決戦
鉄姉弟はカオスドラゴンと同時に消滅することを覚悟のうえで最後の力を振り絞り、攻撃を加えた。
そして予想通りお互いの力のぶつかり合いで機体も崩壊を始める。
体も痛みを感じないうちにボロボロになっていく。
「俺はまた、守れなかった」
「そんなことないよ。リュウちゃんはいつも私を守ってくれてたよ」
優衣香は龍二を抱きしめながらささやく。
「でももう俺たちは助からないんだよ! そんなの助けたとは言えないじゃないか!」
『お主らは我があちらへと必ず返してやる。さすがに今のままの姿と行かないがな』
その声は最初に操縦方法を教えてきた声だった。
声が聞こえるほうに視線を向けると、最初はぼんやりと誰かがいるとしかわからなかった。
しかし次第に蒼色のワンピースを着た黒髪の少女がいた。
『だがもう少しだけ力を貸してくれ、私の半身を完全に掌握するために』
その娘は申し訳なさそうに見つめてきた。
「リュウちゃん、私はこの娘のこと信じるよ。あの暴走の時も助けてくれたから」
「暴走ってもしかして最初の試作型フォグ・ディフィート起動実験!」
「そうよ。カオスドラゴンの骨を使った試作型フォグ・ディフィートは、最初から二つの心臓を持っていたの」
『一つは我の心臓。そしてもう一つは人間の手によって作られた我の心臓の複製品。あやつの核になっているものだ』
その娘は人工心臓を映像として直接頭に伝えてきた。
その心臓は真っ黒に染まり、まるで今にも止まりかけている歯車で組み合わされているように感じた。
『お主は今、人工心臓は今にも壊れそうだと感じたのではないか?』
「ああ、本当にあれが心臓といえるのか?」
『確かに心臓だ。だがすでに壊れている。』
「どうゆうことだ?」
「リュウちゃん、それはね。あの人工心臓とこの娘の生身の心臓2つで1つなの」
優衣香は、申し訳なさそうにそういった。
『あの人工心臓の真ん中に空洞が開いているのは生身の心臓が入ることで、しっかり機能するように作られているんだ』
「じゃあもしかして半身を完全に掌握するってことは元の一つの体に戻るってこと?」
龍二は話の流れにそういうと優衣香と黒髪の少女はうなづいた。
「でもどうやって。ただ戦っただけじゃ、お互いがこのまま消えるだけだよ!」
『いわば人工心臓というのは本来の姿の鎧みたいなものに、人格が宿ったものだ。それをただ消すのでは、また同じことが起きる』
「だから私たちがこの娘を動かして、一緒に包み込むの」
黒髪の少女は、うなづき笑顔を浮かべるとその姿を蒼い光に包みフォグ・ディフィートの姿へと変えた。
異変に気が付いた傷だらけのカオスドラゴンは、こちらを振り向いた。
『我が半身の力で我を倒せると思っているのか? そいつは生身の肉体を機械で封じられたなり下がりだぞ』
「お前の半身の力だけじゃない。俺たちもついていることを忘れてないか?」
『人間風情が何を言っているのか。 お前たちの力なぞたかが知れとる』
「それはどうかしらね」
優衣香はそう言い返すと、龍二と手をつなぎフォグ・ディフィートの核に触れ念じた。
すると二人は蒼い炎に包まれ、フォグ・ディフィートの核へと吸い込まれていった。
核を目覚めさせたフォグディフィートは、各部分から蒼いオーラを放ち始める。
体中を確認するかのように各部を動かし、いきなりカオスドラゴンへ向け走り出した。
その動きは、機械で作られらモノではなくまるで生身のような滑らかな動きを見せた。
そしてカオスドラゴンとフォグ・ディフィートがぶつかり合う。
カオスドラゴンも体中から黒く濁ったオーラを出しているが、二人の力を借りたフォグ・ディフィートには及ばない。
お互いがぶつかり合うごとにオーラは削られていき、スピードが落ちていくカオスドラゴン。
『ふざけるなー! 我が半身と人間ごときの力なんぞに負けん!』
しかしカオスドラゴンがいきなり力を抜かれら用に膝を地面へとついた。
その隙を逃さずにフォグ・ディフィートは、大きな顎を開き一気に飲み込んだ。
カオスドラゴンはそれでも抵抗しようとしているがフォグ・ディフィート内ではより一層力が奪われ姿を保てなくなっていった。
そしてついにカオスドラゴンとフォグ・ディフィートは、一つの体へと戻った。
その瞬間核から排出された優衣香と龍二は生身に戻り、機体の外へと立っていた。
「おわったのか?」
「ええ、終わったみたいね」
見上げるとそこには蒼色の機体に今までなかった黒いラインが入り、背には大きな翼が付いたフォグ・ディフィートが立っていた。
『お主らのおかげでもう一度一つの姿へと戻れた。感謝する』
「気にするなよ! お互いが助け合った結果だ。
『そうだな、そしてここで我らとはお別れだ』
「どうゆうことなの?」
『我が再びあの世界に戻れば、また災厄を振りまいてしまうかもしれぬ。そうならないためにもお主らだけで戻れ』
「そんなことできるわけないだろ!」
「確かに事件が起こったのは事実だわ。でもそれは人間側にも非があること。これからもあなたたちの力は必要なの」
『お主らは我らを許すというのか? 多くの人を傷つけ、消してきたものを』
「許さない。でも災厄をもたらしたのが悪いと思うなら多くの人を助けることもお前のすることじゃないのか?」
「それにはお互いが力を合わせないといけないでしょ。 お互いに非があるのだからこれからは歩み寄っていけばいいわ」
「どうするんだ? まだ俺らだけで帰れというのか?」
『すまなかった。我らがお主らを見くびっていた。 我らもあ後へと戻り、お主らの力になろう』
二人はうなづきカオスドラゴンと一つになったことで二人乗りの操縦席になっていたカオスドラゴンへと再び乗り込む。
フォグ・ディフィートは、大きな翼を広げ蒼い光に向かい飛び立ったのだった。
終




