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特別編14 「勤労感謝の日」

本編は毎週火曜日(明日!)に更新中!

「…………」

「…………」


 いつものアトリエで、いつもらしくない光景が広がっていた。

 今日も今日とて仕事があるにも関わらず、ふわふわな錬金術士は仕事に手をつけていない。別段それは珍しくないのだが、サボっている彼女に文句をつけないお手伝いさんが非常に珍しいのだ。


 かといってお手伝いさんもサボっているわけではなく、せっせと日課となっている掃除を自動操縦じみた動きで行っている。


「…………」


 チラチラと、しっかり者のお手伝いさんの動向を窺う錬金術士。妙に居心地が悪いというか、いつものお手伝いさんらしくないので違和感を感じているのだが、理由の見当がつかない。

 いつも「仕事をしてください」とうるさいのに、今日に限って言ってこない。


「…………」


 視線の矛先をお手伝いさんからパートナーのいぬねこへ移す。

 いぬねこは窓際で日向ぼっこをしていて、いつも通り。視線が合ったのでアイコンタクトで聞いてみるが、いぬねこも知らないらしい。

 そもそもアイコンタクトで通じたのかすら怪しい。


「先生、ちょっと持ち上げててください」

「あ、うん」


 黙って淹れてくれた紅茶を持ち上げている間に、迅速にテーブルが拭かれる。

 いつも通りテキパキと掃除をしてくれている横顔を眺めつつ、やっぱりどこか変だと思う。

 怪訝な表情を浮かべる錬金術士には目もくれず、お手伝いさんは窓拭きへ移行した。


「…………」


 試しにもっとグータラしてみる。紅茶を飲み干し、テーブルからソファーへ。思い切りだらしなく横になって、あくびをかみ殺しつつ、


「くあ〜……ひまだな〜」


 チラッ。


「…………」


 やっぱり何も言ってこない。


『そんなこと言ってないで、暇なら仕事して下さいよ先生!』


 いつもならそう言ってくるであろうお手伝いさんは、窓拭きに夢中だ。しつこい汚れでも付着しているのか、何度も同じところを擦っている。

 もしかして聞こえなかったのだろうか。


「お手伝い君〜?」

「はい、何ですか?」


 聞こえていた。夢中にはなっているが、周りの音が聞こえなくなるくらい集中しているわけではないらしい。


「どうしたんですか?」

「あっ、えっと……おかわりもらえるかな〜?」

「わかりました」


 適当にごまかしつつ、いったん落ち着こうと紅茶を要求。

 別に考え事をしているわけでもなさそうで、いつも通り砂糖たっぷりの紅茶が出てくる。


「はいどうぞ」

「…………」


 味も変わりない。でも何か変だ。お手伝いさんがまったく口煩くちうるさくない。


「今日のお手伝い君ヘン! 気持ち悪い!」

「えぇっ!?」


 とうとうせきが切れ、もんもんとした想いを吐き出す錬金術士。

 突然言われた彼も訳が分からず仰天するしかない。


「こ、紅茶に何か変な物が入ってたんでしょうか……?」

「そうじゃないよ〜! 変なのが入ってるのはお手伝い君の方だよ〜!」

「僕の方ですかっ!?」


 どういう事かサッパリ分からず、しかしショックな事を言われたのは確かでお手伝いさんは膝からくずおれる。


「さっきからどうして何も言ってくれないの〜? ちょっとはかまってよ〜!」


 ただ彼女は同じ毎日がつまらなくて、だから息抜きにお手伝いさんをからかうのに、何の反応も返ってこなくて寂しかったのだ。

 だだをこねる子供のように涙ぐむ錬金術士を見やって、彼は苦笑いを浮かべる。


「いやほら……最近はなんだかんだ言って先生仕事頑張ってるから、今日くらいはお小言なしでいいかなぁと思ったんですよ」


 と、言うことらしい。

 別にお手伝いさんが変なわけではなくて、ちょっとした安息日を提供しようという彼なりの心遣いだったのだ。


「だったらお手伝い君も毎日頑張ってるし、今日くらい仕事しなくていいよ! いつもありがと〜!」

「いいんですか……?」

「もっちろん〜! その代わりひまだから私と遊びなさい〜!」

「結局休めない!?」


 何をしていても、しなくても、一周回っていつも通りの光景に帰ってくるアトリエだった。

ざっくり言うと、いつもお仕事お疲れ様ですと互いに感謝する日、それが勤労感謝の日だそうです。

働き者も、今日くらいは息抜き息抜き〜。

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