見せましょう、ダンマスの戦いを!
「タァッ!」
ズバズバッ!
十字架に掛けられてた少年を解放すると、人目も憚らずにミラクルと抱き合う。
「もう聖徳さん、心配したんだからね!?」
「すまねぇミラクル! お前を助けられなかった俺が助けを求めるなんてできなくて……」
「そんな事気にしないもん! あたしにとっては大切な人なんだから」
「あ、ああ……その……」
更に強く抱き合う二人――って、ちょっとちょっと、見てる側が恥ずかしくなるじゃない。
「はいはい、喜ぶのは後にして。ここはまだ敵陣だって事を忘れちゃダメよ」
「「あっ!」」
頬を赤らめて離れた二人――って、私もいつまで気にしてるやら……。
「詳しい説明は後でするわ。それまで上空に避難してて」
「上空に――って、どうやってだ?」
「あたしたちはアイリちゃんみたいに飛べないよ?」
「大丈夫よ。彼女の背中に乗ってればね」
そう言って見上げると、人化を解いたセリーヌが降りてきたところだった。
「も~ぅ、アイリったら速すぎよ」
「文句言わない。これでもギリギリのタイミングだったんだから。それよりこの二人を乗せて避難しててちょうだい。元凶を片付けてくるから」
「オッケー」
二人をセリーヌに任せると、護衛を引き連れた身形の良い男へと向き直る。
「アンタね? 聖徳のダンジョンを攻略したのは」
「……その通りだが、貴様は何者だ? 先ほどの太刀筋といい只者ではないと分かる。いったい誰の回し者だ?」
「……は?」
「この期に及んでとぼけるつもりか? 処刑直前に現れたかと思えば、大胆にも私に挑もうとしているのだ。何者かが手を回していると考えるのが当然であろう」
どうやら背後に誰かがいると勘違いしているらしい。
鑑定スキルによると元はボルディール王国の元帥と出て、しかも権力争の真っ最中と。
これはアレね。どっかの権力者を支持してでも内乱を収めなきゃ、魔女の森を脅かす輩が出続けるわね。
「まぁいい。喋らないのなら吐かせるまでだ。――やれ!」
「「「ハッ!」」」
雑魚兵が正面から斬りかかってくる。舐められたものね。
「雑魚はお呼びじゃないわ――ファイヤーストーム!」
「「「ぐわぁぁぁ!」」」
10人程度をまとめて焼き尽くしてやった。
ここでようやく民衆たちに危機感が芽生え、我先にと広場から逃げ出していく。
「チッ、魔法まで使いこなすとはな」
「じゃあ降参する?」
「フッ、バカめ。この私に敗北はない。――魔術隊よ、かかれ!」
ギラードの背後に控えていた魔法士連中が詠唱を始める。
詠唱が終わるまで持つと思われてるところが腹立たしい。
シュシュシュシューーーン!
「なぁっ!? ウ、ウルフの群だと!?」
100体以上のグレーウルフを召喚してやった。
「そりゃダンジョンマスターだもの、魔物の召喚なら造作もないわ」
「バカな! ダンジョン外で魔物を召喚できるはずが――」
「――ないわけじゃないのよ。私ならね」
スマホという最強アイテムがある限り、どこでも召喚が可能よ。
「精々ウルフと戯れてなさい。Eランクだけど、舐めてかかると死ぬわよ?」
「クッ……全隊、グレーウルフの撃破に専念せよ!」
さて、連中がウルフと戦ってる間に城内にあるダンジョンコアを確保しよう。
「魔力反応は――」
神経を集中させて魔力の流れを読み取る。
ダンジョンコアは魔力を放出し続けるという特徴があるから、魔力が流れてくる上流を目指せばいいのよ。
「――見つけた!」
城の地下に魔力の塊を発見したので、城内に突入して地下を目指す。
「けど階段が見つからない。だったら!」
ドゴォン!
「壊すまで――ってね」
シュタ!
「な、何者だ貴様!?」
「コイツが穴を空けやがったんだな!?」
「侵入者だ、侵入者がいるぞ!」
床に大穴を空けて地下へと飛び降りると、そこにいた衛兵に囲まれてしまう。
あ、ゴメン。足元で一人死んでる……。
「ちょーっとばかし失礼するわね――っと!」
ザザザシュ!
「「「ギャッ!」」」
クルリと回転しながら斬り捨てると、魔力の反応が強い方へと走る。
あんの野郎、ダンジョンコアを地下牢に置くとか、私たちダンマスをとことん下に見てるわね。
というか、投獄されてる囚人たちが声援を送ってくるんだけど、アンタらを助けに来たわけじゃないつーの。
「いたぞ、侵入者――」
「邪魔!」
「ガフッ……」
「おとなしく――」
「だから邪魔!」
「ゲハッ!」
番兵を蹴散らしていくと、突き当たりの独房にて赤く輝くダンジョンコアを発見!
「聖徳のダンジョンコアを確保っと」
ドガッ!
天井を突き抜けて地上へ戻ると、多数の犠牲を出しながらも100体いたグレーウルフは全滅していた。
多数といっても100人程度だし、ここの城塞なら微々たる犠牲でしょうけれど。
「戻ってきたかダンマスよ。貴様の策が尽きた今、私の勝利は確実のものとなった。諦めて許しを乞うがいい」
「冗談。アンタに許してもらう気なんて、これっぽっちもないわ」
「つまり、命尽きるまで戦うと?」
「そうね。もっとも――」
シュシュシュシューーーン!
「――尽きるのはアンタの方だけどね」
追加でグレーウルフを召喚してやった。
DPが有り余っている私なら、億を超えても問題ない。
「また召喚しただと!?」
「マ、マズイです、ギラード閣下。今度のグレーウルフは先ほどの倍はいます!」
「クッ、直ちに掃討せよ!」
まだやる気みたい。
ならこっちも敬意を表して……
「ナーブプラス」
バスッ!
「ぐっ! 貴様ぁ、私に何をした!?」
「面白いことよ。ボルディールの国王も味わった、痛みが10倍なる魔法をプレゼントしたから」
「何だと!?」
「ほら、よそ見してると危ないわよ?」
ガブッ!
「うぐおぁ! う、腕がぁぁぁぁぁぁ!」
さっそくグレーウルフに噛みつかれてやんの。
「散れ――下等生物が! 始皇帝である私に気安く触れるな!」
ふ~ん? 戦場に立つだけあって、なかなかしぶといじゃない。
でも召喚したのはウルフだけじゃないのよね~。
シュシュ――――ザクザクッ!
「ぐがぁぁぁっ! こ、今度はなんだ!?」
「城塞に召喚したコボルトたちよ。城内ではゴブリンが残党刈りをやってるから、落ちるのも時間の問題ね」
城の上には弓を手にしたコボルトたちがズラリと並んでいて、城内のあちこちから人の悲鳴が聴こえてくる。
外からの守りは頑丈だけど、中に入られたら脆いわよね。
「お、おのれぇ……我が城塞都市を乗っ取るつもりか!?」
「乗っ取る? そんな面倒な事しないわよ。私はただ、自分たちにとって脅威となる存在を消し去りたいだけ。城なんか欲しいやつにくれてやるわ。但し――」
そうね、後で支援する候補を調べてプレゼントするのもいいかもしれない。
でもその前に……
「アンタはここでおしまいよ。仲間に手を出した事を後悔することね」
「クッ……」
ギラードの目の前に着地して、切っ先を突き付ける。
歯ぎしりをしつつ、自棄を起こして突っ込んでくる――かと思いきや……
「フッ、まだまだ詰めが甘いようだな。さらばだ、小娘っ!」
シュン!
「あ!」
あんの野郎、何人かと一緒に転移石で逃げやがったわ。
「ちょっとちょっと~、アイツ逃げちゃ――おぅえ!」
「アイリちゃん、あのムカつくオヤジが逃げちゃったよ! 早く捕まえて!」グイグイ!
「ぢょ、ぐるじい……グビをじめないで……」
聖徳が痛めつけられたのが余程許せなかったと見え、セリーヌの首を絞める勢いで訴えてきた。
「落ち着きなさいミラクル。逃がしたりはしないから」
「ホントに!?」
「ええ。ちゃんと追手は放つから大丈夫よ」
それより後始末が重要ね。
皇帝が逃げたとあれば残された兵士は降伏するしかないし、かといってここに居座って統治する気もない。
やっぱりちゃんとした後継者を用意するしかないか。
★★★★★
アイリが今後に頭を悩ませている頃、ギラードを含む数名は城塞から離れた森の中を移動中していた。
城を追われた身ではあるが、占領下の街で兵をかき集めればまだ分からない。
「クソッ! 忌々しいダンマスめ。この屈辱は絶対に晴らす!」
「しかし閣下、あのダンマスは只者では御座いません。生半可な攻めでは城を取り戻せませんぞ?」
「分かっている! 貴様らは黙ってついてくればよいのだ!」
「も、申し訳ありませぬ!」
部下に背を向け、再び歩き出すギラード。
最初こそ怒りにうち震えて気付かなかったが、だいぶ頭が冷えてきたところである異変に気付く。
「おい貴様ら、途中で脱落したやつはいないか? 妙に足音が少ない気がするが……」
「い、言われてみれば確かに――っ!?」
「よし、一度点呼をとる。総員停止!」
振り向きざまに停止を命ずる。
しかし……
「む? おい貴様ら、いったいどこにいる!」
木々が風に揺れているだけで、先ほどまでいた兵士たちはどこにもいないではないか。
ならばどこに消えたのか……。
「ふざけているのか!? さっさと姿を――」
「……貴方の部下はもういない」
「――っ!?」
「……すべて土へと還るだけとなった。残っているのは貴方一人」
「なっ……」
突如現れた黒づくめの少女に、ギラードの顔が恐怖で引き吊る。
その少女の言うことが真実ならば、部下を殺したのは目の前の少女ということに……
「き、貴様はいったい……」
「……シャドウマスターアサシンにしてアイリの眷族ペサデロ」
「な……あ……シャ、シャドウマスターアサシンだと!?」
シャドウマスターアサシンと言えばBランクの人形魔物であり、暗殺が得意という対人戦のエキスパートだ。
転移石で逃げられたと気付き、アイリが追手として放ったのである。
「……我がマスターの命により貴方を討つ――覚悟!」
ザシュ!
「ガ――――」
何かを言う前にギラードの首が落ちる。
皇帝と名乗りをあげたその日のうちに、彼の名は歴史から消え去ったのであった。
幻王「毎度お馴染みの幻王だ。今更な気もするが、今回説明するのは――」
デデン! 【転移石】について
幻王「これだ。本作でもたびたび出てくるこのアイテムは、使用すると最大で3キロ離れた場所まで転移できるという優れもので、ギラードのように緊急避難アイテムとしても重宝するぞ」
聖徳「でも高ぇんだろ? 一般人はもちろん、冒険者もおいそれと手が出せねぇらしいじゃん」
幻王「その通り――って、なんでお前が! 数少ない活躍の場を奪う気か!?」
聖徳「ただの顔見せだよ。それよりさ、雑貨屋とかじゃ売られてないって話だし、どこに売ってるか教えてくんね?」
幻王「……コホン。転移石は大変高価なマジックアイテムだ。オークションでの出品を待つか、マジックアイテムを扱っている店をハシゴするんだな。もしくは商業ギルドに依頼するのもありか。そもそも金は有るのか? 相場はこんな感じだぞ?」
最良=金貨500枚前後
良質=金貨300枚以上
普通=金貨200枚くらい
粗悪=金貨100枚前後
不良=金貨50枚でなんとか
聖徳「たっか! でも見た目には拘らねぇし、不良品でもいいけどな」
幻王「残念だが見た目だけの問題じゃない。性能にも関わってくるんだ」
最良=6、7回くらい使える。
良質=5回くらいが殆ど。
普通=3、4回くらいが限度。
粗悪=いいとこ2回くらい。
不良=1回限り。
聖徳「うへぇ、マジかよぉ?」
幻王「大マジだ。浮かれてテキトーに買うと大損することになるから注意するんだな。それから注意点だが、ダンジョン内で使用すると入口に戻されるだけなので、こちらも知らないで使うと勿体ないぞ」
聖徳「んなこたぁ知ってるよ(ヤベェ、全然知らなかった)」




