終わりが良ければ
今日も同期の飲み会だ。
3か月前に開催したばかりだから、今日は少しイレギュラーだけど、陸が本社に帰ってきたお祝いだ。
「本社復帰おめでとう」
「システム稼働まで、お疲れ様でした」
主賓は陸。といっても割り勘だけどね。
「今のところ、トラブルは発生していないし。優秀だろー」
陸が自慢するが、優秀なのは他のメンバーだろとの突っ込みに、素直に頷いている。
「仕事ができる人ばかりで、勉強になったよ」
「あちらの会社から、引き抜きの話があったんだろ?」
と佐藤がばらす。
白川さんが中心になって、陸を含めた何人かを、システム運用担当として出向先に移籍させようとする動きがあったらしい。
だけど陸は、これ以上彼女と離れていられないといって断ってきたらしい。
本人は言わないけれど、これは佐藤の友人経由の話。
倉木以外のメンバーの何人かは、給料と待遇に引かれて移籍したらしい。
トラブル発生時の対応は、そちらにお任せ。である。
「よかったね、芽唯。変な女に横取りされなくって」
美那が嬉しそうに笑っている。
「変な女って?」
陸がきょとんとした顔をする。
佐藤が、小さな声で
「白川さん」
と呟く。
「白川さん?ああ、そう言えば、相談したいことがあるから、僕達の家に来たって言ってたけど、忘れてた。何だったんだろうね。そもそも、それほど接触がない人だったのに」
いきなり抱きついてきたのは、もっとわからない。
芽唯がいきなりドアを開けたので、びっくりしたとか?
他の皆が、怪訝な物を見る目をした。
私は、『俺達の家』に反応してちょっと頬が熱くなったのを誤魔化そうとわたわたしていて、それどころではない。
「佐藤友人の話では、倉木にいろいろと誘いをかけてたってじゃん」
と華が追求する。
「誘いと言っても、飲みに行こうとか、遊びに行こうとかだよ。出向組の管理が仕事だから、メンタルヘルスに気を使ってたんだよ。ときどき、みんなで飲みには行ったけど、休みの日には、芽唯と会うから、遊びには付き合わなかったし。その他には、何も交流がなかったし」
と陸。
「ランチのお誘いとかは?」
と佐藤。
「皆で食べに行くことはあったけど。それ以外は、芽唯とお弁当を食べてたから」
「何それ?」
「携帯で話しながら、一緒にお弁当を食べてたんだよね。ね!」
陸が嬉しそうに言う。「ね!」じゃない。
「へぇー。それは初耳だ。そう言えば、しょっちゅう、仕事だって言って、携帯見ながら独りで昼食取ってたよねー」
華が悪い顔で笑った。
「そ、そんなに、しょっちゅうでは、なかったと。。。」
言い訳をしたけれど、誰も聞いてくれない。
陸は、佐藤からさらに、
「本当に何も言われてないのか」
とか突っ込まれていたけれど、仕事は褒めてもらえたと、明後日の返事をしている。
「興味がない人間には塩対応」
美那が呟いて、皆が笑いだした。
陸は1人だけ、わけがわからないって顔をしていた。
でも、それでもいい。大好き。
これで完了です。
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