兵器強襲
「クッ――」
「ヒィィィィィィ!?」
全身を引き裂くような衝撃と共に、耳が張り裂けんばかりの爆音が襲う。
辺り一帯の木々が焼け落ち、周辺の地面は私を残して深いクレーターを作り上げていた。
障壁で防いだからよかったものの、まともに食らったら危なかったわ。
奇声をあげたカオルは――――よかった。一応は生きてるみたい。
「そこにいるのは誰!? 降りてきなさい!」
上空には白いサイボーグのような格好をした正体不明の人形が見下ろしていて、私の言葉に応じたのかゆっくりと地上に降りてきた。
やがて私の視線まで降下すると、浮遊したまま問いかけてくる。
「貴女が……強き生命体?」
少女の機械音声とでも言えばいいのか、一応は女性? であるらしい。
というか、何を聞きたいのか分からない。
ま、コイツがバケモノじみた強さだって事だけは理解できる。
そらから一言物申したい!
「こっちを殺そうとしといて第一声がそれなわけ!? 質問するくらいなら攻撃してくるなっつ~の! だいたいね、アンタはどこのどいつで何が目的なわけ!?」
ふぅ……思わず声を声を張り上げちゃったじゃない。
でも私は悪くないわよ? 悪いのは目の前のサイボーグ少女よ。
「……質問したのはこちらが先。質問に質問で返す貴女は非常識であると認識した」
イラッ!
「どっちが非常識よどっちが! あんまりふざけた事言ってると――」
「今だ!」
ドン!
「ちょ、カオル!?」
不意を突いたカオルに突き飛ばされた!
カオルはそのままクレーターへと落下していき、膝に隠していたらしい転移石を口でかじり出す。
「お前たちだけで勝手にやってろ。こんなところで死ぬつもりはな――」
ドズッ!
「カハッ!?」
「!?」
あのサイボーグ少女、転移しようとしたカオルに腕を突き刺した。
腕は心臓付近を貫通していて、一目で助かる見込みはないと分かる。
「反応微弱。強き生命体とは言えない」
ドサッ!
興味が無さそうにカオルを投げ捨て、改めて私を見上げてきた。
まるで検査でもしてるかのような視線に感じる。
「スキャン完了。ワールドネーム・アイリ。強き生命体であると確認。これより捕獲に移る」
「捕獲って――」
バスッ!
「――どういうつもり?」
掴みかかってきたコイツの顔に薙ぎ払いを打ち込む。
ダメージが通ったのか透かさず大きく飛び退き、顔の表面を上へとスライドさせると、中にいたのは……
シュイン!
「……やっぱり女。しかも私と大して変わらなそうじゃない」
おとなしそうな可愛らしい女の子が、このサイボーグの正体らしい。
更に鑑定スキルをあててみると……
名前:GA 性別:女
年齢:1歳未満 種族:ギアヒューマン
備考:謎の兵器から分離した存在。
物理能力が高く、魔物で言うとSランクに匹敵する。
GA? しかも兵器ですって!?
衰退している世界でSランクとか、高位の錬金術師でも不可能よ。
それこそ別世界とかじゃないと……
「……思ったより危険と判断。場合によっては死体でも構わないものとする」
「はぁ? ふざけるなアンポンタン! 何を企んでるか知らないけれど、アンタみたいなアホに殺されるほど私は弱くないわ!」
「アホと言う方がアホだと言うデータがあり。つまり、貴女はアホ」
イライラッ!
「さっきからムカつくヤツね。その妙なスーツごとブッ壊してやる――フレイムキャノン!」
ドォン!
シュバッ!
「事前のモーションにより魔法を放ってくることは予測できました」
「チッ!」
言葉通りに軽々と飛び上がり、炎の砲弾だけがクレーターにめり込む。
Sランクなだけあって、一筋縄じゃいかないわ。
「今度はこちらから行きます」
シュイーーーン!
「え? その腕……」
腕をこちらに突き出すと、拳を引っこめた状態で腕の中に光が集まる。
これもうサイボーグで間違いないんじゃないだろうか。
「のんきに構えてると後悔しますと、忠告させていただきます」
「はい、忠告ありが――――とう!」
ドドシューーーーーーッ!
ぶっといレーザーが放たれるのと同時に、威力マシマシにしたフレイムキャノンを撃ち込んでやった。
ジジ――ジジジジジ――バシュゥゥゥ……
ぶつかった二つは互いに譲らず、数秒後には同時に消し飛んだ。
「ほう、これに対抗しますか」
「残念だったわね鉄屑。さっきも言った通り、アンタが思ってるほど私は弱くないのよ」
「まだ分離独立してから一年も経っていない新品です。ゆえに鉄屑というフレーズは当てはまりません。それに貴女の存在は強き者だと認識しており、弱いというのも違います。間違った認識が多い貴女はやはりアホ」
イライライラッ!
ああ言えばこう言う! なんつ~生意気なヤツなんだろ。
「百歩譲ってアホでもいいわ。アンタの目的を言いなさい」
「いいでしょう。私の目的は、強き生命体を糧に母体を復活させる事です」
母体……つまり、何らかの兵器から独立したコイツの本体にあたる存在?
「復活の素となるエネルギー源には、ステータスの高い生命体が必要とされています。どこかに古代竜でもいないかと探している最中に強き鼓動を感じとり、たどり着いたのがここでした」
さすがにエンシェントドラゴン相手なら返り討ちでしょうね。
でも代わりに私を嗅ぎ付けたと。
「糧が欲しいならカオルを持ってけば?」
「……そこで死んでいる雑魚に用はありません。そのような雑魚を糧にしたところで何の足しにもなりませんので」
死んでいるって、殺したのはアンタよ……。
「糧に相応しいのはアホ――貴女です」
「ああ?」
「調べたところ、アホのステータスは並の生命体からは掛け離れている。これはらば母体の糧としては申し分ないと判断し、アホを捕獲することにしたのです。理解できましたか――」
「――アホ」
プチン!
「アンタねぇ、さっきから聞いてりゃアホアホアホアホと。私はアホの○田じゃないのよ! いい加減にしろ!」
「それは理解に苦しみます。百歩譲ってアホと認めたのは貴女の方です。よって最後までアホと呼ばれるべきだと言わせていただきます」
あ"~~~メンドクさ!
「もういい、スクラップにしてやるから覚悟しなさい――グラビティスポット!」
「ハグゥ!?」
GAが立っている辺りに超重力による負荷をかけてやった。
重力に耐えられず少しずつ地面にめり込んでいくと、やがて地面も耐えきれなくなり……
ズ――――ズズズズスズ!
「重力に異常発生! 足場の確保が困難!」
蟻地獄に引きずり込まれたかのように地中へと消えていく。
「そのままマントルに消えてしまいなさい!」
ふぅ……どうなる事かと思ったけれど、案外呆気なく終わったわね。
開いた穴は埋めとくとして、カオルのダンジョンを探さなきゃ――
ゴゴゴゴゴ……
「な……何、この震動?」
地震……いや違う、地鳴りのようなこれはまさか!
ズバァァァッ!
「ハハ……マジで?」
信じられない事に、出来立てのクレーターを突き破って堂々と舞い戻ってきた。
さすがに私1人じゃ危ない。応援を呼ぶしかないわ。
『アンジェラ聴こえる? アンジェラ?』
応答がない? まさかゾンビにやられるなんてあり得ないし、何か異常事態でも起こったっていうの!?
「今、念力を使用しましたね?」
「正確には念話だけど、それが何?」
「辺り一帯の念力を遮断しました。今のアホでは眷族は呼べません」
「なっ!?」
本格的にマズイ。
捨て身で襲いかかって倒せるかってくらいに厳しいわ。
「ではそろそろ終わりにしましょう。先ほどは少々油断しすぎましたので、この一撃で仕留めます」
ジジジジジ……
上空から両手を向けたところに光が集中する。
この感じ……最初に食らったやつより遥かにデカイ!?
「覚悟は宜しいですか? では参りま――」
「させるか!」
ドガッ!
……え? いつの間にか金髪仮面少女が現れていて、GAを遠くへ蹴り飛ばした?
「アンタいつの間に……」
「細かい事は後よ。今は私に合わせなさい」
ちょっと癪だけど、今はコイツにすがるしかない。
「分かった。どうすればいい?」
「奴が動きを止めたところで最大級の火魔法をお見舞いしてやるのよ。オーバーヒートすれば戦えないから」
なるほど。それなら勝てるかもしれない。
「不意打ちとは卑怯ですね。貴女もアホですか?」
「……何言ってんのコイツ?」
「私に聞かないでよ。単にポンコツなだけでしょ」
どうやら強い生命体=アホという認識を持ったらしい。
戦闘は強くても学習能力は今一のようね。
「それより作戦実行よ」
「OK!」
互いに頷き左右に展開すると、狙いが定まらないのかGAは交互に視線を移す。
今ならイケる!
「「イグニスノヴァ!」」
ドッッッゴォォォォォォ!
「機体損傷、機体損傷。重度の熱源により損傷広大中」
アッッッツ! こっちまで凄まじい熱が伝わってくるほどの威力よ。
さすがの兵器も耐えられなかったらしい。
「ガガ……グ……ク……き、機体が……オーバーヒート。活動限界の到達を確認……き、緊急離脱します」
あちこちを溶かした状態で、GAはどこかへ飛んで行った。
ひとまずは安心かな?
「ありがと。また助けられたわね」
「いいわよ。今回は私のミスでもあるし」
……ミス? ナイスフォローじゃなく?
「実を言うとね、そこで死んでるカオルに力を与えたのは私なのよ」
「……はいぃぃぃ!?」
「テコ入れよ。知ってるでしょ? この世界が衰退してるって話。ダンマス全体が力を持つようになれば少しは改善されるかと思ったんだけどね、そう簡単にはいかなかったみたい」
とんでもない事をサラッと言うわね?
やっぱりコイツも神なのかもしれない。
「だから神だって言ったじゃない。信じられないのも仕方ないけど」
おっといけない。そういえば思考を読めるんだったわ。
「とにかく、妙なヤツに目を付けられたようだし、今後は注意しなさい。じゃあね」
シュン!
お約束通り、最後はどこかへと転移した。
『主よ、こっちは片付いたぞ』
『全部始末しやしたんで、安心してくだせぇ』
『ありがと。こっちも終わったから、後で合流しましょ』
ったく、クリストファー公爵の様子を見にきただけなのに、とんだ目にあったわ……。




