5章 ー08
「いや、もうそんな問題じゃねぇよ」
白拓の唇が青みがかっている。
「白拓……」
透子の声が震えた。
白拓はそれに気付き、自分の腕をどかす。
(人間てのは不思議な生き物だな。自分を利用しようとしていた奴の為に泣くのかよ)
理解出来ないが、嫌な感じはしなかった。
黒い透子の瞳が涙で煌めいている。
白拓は腕を上げ、そっと涙を拭う。
そして目を丸くし、透子を仰ぎ見た。
「お前、まだ霊力残ってんのか」
「え?分かんない……」
透子は瞬きし、白拓を見つめ返す。
「……さっき朱奈に選べって言ってたよな」
「うん?」
流石耳が良いのだなと少し関心する。
「お前も選べよ。ここで朽ちる俺を見届けるか、俺にそれを寄越すか」
白拓は奥歯を噛み締め、体を起こしそう言った。肩は大きく上下している。
しかし、薄茶の瞳は死んではいなかった。
「早く決めろよ……多分、そんなに俺はもたねぇよ」
それを裏付けてるかのように白拓の狐耳は力なく項垂れている。
「それって霊力の事だよね?どうやって渡せば良い?触ったら白拓にあげれる?」
「はぁ……察しろよ」
白拓に頬を撫でられ、透子は察した。
「えぇ?!そ、それは……」
「言っとくが、俺はこの体勢がやっとだ」
言い終わると咳をし、血を拭い、俯き加減でふーふーと息をする。




