第45章:後方部隊
両手でざらついた角材を支え、地面の上に真っ直ぐ立たせていた。目の前にいる大柄で少し太めの少年が金槌を振り下ろすたび、激しい振動が手のひらと手首へと直接伝わってきた。鉄が釘の頭を打ち据える騒々しい音が何度も響き、木材の匂いや足元から舞い上がる土埃と混ざり合っていた。
柱の継ぎ目を支えながら、目の前で熱心に釘を打っている少年をちらりと見た。彼はヒロの一団のメンバーの一人だった。
まあ、地球から来たあの連中をヒロのグループと呼んでいるのは僕自身の勝手な名付けだ。最初から彼らを観察していて、仲間内の中でヒロがリーダーを務めているのは一目瞭然だった。彼ら自身のパーティー名がまだ決まっていない以上、何と呼べばいいのか少し迷うところだった。
それに、いつまでも『地球グループ』なんて呼び続けるのも、少し失礼な気がするじゃないか。
最後の釘が深く打ち込まれ、木材の継ぎ目がしっかりと固定されると、少年はようやく金槌を下ろした。
「ありがとう、リアム」
彼は腕の裏で額に滲んだ汗を拭いながら、長いため息をついた。
僕は短く頷いて返し、木材の表面から手を離した。
さっき荷馬車から機材や補給物資の山を下ろし終えるや否や、小隊長は僕たちに野営地の周囲へ簡素な柵と木造小屋を建てるよう命じた。魔物の襲撃を防ぐため、というのがその理由だった。その言い分を聞いたとき、僕の口元には小さく嘲るような笑みが浮かんだ。
今のこの状況で、この辺りをうろつく魔物なんているのだろうか? ひどく疑わしいものだ。そう思いつつも、手は地面の山から次の板材を取り出していた。
だが仕方がない、命令は命令だ。お金をもらってここで働いている以上、嫌でもプロとして仕事をこなさなければならない。
考えてみればおかしな話だ。前の人生の頃から、僕はいつもこういうプロ意識のような原則を口にしてきたくせに、前世では一度たりとも働いたことすらなかったのだ。
昔、都会で暮らしていた頃、僕の仕事といえば電話越しに両親に嘘をつき続け、バイトをしていると言い張ることだけだった。
今の時代、簡単に手に入るバイトなんてどこにあるというのか? 先進国に暮らしていたとでもいうのか? 普通の仕事を探すことすら至難の業なのに、ましてやインターンやバイトの枠を見つけるなんて無理に決まっている。
その結果、都会で生き延びて学費を払うためのすべてを、両親からの毎月の仕送りに依存していた。裕福な家庭とは到底言えず、毎月送られてくるお金も本当にギリギリの額で、日々の食費と大学の学費を払うのがやっとだった。
さらに愚かなことに、そんな追い詰められた状況にあっても、僕は相変わらず受け身のままで何もしなかった。副収入を得ようと努力するわけでもなく、当時の僕の日課といえば相変わらず大学へ行き、帰宅し、夜遅くまでゲームに熱中するだけだった。
まさにゴミのような自堕落な生活だ。当時の僕は、今の仕送りだけで十分足りているのに、なぜ疲れる思いをしてまで働いて収入を増やさなきゃいけないんだ、とさえ思っていた。幸いにも、僕はあれこれ買い物をするタイプでもなければ、贅沢な食事を好むタイプでもなかった。ゲームができるパソコンが1台あり、大した性能ではなくてもSNSを見たり小説を読んだりするのに困らないスマートフォンが1台あれば、当時の自分の境遇に満足できていたのだ。
クソッ、今になってそんなことを思い返すと、本当に救いようのない大馬鹿者に見える。
僕は野営地の別の方向へと目を向けた。僕が立っている場所からそう遠くないところで、ヒロ、健太、そして夏木涼という眼鏡の少年が、小屋を建てるために木材を運んでいた。一方、野営地の外縁部では、彼らのグループの女子たちが他のグループの女性たちと一緒に見回りをしていた。
どこの世界であっても、女というものは常に特別な扱いを受けるものだ。僕たちのように重い木材を運ばされたり柵や家を建てさせられたりする代わりに、彼女たちには魔物の侵入に備えて野営地の外周を巡回する任務が与えられていた。だが警戒するだけでなく、彼女たちの目は僕たち全員を絶えず監視し、真面目に働いているか、わざとサボっていないかを見張っていた。もしサボってわざと手を抜いている作業員を見つけても、彼女たちは直接注意したりはしない。ただ黙って、僕たちの小隊長のところへ告げ口しに行くだけだ。
その見せしめを、少し前に目の前で目撃したばかりだった。金欲しさにこの遠征に参加したものの、働く気のないホームレスのような身なりの老人の義勇兵が数人いたのだ。その老人の一人がわざと作業の手を遅らせ、仲間たちもそれを気にも留めずにいた。見回りの女子たちに見つかって密告されるや否や、小隊長は即座にその老人に歩み寄り、滅多打ちにして叩きのめしたのだ。
さっきの激しい殴打の音と苦痛の呻き声を思い出すだけで、背中に冷や汗が流れた。
喉の渇きを覚えながら唾を飲み込み、袋叩きにされて初めて手を休めることなく必死に働き始めた傷だらけの老人をちらりと見た。
もし僕がサボっているところを見つかったら、間違いなく同じ目に遭うだろう。
「石川さん」
新しい板材を支柱に当てて支えながら、隣の少年に声をかけた。
僕の隣で作業しているこの少年は、石川ハルという名前だった。大柄で少し小太りな体格をしているものの、顔立ちはごく普通の善良な少年らしく温厚だった。声も当初の想像とはずいぶん違っていた。これほどの大柄な体格なら大人の男のように重く低い声をしているのかと思いきや、実際には普通の十代の少年らしい明るい声をしていた。
「ん?」
僕が板の下側を押さえる中、彼は木材の継ぎ目に鉄の釘を当てて金槌で軽く叩きながら、手を休めずに返事をした。
現在、僕たちはハルが『レオニア共通語』と呼ぶ言語で会話しており、日本語でも地球の他の言語でもなかった。さっき初めて話しかけてきたとき、ハルは日本語を使ってきたのだ。だが僕が理解できずに黙り込んでいるのを見て、彼はすぐにこの世界の言語へと切り替えてくれた。
仕方がないじゃないか。昔、日本のアニメを見たりライトノベルを読んだりするのが好きだったとはいえ、すべて母国語の翻訳を通して楽しんでいただけなのだ。長年アニメを見てきたおかげで幾つかの単語くらいなら聞き取れるものの、本物の日本人の話し方はアニメの台詞とはまるで違っていた。早口すぎて、僕の耳では到底意味を捉えきれなかったのだ。
実際のところ、あいつらはこの世界の言葉をこれほど流暢に話せるようになるまで、どれほどの期間この世界にいたのだろう? 僕自身はこの世界の原住民の肉体に憑依したからこそレオニア語を理解できているが、彼らは自分たちの生身の体ごとここへ転移してきたのだ。ここまで流暢に話せるということは、おそらくかなり長い間――一年か二年くらいはここにいるんじゃないだろうか?
作業が滞りなく進んでいることを確認してから、僕は少し首を傾げてハルの方へ顔を向けた。
「みんな……本当はどのくらいこの世界に来てから経ってるの?」
金槌の打撃音の合間に、僕は控えめな声で尋ねた。
「一ヶ月くらいだよ」
ハルは釘の頭が板の表面と平らになるまでもう一度打ち込んだ。
「一ヶ月くらい、か……」
無意識のうちにその言葉を繰り返した直後、僕は勢いよく彼の方を振り向いた。
「えっ? 一ヶ月くらい?!」
驚きのあまり、角材の端を支えていた手が外れそうになった。
一ヶ月程度? そんな短期間で、どうしてこの世界の言語をここまで流暢に話せるようになるというのか? 訛りや発音の面から見ても、彼らの話し方はガレンやディナの話し方と何一つ変わらないのだ。
まさか全員が語学の天才集団だとでもいうのか? いや、それも考えにくい。いくら天才であっても、地球のいかなる言語とも共通点を持たない未知の言語を、わずか一ヶ月でマスターするなど不可能なはずだ。
「なんでそんなに驚いてるんだ?」
腰の革袋から新しい釘を取り出しながら、ハルは不思議そうに眉を上げてちらりとこちらを見た。
作業を止めないよう、僕は姿勢を正して次の板材を支え直した。
「驚くに決まってるだろ。この世界に来てまだ一ヶ月くらいなのに、もう現地語をペラペラ話せているんだから」
ハルが再び金槌を振り下ろし始めたので、僕はざらついた木の表面を強く押し当てた。
「お前だって同じだろ?」
金槌の音の合間に、ハルが横目で僕を見た。
「全然違うよ」
僕は真顔で素早く首を横に振った。
「何が違うんだ? 俺たち、同じ地球人同士じゃないか」
ハルは金槌を振る手を一瞬止め、当惑したように僕を見つめた。
違う、まるで違う! お前たちは自分の生身の体で来ているけれど、僕は見知らぬ他人の肉体に憑依したんだ!
口を開きかけたが、言葉は一つも出てこなかった。唇を固く結び、地面の木材の山へと視線を逸らすことしかできなかった。僕が急に黙り込んで言葉に詰まったのを見て、ハルは不思議そうに首を傾げた。
「お前だって俺たちと同じように、この世界のどんな言語でも理解して話せる加護を持ってるから、最初から喋れたんじゃないのか?」
ハルは金槌の柄で自分を指差した。
は? そんな能力があったのか?
僕は目をしばたたかせ、彼の言葉を咀嚼しようとした。
だが、よくよく考えてみれば、ハルの言うことには完全に筋が通っていた。最初に目を覚ましてこの少年の肉体に宿ったとき、僕はこの子供の記憶なんて何一つ受け継いでいなかった。つまり、この子が知っていた言語の記憶も引き継いでいないはずなのだ。もしそんな恩恵の助けがなかったら、どうして初日からこの世界の言葉を即座に理解できたというのか?
あのとき、僕は試しにこの体で自分の母国語を喋ってみたことがあった。声は確かに母国語として出てきたものの、この体の舌の筋肉が見知らぬ発音に慣れていなかったせいで、まるで観光客のようなぎこちない不自然な訛りになっていた。ところが奇妙なことに、この世界の言語に切り替えて話そうとした途端、言葉が極めて流暢かつ自然にスラスラと口から飛び出してきたのだ。あのときは、どうしてそんな現象が起きるのか不思議に思っていただけだった。
だが、それらすべてが加護の効果によるものだったのだとすれば、今になってすべて辻褄が合う。
「うん、その通りだよ」
砂埃の地面の上で足をずらしながら、僕は小さく頷いた。
「なら、なんでさっきあんな質問したんだよ?」
ハルは可笑しそうに鼻を鳴らし、再び目の前の釘を打ち始めた。
僕は何も言い返さず、手のひらについた木屑を払うことに専念するふりをした。
二人の間にはしばらく静寂が流れ、野営地の周囲の他の作業員たちが立てる金槌の音ときしむ木材の音だけが響いていた。だが不意に、ハルの手の動きが鈍くなった。
「一ヶ月前にこの世界に来たばかりの頃、俺たち、自分たちの身に何が起きたのかまったく分からなくて、本当に驚いて怯えてたんだ」
ハルは目の前の板材を見つめた。
僕は眉をひそめて横から彼の顔を見た。どうしたんだ? なぜ急に身の上話を語り始めたんだ?
「あの日、普通の火曜日だったんだ。いつもの学校生活と同じさ」
ハルは金槌を木材の上に置いた。
「放課後、他の生徒たちと同じように家に帰ろうとしてたんだよ。ちょうど野球部の練習が終わって、そのまま帰るつもりだった。他の生徒たちで賑わっていた校門に向かって走ってたんだ。おかしなことなんて何一つなかった。門を出ていく人混みの中に、ヒロたちの姿も見えてた」
「だけど奇妙なことに、足が校門の境界を一歩踏み越えたまさにその瞬間、目の前の景色がいきなり一変したんだ。気がついたら、ヒロたちと一緒にヴェニンブルクの街の広場の真ん中に立ってた」
「まるで学校の校門と街の広場の空間が、そのまま直接繋がっちまったみたいだったよ。まったくわけのわからない出来事だった。もっと奇妙だったのは、校門にあんなに大勢の生徒がいたのに、俺たち七人以外の生徒の姿が一人も見当たらなかったことだ。涼は、他の生徒たちも俺たちと同じようにこの世界へ巻き込まれて、ただ世界中に散り散りに飛ばされただけかもしれないって言ってたけどさ」
学校の校門をくぐっただけでこの世界に来たのか? よくある異世界アニメのように、教室の席に座っている足元に光る魔法陣が現れるような召喚を想像していたのに。だが考えてみれば、彼ら七人だけがここへ到達したというのはあまりにも奇妙だ。もし校門が転移の媒体だったのだとすれば、同時に門をくぐっていた他の生徒たちも一緒に巻き込まれていたはずだ。他に誰もいないのだとすれば、彼ら七人だけが意図的に選ばれて召喚されたということではないのか?
「異世界にいるって最初に気づいたとき、俺たちの状況は本当にめちゃくちゃだったよ」
ハルは続けた。
「みんな混乱して怯えてた。幸いにも、そこに健太とヒロがいてくれたんだ。二人は俺たちの動揺をずいぶん落ち着かせてくれたよ、特に健太がね。俺たちが巻き込まれた出来事は、あいつがよく読んでる異世界の物語そっくりなんだって言ってた。俺自身はそういう話なんてさっぱり知らなかったけど、みんなの前で必死に不安を隠そうと空元気を出している健太の姿を見てたら、少し気持ちが楽になったんだ」
「丸一日中、俺たちは情報を集めるために街の中を歩き回ることにしたんだ。当時の健太の推測じゃ、きっと国王か誰かのお偉いさんが俺たちを意図的に喚び出したに違いないって話だった。だけど一日中あちこち探し回った末に、健太の言うように俺たちを喚び出した人間なんてどこにもいないんだってようやく気づいたのさ」
ハルは当時の間抜けな出来事を思い出し、苦笑いを浮かべた。
「その日一日中、着ていた制服や見た目のせいで周囲の人たちから変な目で見られっぱなしだったよ。幸いだったのは、悪党に出くわさなかったことだな。あんな状態で悪党に絡まれていたら、全員一発で終わってたはずだ」
「怖かったけれど、この街の景色や住人たちを見たときは本当に感動したよ。何もかもが新しくて、好奇心を刺激された。猫やウサギの耳が生えた獣人を生で見たし、ライオンの顔をした大柄な人までいたんだ。髭を蓄えた背の低いがっしりした種族や、尖った耳を持った子供みたいな小人族までいた。街の外れにそびえ立つ壮大な城の景色もすごかった。すべてが本当に俺たちを圧倒したよ」
ハルの顔から笑みが徐々に消え去り、疲労の滲む重いため息へと取って代わられた。
「だけど数日も経つと、その景色にも慣れてきて、今度は飢えた胃袋の問題に直面しなきゃならなくなった。時には……市場で盗みをして食いつなぐことすらあったよ」
ハルの声は沈み、うつむいた仕草からは後悔と恥じらいの色がはっきりと見て取れた。
「ああ、そんなの道徳に反する悪行だってことは分かってる。でもどうしようもなかったんだ。生き延びるために、他に選択肢がなかった。そのうち、泥棒みたいな暮らしを続けることにも本当に嫌気が差してさ。通りの人々の立ち話から、冒険者ギルドっていう場所に行けば誰でも仕事を見つけて金が稼げるって情報を手に入れたんだ。本当はここに来て二日目の時点で、健太が俺たちをそのギルドの建物へ連れて行ってたんだけどね。問題は、そこで仕事を受けるには正規の冒険者として登録しなきゃならなくて、登録料が一人につき銅貨百枚もかかるってことだった。当時は一文無しだったから、手ぶらで追い出されるしかなかったんだ。それから何日か経って、ようやく登録できるだけの金をかき集めたよ。一人分しか足りなかったけどね……それが雪乃だった」
「雪乃?」
ハルは頷いた。
「俺たち七人の中で、雪乃の戦闘能力はずば抜けて一番上だったんだ。学校にいた頃、あいつは剣道部に所属していて、県大会に学校代表として出場したこともある腕前だったからね。だから俺たち全員で合意して、まず雪乃を冒険者に登録させたんだ。その後の数日間、俺たちもみんなで雪乃についていって、街の外で魔物を狩るのを手伝った。で、その戦いの最中に、俺たち一人ひとりに特殊な超能力のようなものが備わっていることにようやく気づいたのさ。最初は、授かった恩恵なんてこの世界の言葉を理解できることくらいだと思い込んでいたのに、そうじゃなかった」
「その力に気づいてからは、能力を駆使して雪乃が様々な依頼を達成するのを助け、ついに金が貯まって全員が正式な冒険者として登録できたんだ」
「俺たちのその超能力が加護と呼ばれているものだっていうのも、その後に知ったのさ。それも、下水道で大ネズミの魔物と戦って怪我をしたヤナミの足を治療するために、教会へ駆け込まざるを得なくなったときに偶然知ったんだ」
「あのときは本当に切迫していたよ。ヤナミを失うんじゃないかって本気で怯えた。大ネズミの爪痕には危険な毒があって、一刻も早く治療しなければ命に関わる状態だったからね。幸い、負傷者は教会へ連れて行けば治療を受けられるという噂を耳にしていたおかげで、間一髪でヤナミの命を救うことができたんだ。そしてその教会で、ひどく興味深い神父様に出会ったんだよ。普通の神父とはまるで違っていて、話し方もすごく穏やかで心を落ち着かせてくれる人だった」
ああ、そのときに彼らはノア神父と出会ったのか。道理で、以前僕が神父と話したとき、僕とよく似た境遇の者たちに会ったことがあると言っていたわけだ。
「その神父様のおかげで、ヤナミの命は助かったんだ」
ハルは安堵の息を吐きながら重ねて言った。
「俺たちの戸惑った様子を見て、神父様は俺たちがこの街の出身じゃないどころか、この近辺の地域の人間ですらないことを見抜いてくれた。俺たちの境遇を哀れに思ってくれたのか、この世界の基本的な知識をたくさん教えてくれたんだよ。あの出来事以来、クエストを達成して街に戻るたびに、俺たちは教会へ立ち寄って神父様から教えを乞うようになった。世界の歴史や一般常識、魔術の存在について学び、俺たちが持っている能力の名前が加護だということも知ったんだ」
ハルはこの世界に足を踏み入れて以来の過酷な苦難の日々を滔々と語り続け、僕は時折小さく頷きながらただ耳を傾けていた。
ハルの語る言葉の合間に、胸が恥ずかしさで少し締めつけられるのを覚えた。今の話を聞いて、自分たちの境遇がどれほど異なっていたのかを骨身に染みて痛感した。これまで僕は、自分の不遇について愚痴をこぼし続けてばかりいた。どうして異世界の主人公たちのような無敵の最強能力が授けられなかったのかと、不満ばかり垂れ流していたのだ。だが、食べ物を盗むまでに追い詰められ、仲間を死なせかけた彼らの苦難と比べれば、僕のここでの境遇など、彼らの目から見ればそれこそ異世界の主人公そのもののように映るはずだ。
これまで僕はただ上ばかりを見上げ、自分より遥かに過酷な運命に耐えている人々がいることに気づこうともしなかった。いや、本当は知らなかったわけじゃない――最初から気づいているべきだったのだ。ただ、ずっと意図的に目を背け、自分こそが世界で最も惨めで最も同情されるべき哀れな人間だと思い込みたかっただけなのだ。実のところ、この世界に来てから僕が経験したことなど、ここの大半の人々の運命に比べれば、何一つとして最悪なものなどではなかったというのに。
「おい、あそこを見ろ! あのだかりは何だ?!」
輜重荷馬車の近くにいた冒険者の一人の叫び声が、不意に僕の思考を打ち消した。即座に顔を上げ、作業の手を止め始めた他の冒険者たちの視線の先を追った。僕たちが立っている場所からそう遠くないところで、大勢の人間が何かの周りに駆け寄り、人だかりを作っていた。僕たちの脇を走り抜けていく人々の騒々しい叫び声から、ジュリア王女の天幕のすぐ近くに、空飛ぶ魔術師が墜落してきたらしいという噂がかすかに耳に入った。
「気になるか?」
ハルも首を伸ばし、次第に膨らんでいく人だかりを見つめた。
「うん」
その人だかりの周囲に立ち上る薄い砂埃から目を離さず、僕は正直に頷いた。
「なら行ってみようぜ、何が起きたのか確かめにさ」
ハルはすぐに踵を返し、歩き出す体勢をとった。
「でも、この作業はどうするの?」
僕の手は、まだ完全には組み終わっていない目の前の木柵の列を指差した。
ハルは振り返り、僕の肩を軽く叩いて掴むと、気楽な笑みを浮かべた。
「平気だって、見ろよ、みんなあっちへ見物に行ってるじゃないか。全員で見に行くんだから、俺たち全員をお咎めなしにするわけにはいかないさ」




