宴には愛すべき親類たちが沢山集まってくれて
そこにまたインターフォンが鳴って、ドアマンが不思議そうにしている。
ボンと煙と共に現われたのは、魔女のシィ。
「はーい、ジーク・・・私との甘い・・・わぁお、ワンダー・・・久しぶりね」
「ああ、シィ。久しぶり。やっぱりふたりは昔・・・」
「しっ、妻には秘密にしているんだ」
「「ふぅん」」とアンビーとグラッティ。
「しょうがない・・・子供達、今月のお小遣い1万ウッチカヒ、プラスしよう」
「「やっりぃー」」
ハイタッチするふたりをよそに、ホウキに乗ったシィが窓まで飛ぶ。
「すまないなぁ」
「この節操なし!」とシィ。
はたくように落とされた先で、ジャックはまた子供達のボールになる。
その様子を見ていて、ワンダーがぼやく。
「シィ・・・あの女の前では、俺は男だった・・・」
「元の鞘に戻らないのかい?」
「あやふやが濃くなった原因は、あの女だぜ・・・」
「はぁ・・・」
大きなため息を吐いてかぶりを振るジーク。
ワンダーに向き直ると、「一杯どうだい?」と言う。
「あら~、そう言えばお菓子を作って来たのよ?」
「「なに、なに?」」
「毒リンゴのコンポートと、ウイスキー入りのチーズケーキよ~」
「それはうまそうだなっ。さぁさ、客間にどうぞ。シィもねぇ」
「わたしはしばらくここに座っていたい」
「まぁ、それならそれでもいいが・・・シィ、どうして早めに来たんだい?」
「遅刻魔の君が」とワンダー。
「親戚じゃないのさ。新入りを素直に祝福したくてねぇ」
「嬉しいなぁ・・・なぁ、アンビーとグラッティ?」
「「うん」」
「あら、まぁ~。なんて可愛いんでしょう?お小遣いあげましょうか?」
「「うん!!」」
猫なで声の魔女が降りて来て、唇を妖艶に舐める。
「あ。うっかり、していたぁ」とジ―ク。
「なんだ、認めたのかと思った」とワンダー。
「そんなわけはないだろう。子供達よ~、シィと変な遊びをしたら孕むぞ~」
「「分かった~」」
「なんで言うのよっ?」
「俺はあいつの前では・・・男だったのに・・・」とワンダーがぼやく。
その背中をさすりながら、客室へと向かうジーク。
それとすれ違いに、玄関前にやって来たアゲハ。
「子供達~、着替えは済んだの~?」
「「まだ~~っ」」
シィも混じって『首だけジャックのM遊び』をしている子供達。
その首が飛んできて、ヘディングで迎えるアゲハ。
「子供達っ」
「「・・・分かったよ~。おじさん、おばさん、ありがとうね」」
「いい、いい。鳥かごに戻しておくれ」
「私がやろう」
子供達から投げてよこされたジャックを、鳥かごに戻すシィ。
黒づくめの服に、黒い造花飾りのついた帽子、編み上げのブーツも黒。
「あれ?今わたしは、何かをうっかりしている?」とジークがぼやく。
そこは屋敷の中にある聖堂で、そこに親戚や親しい友人たちが集まっている。
不安そうに妻を見ると、「大丈夫よ」とウインクされる。
「うっかり、して、しまって・・・」
「パーティー」
「誰の?」
「この子の生誕歓迎パーティーよ」
妻が腕に抱く赤子を見て、「ああ、そなのか」と言うジーク。
周りにはドレスやスーツを着た親類たちばかり。
そして妻は、隣。
少し遅れて登場した立食会に、アンビーとグラッティはおしゃれをしていた。
「おめでとう」
「おめでとう」
そんな言葉がかかる中、わいわいと賑わうパーティー。
主催は家長のジークであるが、なんのことだったのか『うっかり』している。
そしてはっとして、「あ。思い出した」と言って、グラスをスプーンで鳴らした。
「今日は皆、集まってくれてありがとう。
またカインズファミリーは人数を増やすかもしれないけど、よろしくね!」
「「よろしく~」」
「新入りの名はラーシュ、どうか祝福してくれ~」
そこにワンダーとシィが声を透した。
「「純血種の君、生誕おめでとうっ」」
言葉が分かったのか、赤子が笑う。
「ほら、アンビー。ちょとは自分でだっこをして」とアゲハ。
「僕がするよ」とグラッティ。
「危なっかしいよ」とアンビー。
「俺たちの子供だろう?」とグラッティ。
「まぁ、そうだけど」とアンビー。
アンビーがだっこをしてその肩に片手を置くグラッティは写真に映る。
皆が歓声をあげた。
「「純血の君、生誕おめでとうっ」」
ジークはアンビーとグラッティに言った。
「ふたりももう、子供ができたんだ、落ち着きなさいね」
「「・・・はい」」
「ほう、いきなり素直じゃないか?」
顔を見合わせ、にっと笑い会う夫婦のはずの姉弟。
父を見て、「うっそだっぴょーん」と嬉しそうに言う。
「はっはっは。まーた、だまされてしまったぁ」
「あ・な・た」
「ん?どうしたんだい?ハニー?」
アゲハが言った。
「昔を思い出したのよ、私とあなたが結婚した頃を」
「嗚呼、なんてことだ・・・」
「そしたらね、気づいたことがあるの」
「どうしたんだい?」
「もしかしたら、宿っているわ」
「もしかして、僕たちの赤ちゃんが?」
「そうなの」
「いつの?」
「もうすぐ生まれるわ」
「いつっ?」
「もう、頭が出てきている」
会場は盛り上がりを増して、持っていたグラスをかかげた。
「「チンチーン」」
ジークはかかげたグラスの中身を、高い位置から浴びるように自分にかけて飲んだ。
ーおわりー




