封じられし時空間
辺りは地中なのに白く輝いており、目の前には何かが封印されているかのように、鎖で固定された巨大な扉が見える。
その扉の前には、1人の女性が扉の方を見上げて扉に触れながら何かを呟いてる。
「あなたも、目を覚ますのね」
その声は、悲しみがこもっていた。そして彼女の声はとても懐かしく感じた。
女性は、こちらを振り向くと俺に向かってにっこりと笑った。
「おはよう、リュウちゃん。久しぶりだね」
女性は、死んだはずの姉の鉄優衣香だったのだ。その姿はあのころから全く成長しておらずまだ生きているのではないかと錯覚させるようだった。
「姉ちゃんは、死んだはずだろ! あの試験機のパイロットになったときに。なのになんで!!」
優衣香へまくしたてるように問いただした。でも優衣香は、こちらをみながら苦笑い気味の笑顔で返すだけだった。
「落ち着いて、今からそのことも含めて話すから……」
そういうと優衣香はその場で座り、話し始めた。
「まずは私がなぜここにいるかからだね。信じられないのかもしれないけれど、ここは私たちがいた世界とは別の場所なの」
その言葉は急すぎた。はじめのうち全く理解できなかった。
「ちょっと待ってよ。じゃあここは別の世界で、元の世界では少女を助けたつもりがなにもできてないってことなのか?」
「ううん、ちゃんと女の子は助けたよ。こことは時間間隔が違うの。こちらで話していることは向こうに戻れば1分にも満たない時間だけしかたたないから」
優衣香はそれだけ言うと再び巨大な扉を見上げつぶやくように声を出した。
「それでも時間がないのは事実だね。さっそくだけど本題に入るね。私は鉄優衣香の思念体みたいなもので体自体は、この扉の向こうに封印されている試験型フォグ・ディフィートと融合しちゃってるから」
「融合って!! それにこの扉ってあの鎖で頑丈に閉じられている扉のことか?」
「そうよ、そしてあちら側の世界にドラゴンが再び出現したのに反応して封印が今にでも崩壊しそうなの。今あの子を操縦できるとしたらその刻印を持ってるリュウちゃんぐらいなの。それに他の人には乗ってほしくないの」
そのとき何かに共鳴するように鎖が揺れ始めた。
ついに封印の鎖は壊され、封じられていたフォグ・ディフィートがこちらへと向かって歩き始めた。そのフォグ・ディフィートは龍二が知っている機体とは違い、その背中には蒼い色の翼と尾を持っておりまるでドラゴンを思わせるなりだった。
「なっ!! 無人なのに動いているのか?」
しかしその問いに答えてくれるものはいなく、近くにいたはずの優衣香もまるでいるべき場所に戻ったかのように姿を消してしまった。
そうしている間にもフォグ・ディフィートはこちらに近づき、俺を踏みそうな一歩手前のところで止まり、手を伸ばしてきた。
そして伸ばした手で龍二を軽く救うように持つと胸のあたりまで運び、そのままフォグ・ディフィートの胸の部分にあるコアへと押し付けた。
「やめろー!!!」
そんな声を上げる中、龍二の右腕の刻印はコアに近づくたび青白い光を放った。
ついに押しつぶされると思った龍二は、目を力いっぱいに閉じその時を待った。しかしそんな時は訪れず、急に液体の中に放り込まれたような感覚を覚え目を開けるとそこは赤い液体の中だった。
その液体に誰かの声が聞こえ始めた。
『リュウちゃん、落ち着いて深呼吸して』
それはまるで優衣香の声のようにも聞こえ、おとなしくその言葉通り行動した。
『落ち着いたね。FDシステム起動。ドラゴノーグ意識レベル凍結。パイロットデータ初期化。パイロット更新。起動』
するとまるで人工知能アシスタントが付いてるかのように龍二の心配をしながら何かの起動コマンドをつぶやき始めた。
風景が一時的に暗転したが、すぐに先ほどまでいた景色が映し出された。どうやら先ほどの起動コマンドはこの機体用のコマンドのようだ。
「それにしてもこの人工知能アシストは、なんで俺のことは優衣香のような呼び方したんだ?」
『それはさっきも言ったよ。 私、鉄優衣香はこのフォグ・ディフィートと融合したって』
「姉ちゃん!! じゃあこの機体、ドラゴンに侵食されて姉ちゃんを殺した元凶じゃないか」
『そんな風に言わないで! もともとそのドラゴンを利用した人間が悪いの。でも今はそんなこと話している時間がないのまずはこの時空間から現実の空間に戻りましょう。急がないと、暴れているドラゴンにすべて破壊されちゃうよ。操作方法はその刻印が語り掛けてくると思うからとにかくその言葉を信用して』
それだけ言うと、優衣香はまるで何かに集中するかのように黙ってしまった。
『再び会えるとは思わなかったよ、人間とドラゴンの両方の血を持つ者。あとから話はできる。まずは外のゴミを片付けるよ。操作方法といっても頭の中に思い浮かべるだけなんだけどね、まずは空間をこじ開けるのをイメージしながらあの扉を開けるんだ』
俺は言われた通りまずは扉の所まで行くために歩くイメージをした。
すると機体はゆっくりと前に進んでいく次第に機体と自分の体が交じり合うのを感じ取るとさらにスピードを上げ、扉に近づき勢いよく開いた。そこから時空間を飛び出るあいだの操作はまだ慣れていないこともあり、アシストに徹底している優衣香へと任せることにした。




