第148話 この世界の都市伝説
ダンジョンに出没する魔物と言えば、代表的なものとしてゴブリンとか何かそこら辺のザコから始まるような知識しかない俺である。
しかしそのザコですら俺にとっては脅威的な存在なのだが、サヘールのダンジョンに出没する魔物は主にゴーレムだそうだ。
寧ろゴーレムオンリーと言っても過言ではなく、倒せば何かしらの鉱物をドロップするらしい。
まぁ、殆どがただの石コロやくず鉄だったりと、ハズレが多いんだって。
相変わらずこの世界のダンジョンはふざけたドロップ品とドロップ率だね。
確かゴーレムって、額にemeth(真理)と書かれていて、eを消すとmeth(死)になって壊れるんだっけ?
『そのような仕組みではありませんが、動力源である魔晶石を破壊すれば倒せるようです』
魔晶石が動力源なんだ。
それを取れば魔晶石も手に入るのだろうか?
『魔晶石を破壊しなければ再生しますよ』
魔晶石取り放題じゃなかった。
壊しちゃったら意味がないなこれは。魔晶石は地道に採掘場で掘れってことかね。
『しかもゴーレムにも種類があり、泥や岩石や鉱物、骨や腐肉などで出来ています。人の形であったり、動物の姿をしている物など様々です』
あ~もしかして、スケルトンタイプやゾンビタイプもあるってことか。イメージ的には巨〇兵みたいなのばかりだと思っていたけど違うようだ。
ゴーレムにも種類が沢山あって、姿形もバラエティに富んでるんだねぇ……。物凄く厄介そうな魔物だな。
『正しくは魔物ではなく、魔晶石によって作り出された人形ですね。ダンジョンでしかお目にかかれない機械人形と言ったところでしょうか』
大まかな説明をSiryiに聞いた後。詳しくディエゴに聞いたところによれば、ゴーレムの動力源である魔晶石をどうにかして取り外して仕組みを解明しようとしている連中がいるらしい。だが魔晶石自体を破壊しなければ何度も再生してしまうので、今のところは人工的に作り出せていないとのこと。
うん。魔塔のあたおか連中がその研究を必死にしているってことだね。
サヘールのダンジョンはゴーレムオンリーだけど、他の遺跡ダンジョンでもそれなりに出没するそうだ。
まぁ、魔塔のあたおか連中とは違う意味で、ロボのようなゴーレムが作れたらそれはそれで男の子のロマンだけどねぇ。
いいよね、ロボ。俺もそういうのが欲しいなって思ってた時期があったし。
戦隊ヒーローみたいに、ロボに乗って戦うのは子供の夢である。自分で作ろうとまでは思わなかったけど。
そんなことはともかくとして。
他にもダンジョンに棲み着いた蝙蝠や鼠などの魔物もいる。
コイツらはゴーレムにとっては小さすぎて存在していないものとして扱われているため、棲み着いた魔物らしい。
だから倒しても何もドロップしない魔物である。素材にもならないので、相手をするだけ地味に体力を削っていくので、冒険者にとっては厄介なんだそうだ。
「ゴーレムを斃そうとすると襲ってくるそうだ」
「うわぁ」
物凄くウザイ。
だからその小さくて厄介な魔物を相手にしながら、ゴーレムを斃すという離れ業をしなきゃならない。大きいのも厄介だけど、小さいのが大量に襲ってくるとなると鬱陶しいことこの上ないよね。
ダンジョン内にはゴーレムの出没しない安全地帯のような場所があるので、そこでキャンプをしてもその小さい魔物が時折襲ってくるから、ゆっくり休んでもいられないそうだ。
流石のディエゴでも、ゴーレムを斃しながら小さい魔物まで相手にするとなると、見張り役のシルバやノワルが必要になる。
かと言って俺が一緒にくっ付いて行っても、足手纏いになるに違いない。どうしたもんかな。
サヘールのダンジョンの情報を収集するべく、翌日俺たちはとりあえずサヘールの冒険者ギルドに来ていた。
一応到着報告もしなきゃいけないのもあって、手続きを済ませた後に依頼掲示板を眺めたり、受付のおじさんにダンジョンの話を聞いたりしているところである。
なんていうか、サヘールの冒険者ギルドって、モンスターをハントする某ゲームっぽい雰囲気なんだよね。
酒場と併設しているのもあって、昼間から飲んだくれている冒険者もいるし。蛮族っぽい見た目の冒険者が多い気がする。いやまぁ、その地域独特の服装とか装備もあるんだろうけど。これぞ冒険者ギルドと言った雰囲気だった。
「ヒヒイロカネをドロップするゴーレムは、十階層からになるそうだが……」
「どれぐらいかかりそう?」
「最速で突き抜ければ、三日だそうだ」
「いきかえりで、いっしゅうかんはかかるってこと?」
「そうだな……」
シルバやノワルに運んでもらって突っ走っても三日もかかるのか。
ドロップ率のUPするアイテムを使って一日中ゴーレムを斃しまくって、戻ってくるのにまた三日かけるとすると一週間はかかる計算だ。
食事の準備もしなきゃいけないし、安全を確保するための装備も用意しなければなるまい。
流石にダンジョン内で料理をする余裕もなさそうだしね。安全地帯でも小さい魔物が襲ってくるって話だし。
「だがそれよりも、少し拙いことになっている」
「まずいこと?」
「三日前からダンジョンにカーバンクルが出没しているそうだ」
「?」
なんじゃそれは? どこかで聞いたことのある名称だけど、ゲームのキャラにそんな名前の召喚獣が居たような気がしないでもない。
『マスターの世界では幻獣の一種ですね。カーバンクルは財宝の守護者であり、宝石などの鉱石類を蓄えているそうです』
あ、なんか思い出した。
確か額に赤い石のある幻獣で、その赤い石を手に入れると富と名声が手に入るとか言われているんだっけ? この世界はどうなのか知らんけど。
「カーバンクルが出没していることで、深い階層に出没するゴーレムが、浅い階層に出没し始めている」
「ってことは」
「極めて最悪の事態だが、チャンスでもある」
「……たしかに」
時間をかけて十階層まで行く必要はなく、浅い階層に出没するゴーレムを斃せば、ヒヒイロカネやミスリルが手に入る可能性が出てきたということか。
日帰りは無理としても、一週間もダンジョンに潜る必要はなくなる。
「今なら他の冒険者も、カーバンクルを避けるためにダンジョンアタックを控えているらしいぞ」
「あ~」
昼間からギルド内の酒場で飲んだくれている冒険者が多かったのって、ダンジョンに行けないからここで待機しているってことね。はいはい。
せっかく深く潜らなくて良くなってるんだから、確り働けと言いたいけど。
サヘールの気風なのか、無理はしない主義の冒険者が多そうだ。そこは俺と気が合いそうだけど。
「ただまぁ、カーバンクルに遭遇すれば、どうなるか判らんといったところだ」
「カーバンクルってつよいの?」
「ゴーレムを操る能力があるからな。一説によると、カーバンクルがゴーレムを作り出したとされている。だから元妖精がボガードと化したとも言われているんだ」
「そうなんだ……」
「一般的には鉱山やダンジョンに生息している、珍しい魔物の一種だがな」
「へぇ」
「だが捕まえた者は居ない」
「そうなの?」
「姿形が一定していないのもあるんだ」
共通しているのは、額に赤い宝石が付いているってことだけ。そしてゴーレムを召喚(作成?)して人に襲わせている間に逃げちゃうんだって。
妖精の一種ではないかと言われているのも、姿が曖昧なのもあるからだろう。
それに人間には作れないダンジョンにのみ出没するゴーレムを召喚したりするのもあって、元妖精説が浮上したのだそうだ。この世界での都市伝説みたいなものだね。
「捕まえたところで使役出来ない魔物だからな。ここだけじゃなく、鉱石類のドロップするダンジョンや鉱山に稀に出没するが、生態もよく判らん存在という認識だ」
俺の世界では幻獣なのか召喚獣なのか判らんけれど(そもそも実在していたのかも怪しい)、こちらの世界でも魔物でありボガードと化した元妖精でもあるのか判らん存在ってことだね。
何れにしてもカーバンクルは、無類の鉱石類好きということしか判明してないんだってさ。
う~ん。俺の持ってるパワーストーンで、罠に引っ掛けられないかな?
カーバンクルさえどうにかなれば、ゴーレムはディエゴが倒してくれるし。小さな魔物はシルバやノワルが排除してくれるだろう。
わんこにボールを投げるように、カーバンクルにパワーストーンを放り投げて追いかけさせている間に、ミスリルやヒヒイロカネをドロップするゴーレムを倒す作戦とかダメかな?
流石にそこまでアホではなかろうが。
いやでも、ダメもとでやってみてもいいような。ワンチャンありそうな気がしないでもないんだよな~。
どうでしょうかお兄ちゃん。
カーバンクルがアホの子の可能性に賭けてみませんかね?




