜騎士隊の現状を視察したいのか?」

「うん」


 無念にも荒らされた哀しい畑を後にして、俺たちは研究所へと戻った。

 そこでとある計画を持ち掛けるべく、腰を落ち着けたところである。


「飛竜を見に行くのではなくか?」

「うん」


 聞くところによると、竜騎士隊は修行の一環として候補生が食事の支度から先輩竜騎士の飛竜のお世話までしているのだそうだ。

 シエラ王女様率いる王女騎士隊は伝統的な下積みを経て正式な竜騎士となる。

 だから貴族階級の竜騎士候補生は、下積みの必要のない第一王子の方へ配属されることを希望するらしい。

 第一王子の束ねる貴族騎士連中は、身の回りの世話や飛竜の世話まで使用人任せなんだってさ。苦労して下積みをしたくないんだろうけど、自分の乗る飛竜の世話まで使用人に任せるってどんだけだよ。


 テイマーは召喚士と違って契約ではないので、その感応力によって従魔が決まるんだよね。『感応』ってのは、テイマーと従魔の相性が合致することを言う。

 召喚士とテイマーの何が違うのかというと、テイマーの従魔はお互い依存し合う関係であり、召喚士とその従魔は最初はドライな契約からの信頼関係の積み重ねって感じかな?

 身もふたもない言い方をすれば、従魔にとってテイマーは生涯を誓うパートナーであり、召喚士はビジネスパートナーである。

 まぁ、どちらも主人がダメダメだったら離婚や退職もあるってことだけどね。

 従魔にとって召喚士は上司なので強さと優しさと頼もしさが必要であるが、一方のテイマーと従魔は相性さえ合えば良いのだ。

 飛竜との感応の場は、テイマーと従魔との一種のお見合いのようなものと考えれば判りやすい。所謂一目惚れみたいな感じかな?

 ブランカも似たような感じだけど、あの子は特殊だから除外しておく。(そう言えばアマンダ姉さんに任せたことで随分と大人しくなったけど、一体どんな躾をされているんだろうか?)


 因みにアラバマ殿下はテイマーだったけど、カーバンクルと契約したことで召喚士へとジョブチェンジしている。滅多にないランクアップらしいけど、そりゃあれだけ多頭契約したらそうなるよね~。元々魔力も多い方だったそうだし。従魔が増えて新たな能力も生えてきている。以前に比べて出来ることが多くなったんだって。

 しかも頼れる上司であることは間違いないので、カーバンクルも殿下から離れる気はなさそうだ。(ただのフェネックも混じっているけど)

 心地の良い住処を提供されて美味しいご飯が食べられるし、無理な労働も強いられないとあれば、アラバマ殿下に従魔にして欲しいと集まるのも理解できる。

 寧ろもっと仕事が欲しいと訴えてくるそうだよ。農家のみなさんや職人さんと同じく、アラバマ殿下のために働きたい気持ちになっているようだ。


「それと飛竜の好みを知りたいとな?」

「うん」

「何でまた、飛竜の好み等と訳の判らぬことを知りたいのだ?」

「それはねー」


 シエラ王女様が愚痴っていたのを、興味がないなりに俺は覚えていた。

 孵化場での感応の儀式では、いつも第一王子側の候補生に負けるのだと悔しがっていたんだよね。

 実力も高く鍛え上げた候補生を揃えても、常に第一王子側のチャラくて軟弱な候補生が大半の孵化した飛竜を搔っ攫っていくそうだ。

 別に不正を働いている訳ではないので、文句しか言えないらしいけど。

 何故負けるのかその原因が判らなくて悔しさだけが募っているのだとか。

 その時は「ふ~ん」としか思ってなかったし、王族同士の内輪揉めに介入する気は毛頭なかった。

 だがしかし、第一王子派の連中がこちらに手出ししてきたのなら話は別だ。

 売られた喧嘩は買わない主義だけど、収穫間近の畑を荒らされたとあれば黙ってはいられない。


 そこで俺は考えた。

 感応の儀式って、一種のお見合いなわけで。

 相性が合う合わないってのもあるのだろうけれど、生まれたての赤ん坊である飛竜の大半が一目惚れをするってことは、飛竜も主人の外見や雰囲気を重要視しているってことだよね?

 という感じのことをディエゴに伝えてもらうと、アラバマ殿下はふむと頷いた。


「あ~確かに、シエラ側の候補生や竜騎士も粗野な者ばかりであったな。庶民出身であるから仕方がないのだろうが……」

「そう言えば、飛竜は美しい物が好みであると聞いたことがありますね」

「美しいというか、光る物が好きだったか? 言われてみれば、カシム側は常に煌びやかな衣装を身にまとっておるな……。なるほど、そういうことか」


 要するに外見の美しさに惑わされているということだろう。内面の美しさの方はまだ生まれたてなので理解できなくとも仕方がないのだろうけれど、初対面であればまずその見た目に興味を持つと思うのだ。

 容姿の美しさは好みがあるから除外するけど、見た目と言えば身形である。清潔感で人の印象って随分と変わるからね。

 庶民出身のシエラ王女様側の候補生が、第一王子派の貴族出身候補生に負ける原因は、絶対に見た目であろうと言うのが俺の結論だった。


「シエラとカシムの違いはそこにあったか……。そう言えば、シエラの部隊は妙に個性のある飛竜ばかりであるな」


 纏っている衣装ではなく、肉体の美しさに惚れている可能性があるよね。

 だとすれば、身なりを整えるだけで劇的に変化するってことでもある。

 やっぱ第一印象で結婚相手(主人)を選ぶなら、従魔だってお金を持ってそうな、沢山ご飯を食べさせてくれそうな方が良いと思うんだ。

 そしておそらくだけど、飛竜は本能的にそれを嗅ぎ分けているに違いなかった。


「見た目を整えるだけで、飛竜は主人に選ぶということか……」

「うん」

「ということは、サボテンの魔物で作った美容品が役に立ちそうですね」

「うむ。テスターとして利用できるかもしれんな」

「傷薬としても使用できますし、男性にも抵抗なく使って頂けるかと」


 アントネスト産の美容品もあるけど、今回はアラバマ殿下肝入りの商品のお披露目として利用させてもらおうという話になった。

 それに美を追求する商品より、荒れた肌や怪我の多い竜騎士が使ってこそ、その効果は抜群に現れるだろう。

 竜騎士は男性が多いので、抵抗なく使える商品の方が良い。女性には美白効果による美容品として使えるし、本来の薬効成分によって傷も治るし。


「コロポックル印のバスソルトも試してもらいましょうか?」

「おう、それもあったな。他にも試せる物は試させてもらうとするか」

「良い宣伝にもなりますからね」

「諸外国向けの商品ではあるが、国内で試すのも有りだな」

「風呂は贅沢ですから、富裕層に高値で売りましょう」

「そうだな。そうしよう」


 フフフフ、ハハハハとほくそ笑む二人。

 この試供品テスターの話しをしているのは、アラバマ殿下とムスタファである。

 ムスタファってば違和感なく人間に擬態していて、元がフェネック姿のカーバンクルとは思えないぐらい優秀なんですけど。

 流れるようにアラバマ殿下に提案している姿は、人間の臣下の域を超えている気がする。最近は忙しいアラバマ殿下の代わりに、部下のカーバンクル部隊を使って情報収集だけでなく事務仕事も手伝ってるんだよな。


 そしてさらっと『コロポックル印のバスソルト』とかいう商品名になっているのだが、俺はそんな許可を出した覚えはない。

 バスソルトの作り方(成分)は教えたけれど、元々の塩を作っているのはカーバンクルなんだから、カーバンクル印にすればいいじゃん! サヘールの岩塩にミネラル成分や鉄分を含ませられるのは、カーバンクルの能力があってこそなのだから!

 等という抗議をしたら、コロポックルがフェネックを抱っこしているラベルを渡された。


「どうだ。よく出来ているであろう?」

「……いつのまに」

「商業ギルドに申告したら、早速とばかりに作ってくれたぞ」

「……」


 相変わらず影絵のようなお洒落なデザインですね。誰がデザインしているんだか、毎回シンプルだけど判りやすい絵柄なんだよな……。

 サボテンの魔物を使った商品はサボテンマークが付いてるし、チョコレート類の商品はカカオのマークが付いている。

 商業ギルドの誰かなのか、デザイナーに頼んでいるのかよく判んないけど、このラベルデザインをしている人も謎だよね。直ぐに仕上げてくるし。


「既に商業ギルドと店舗契約の運びとなっておる。楽しみにしておれ」

「……なんでにゅうせいひんまで?」


 バホメールに乗っているコロポックルのデザインまであるんだが?


「姉妹品とやらで売ることにした」

「なんで?」

「その方が売れるそうだ。なので全力で乗っかることにした」

「……」

「キャリュフ関連の商品が飛ぶように売れて、品薄状態になっとるらしいな?」

「ライセンス料は支払いますので、ご了承お願い致します」

「……」


 というか、既に決定事項なのかそうなのか。他の商品も商業ギルドを介して、新作のコロポックル印の関連商品として売ることになっているのだとか。

 せめてアラバマブランドにした方が良いんじゃないかと反論すれば「貴様がお勧めした商品なのだから責任を持て」と言われてしまった。

 ムスタファからは「コロポックルブランドは信頼と実績があると聞いておりますので、共同開発者でもありますし商品名として使わせて頂きたい!」と妙な圧のある説得をされてしまったのである。

 どこでそんな話を聞いて来た。


「王女宮では、コロポックルブランドに魅了された者が大勢いらっしゃいますよ」

「……?」

「アマンダとチェリッシュと言ったか。その者らが広めていたそうだ」

「へぇ……」

「アマル殿下の王子宮でも、密かに広まっているらしいぞ。ギガンとテオが、リオンの作った菓子やジャーキーなどの食べ物類を振る舞っていると言っていた」

「商品として存在しているのなら、正式に購入したいと言っておるそうだ」

「……そうなんだ」


 お近づきのしるしに、細やかな粗品として用意していた物が、どうも訳の分からないことになって広まっているようだ。

 評判が良いならそれはそれで良いんだけどね……。


「貴様も中々やるのう。知らぬ内に味方を増やしおる。ただの害獣であったボアの肉も、熟成をすればあのように美味くなるのだからな!」

「女性は美容で心を掴み、男性は食べ物で胃袋を掴むとは恐れ入りました」

「……」


 そんなつもりは微塵もないのだけれど、結果的にそうなったらしい。

 安心と信頼のブランドなのか、姉妹品として新たなコロポックル印の商品が次々と広められている現状である。俺の知らないところで!

 商業ギルドもアラバマカフェの開店を手ぐすね引いて待っているし、店舗経営する側のアラバマ殿下も面白がっている節があった。

 ナベリウス問題が解決したら、他国にも店舗を出店するとか言ってるし。偽物が出回る前に、ちゃんとした店舗を構えた方が良いんだって。

 俺は全く何もしてないんですけどね!

 全て丸投げしている状態だってのに!

 気付いたらそんな事態になってるらしいよ!


 こうして着々とコロポックル印の商品が増えているのだが、不労所得万歳と喜んで良いのか悪いのか判らなくなっている。

 でもライセンス料は貰わないし、売り上げの利益はアラバマ殿下の農業政策の為の運営資金にして下さい。(と言ったけど結局却下されました)

 お互い懐具合が温まる予定だから、別に不満はないんだけどねー。


「取りあえず、シエラにはこれらのことを伝えよう。孵化場での感応の儀式で、大半の飛竜をシエラ側の候補生へ宛がえるとあれば、あやつも貴様に感謝しまくるに違いないぞ」

「やはり衣装の方もある程度煌びやかにした方が良いでしょうね」

「そうだな。庶民故、用意できぬとあればこちらで準備させてもよかろう」

「そこはシエラ殿下に出資させれば良いのでは?」

「ふむ。魔晶石で散々儲けておるしな。衣装代はシエラに出させよう。しかしあの女にデザインは任せぬようにな。センスの欠片も持ち合わせておらん。アマルに選ばせた方が良かろう」

「では、そのようにお伝えしましょう」


 気が付けば飛竜の赤ちゃん総取り作戦は、アラバマ殿下とムスタファによって着々と進むこととなった。

 しかしこれで俺は畑を荒らされた恨みを半分解消できるし、アラバマ殿下はシエラ王女様に貸しを作れる。

 

 まだ恨みを完全に晴らすことはできないけれど、孵化場での感応の儀式を前哨戦とすることにした。

 だが俺たちの迎撃作戦はまだまだこれからである。

 俺の一番嫌がることをしたのだから、徹底的にそのねじ曲がった根性とプライドをへし折ってやろうではないか! フハハハハハ!



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― 新着の感想 ―
飛竜総取りするのにまだ半分のやり返しなんだ(^_^;) 普段温厚な人を怒らせてはイケマセンの見本ですね(^^)v 第1王子は手を出してはいけないところにちょっかいかけてしまいましたね(自業自得)
コロポックルラベルのイラストみてみたいのですが… そう思っているのは私だけでないはず…
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