009 「手紙」
一話一話が2000字程度の短編連作となっております。一話読むのに三分もあれば充分くらいの文量ですので、何かの休憩などにチラッと読んで落ち着いて頂ければそれだけで書いた意義があるというものです。
週に一話投稿出来ればいいなぁと思ってます。
「まぁまぁ二人とも、その辺にして」
お手伝いさんが仲裁し、落ち着かせる。
「先生、郵便ちゃんから受け取ったのは何ですか?」
「おぉ。そうだったそうだったー」
すっかり忘れていたらしい。
先程テンションが妙に高くなってしまったため、手に握っていたそれをクシャクシャにしてしまっていた。
あーあー、ともったい無さそうに声を上げるお手伝いさんを、まぁまぁ、と先程のお手伝いさんのマネをするかのように手で制する錬金術士。
クシャクシャの紙をしっかり伸ばして、シワを目立たなくした。
「手紙……ですか?」
「そうみたいだねー」
差出人の名前は書いていなかった。
だが書いていなくても、その封蝋を見ればどこから出された手紙なのか一発で分かった。
「これ、王様からだねー」
「王様⁈」
王冠の形をした封蝋。
それは王家の者しか使う事が許されない代物だ。
そんな大事な物をクシャクシャにしてしまったらしい。
奪い取るように手紙を取り、しっかりと確認するお手伝いさん。何度見ても、どこから見ても、どう見ても、王冠の封蝋だ。
確かに、王家からの手紙のようだ。
だがまだ王様からの手紙と決まった訳ではない。
「封蝋を見る限りでは、王家からの手紙で間違い無さそうだけれど、偽物という可能性も捨て切れないのではないかな? 近頃はそういった手口でお金などを騙しとる輩がいるという噂を小耳に挟んだ事があるのでね。用心するに超した事は無いと思うが、いかがかな?」
盗み見るようにお手伝いさんの横から封蝋を確認したいぬねこは、注意を促した。
いつにも増して口数が増えている。
「中身も見てないのに決めつけるのは良くないよー?」
錬金術士の言う通りだ。まだ封蝋を見ただけの段階である。
もしかするとお手伝いさんといぬねこの二人は王家からの手紙というだけでビビっているのかも知れない。
それと比べると錬金術士はいたって冷静に見える。
「とりあえず、ペーパーナイフで中身を切って――」
「封を切ってください先生!」
「はわ! 間違えた! 危ない危ない……」
冷静に見えるだけで、内心では焦りまくっているらしかった。
「君、スプーンで封を切るつもりなのかな?」
「はわわ! また間違えちゃったよー!」
てんてこ舞いの錬金術士だった。