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083 「ピッタリのコンビだよ」

1000文字前後の短編連作です。


毎週火曜日更新中!

 胸の谷間から取り出したアイテムを物色してブツブツと呟きながら何かを考えているお手伝いさん。

 そんな彼の姿を横目で見ながら、師匠は記憶を掘り返す努力をしていた。


(やっぱりこのクソ野郎は何かある。どーして思い出せねーんだ)


 氷が意匠された愛用のスプーンで後頭部を強打した時、完全に急所をずらされた。疑問を解消するためにとった行動で、反撃を覚悟していたのに文句らしい文句も漏らさずに、とにかくいぬねこを見つけ出して戻ることだけを考えている。

 思えば洞窟で相手をした時も、なんだかんだで体捌きは見事なものだったし、体力も人一倍ある。

 お手伝いさんは明らかに一般人と呼べる域を超越していた。


(アタシも長く生き過ぎたのかね……)


 うまく思い出せないことにイライラして、原因であるお手伝いさんを睨み付ける。そうする事で少しでも思い出せる事があればよかったのだが、真剣にガラクタのような山を漁っては触ってみて、使えそうなものを探している。


「大先生。これは何ですか?」


 お手伝いさんが紐に吊るされた何かを見せて問う。

 パッと見た感じではただの小さな銀色の棒に紐がくっついているように見えるが、よくよく見てみれば筒は空洞になっており、小さな穴もいくつか開いている。


(うわ、またよくわかんねーもんを引っ張り出しやがって)


 ずいぶん昔に作ったことだけは覚えているが、それが何でどう使う物なのかはサッパリ忘れてしまっていた。

 しかしバカ正直に「忘れた」というのは彼女のプライドが許さなかった。こんなでも、世の中の綺麗なところも汚いところも見てきた。まさに雲の上の存在である仙人のごとく。

 物知りで有名な仙人が「忘れた」だの「知らない」だの言うはずがないのだ。


「それは……ネックレスだ」

「え、確かに首にかけられるように紐は付いてますけど……」

「まー待て、みなまで言うな。アタシだって普通の物も作るし、おしゃれだってしたくなるもんさ」


 と適当にそれっぽい事を言って誤魔化しておく。あくまで忘れているという事は隠したい師匠だった。


「……それもそうですよね。じゃあこれはアイテムというよりはアクセサリーか」


 ボヤきつつ、横に置いて山を漁る作業に戻るお手伝いさん。


「そうだ、とりあえずこれ羽織ってください大先生。何もないよりはマシでしょう」


 お手伝いさんが差し出してきたのは、先ほど見つけた正方形の大きな布。電気を流すと硬化するという特殊繊維で作られているものだ。


「テメーは平気なのか?」

「……心配してくれるんですか?」

「バカ、んなんじゃねーよ。テメーに何かあったら弟子がどうなることやら……そっちの方が心配なだけだ」

「ああ……。僕がいなくなったら先生の食生活が偏る事は必至ですもんね」

「そういう事を言ってんじゃねーんだが……別にいいか。どっちも大差ねーし」


 師匠が危惧しているのは、錬金術士の精神面だ。

 子供っぽいところがある彼女は、いつの間にかお手伝いさんが心の支えになっている事に気付いていない。もっと言えば、お手伝いさん本人もその自覚がないだろう。


(噛み合ってんだかすれ違ってんだか……よくわかんねーって意味では、ピッタリのコンビだよテメーらは)


 あきれる思いを抱きながら、記憶を掘り返す努力は片手間に、ひとまず布を羽織って寒さの凌ぐのだった。

次回第84話「誰にそんなこと」


お楽しみに!

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