神秘の欠片とダンジョンコア
「ファイヤーストーム!」
ゴォォォォォォ!
「え……グ、グールが?」
「すっげ! 一瞬で燃やしちまったよ!」
「ブルーウルフん時もそうだったが、この子は只者じゃないな」
にじり寄ってきたグールをまとめて灰にしてやると、冒険者たちから歓声が上がる。
今さらEランクごときに苦戦はあり得ないわ。
「ア、アイリさん、貴女はいったい……」
「レジェンダ商会の幹部よ」
「いや、ダンジョンマスターでしょ。しかも魔物を召喚するまでもなく強いとか、反則レベルよ」
ま~たリーゼは余計なことを……。
あとでセレンに記憶改竄してもらわなきゃだわ。
「あ、あの……ダ、ダンジョンマスターというのは」
「それよりさっさと行きましょ。奥にあの爺ぃがいるに違いないわ」
半ば強引に切り上げて、グールが現れた方へと進んでいく。
そこに1つだけポツンと生命反応が感じられるし、それがキートン爺ぃのはずよ。
ドガッ!
「!?」
扉を蹴破り小部屋へと突入すると、中にいたキートン爺ぃがまさかという表情で振り向く。
「覚悟しなさいインチキ爺ぃ。私を嵌めた報いは受けてもらうわよ?」
「同じく、覚悟しなさいクソ爺ぃ。私にガラクタを掴ませた報いは受けてもらうからね!」
いや、それはアンタが率先して拾ったんでしょうが。
むしろ仕入値ゼロなんだから、一応は感謝しときなさい。
「諦めなさいキートンさん。貴方はもう詰んでいる。潔く己を店じまいする事です」
「ぐぬぬぬ……、こうなっては仕方ない。少々予定よりも早いが――」
そう言って壁に掲げられていたダンジョンコアに、白い粉のような物を振りかけて……
「――って、ダンジョンコア!?」
「ホッホッホッ! その通り。このダンジョンコアに神秘の欠片を砕いて振りかける。これにより、かけた者はコアと繋がる事ができると言われておる」
「ア、アンタまさか!」
「フッ、貴様の想像通り、ワシは今からダンジョンマスターへと生まれ変わるのだ!」
そのために神秘の欠片を集めてたんだ。
しかも複数用意すれば、それだけ繋がりも強化できる――そんなとこでしょ。
「マズイぜ、あの爺ぃを止めねぇと!」
「フハハハハ! もう遅いわぃ。すでにワシはダンジョンコアとの接続に入った。もはや誰にも止められん!」
この爺さんの言ってることは本当だと思う。
けれど何? ダンジョンコアと繋がるどころか、一方的に取り込まれてるような感じしかしない。
これはいったい……
「グォォォ? な、な、な、なんじゃ、貴様は誰じゃ!?」
「「「!?」」」
私の思った疑問はすぐに形となって表れる。
突然キートン爺さんが盆踊りのような動きを取り始めたのよ。
「な、何なのよこの爺ぃ? なんかキモいんだけど」
リーゼも気味悪がっている中、鑑定によって思わぬ事実が浮上した。
「あのダンジョンコアはダミーコアよ! コイツ、ダミーコアに取り込まれてるわ!」
今思い出した。
コイツの持ってるダミーコア、ツァールズ伯爵が幻王のダンジョンに侵入して持ち去ったやつじゃない!
「カ、ラダを……ヨコ、セ……グォォォォォォォォォォォォ!」
とうとうキートン爺さんはダミーコアに取り込まれ、白目を向いて倒れてしまった。
「こ、これは……どうしたものか……」
「ね、ねぇアイリ。この爺さんどうなっちゃったの?」
「気をつけて、無闇に近付いちゃダメ!」
ダミーコアは置かれた環境により性質が変化する。
つまり長期間ここに置かれてたなら、より性格のネジ曲がった個体として……
「む? ここは……おおっ、ついに成功しました!」
「「「?」」」
な、なんかキートン爺さんが若返って、ハンサムな青年になったんだけど……どゆこと?
「ここへ運ばれてからというもの、毎日毎日ほこりが舞い上がる部屋に軟禁されるなど、このような行為は人権侵害に他ならない。キチンと抗議しなくては――」
「あ、あの~もしもし?」
「ん? なんだねキミは? 僕はこれから邸全体の清掃に入らないといけないのだ。悪いが出ていってくれないか?」
「いや、ちょ――」
「ほら、君たちもだ。そこの階段から地上へと出られる。分かったら速やかにご退場願おう」
わけも分からず若返ったキートンさんにより、全員が追い出されてしまった。
「ねぇ、アレは何だったの? まるで別人になっちゃったみたいに……」
「ハッキリ言えば別人よ。アレはダミーコアが持っていた性格で、ほこりまみれの部屋に置かれたせいでああなったのよ」
「確かに別人でしょうな。私の持つ契約書もホラ、名前が消えてしまってます」
見せてきた契約書にはテンノウジさんの名前しかなく、書かれてたであろうキートンという名は消えている。
これは本人が死亡した事を意味するのよ。
「はぁ……。本人が死んだんなら報酬貰うの無理じゃん」
「ハッハッハッ! お互い骨折り損でしたが、生きて帰れて良かったとしましょう」
確かにこれはしょうがない。
取り引きが毎回上手くいくと決まってるわけじゃないし、今回はキャメロン商会と縁を持てたってことでプラスにしよう。
★★★★★
――というわけで、アイリーンに帰還した私たち。
セレンも付いてきたんだけど、何故か私の眷族には適合しなかったため、ミラクルの眷族になってもらった。
「セレンさん、これからよろしくね!」
「は~い~、こちらこそ~♪」
さっそく馴染んでいる永遠の17歳。
果たしてミラクルが知る時がくるのかどうか、それは私にも分からない。
一応セレンの歳には触れないようにと後で伝えておこう。
「ほほぅ、中々の美少女ですね。歳はおいくつで――」
「死ね!」
ドゴォ!
「ゴフッ!?」
さっそく地雷を踏んでしまったブラッシュがワンパンもらって悶えている。
エルフに蹴られるのと違い、本気で痛がってるのがちょっとだけ興味深い。
「それで、リニューアルしたキートン氏――略してニュートン氏はいかがしてますの?」
「ああ、あの青年ならボロッちぃ邸を改築するって言ってたわ。敵意も害意も感じなかったし、放っておいても大丈夫でしょ」
睡眠も食事も必要ないって言ってたし、寝る間も惜しんで作業に没頭してるんじゃないかな。
というかレミットのネーミングがピタリとハマりすぎ。今度からニュートンさんと呼ぶことにしよう。
ガチャ!
「もぉ~ぅ、みんな~? そろそろ店内に戻ってよぉ。いつまでムムたちだけにしとくつもり~?」
「でもあたしは今日は休みだし……」
「わたくしはまだ休憩中です」
「ならば――フッ! ここはワレが――フッ! 一肌脱ごうでは――フッ! ないか――フッ!」
ワグマが出たらメイド目当ての客が逃げ出しちゃうわ。
というか汗が飛び散るからスクワットはやめてちょうだい。いや、そもそも休憩室で運動しない!
「ミラクルもエレインもダメ。じゃあレミットは連れてくね」
「お、お待ちなさい。わたくしもまだ――」
「どうせサボタージュでしょ? ほら、早く戻るよ」
「ちょっと、服を引っ張らないでくださらない? だらしなく延びてしまいますわ!」
密かにサボっていたレミットがムムにより連れ戻されていく。
オープンからだいぶ経ってるし来客数も落ち着いて――な~んてことはない。
二週間以上は経った今でも忙しいのは逆に有り難いのかな?
「そういえばね、バルドス公爵がお忍びで来店したって噂が広まってるらしくて、その影響で遠くから来てるお客さんも多いらしいよ?」
「ああ、そういうこと……」
何気ないミラクルの一言により、来客数が衰えない理由が判明した。
もうしばらく忙しい日々が続きそうね。
これにて第3章は終了です。
次回の閑話は……
リーゼ「…………」そわそわ
ユーリア「…………」そわそわ
シェーラ「…………」そわそわ
シュガー「何でみんなしてそわそわしてるです?」
レイ「ウチらの誰かがピックアップされる可能性が高いからじゃね?」




