059 「九死に一生」
一話1000字前後の短編連作です。3分あれば読めるかと。
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爆発しなかった。
永遠とも思えてしまうような時間の中、お手伝いさんはアホみたいに身を小さくして固まっていた。
いつまで待っても爆発しない。
まるで爆発するのを待っているかのようになってしまっているが決してそんな事は無くて、本気で爆発すると思って諦めていたのに。
「はれ……?」
そろりそろりと力を緩めて確認してみると、目の前に転がった爆弾には何の変化も無い。
「ちっ、ハズレか。運のいーやっちゃな」
師匠は舌打ちをする。
どうやら爆発しない爆弾もあるらしい。そして爆発するしないを自分で操作する事は出来ないようだ。
ギリギリのところで命拾いしたお手伝いさんは、滝のように出た冷や汗のお陰で頭も冷えて、思考はむしろ冴え渡っているくらい。
命の危機に瀕した事で、お手伝いさんの中にあるスイッチがオンになった。
「やっとやる気になったみてーだな。顔付が変わったぜ」
ニヤリ、と師匠は笑う。
ここまでの一連の流れは、お手伝いさんにやる気を出させるための演技のようなものだった。
爆弾が爆発しなかったのは本当に運が良かっただけだが、結果としてお手伝いさんの本気を引きずり出す事に成功した。
「アタシもテメーも本気になった所で、ルールを追加する」
「……ルール?」
てっきり情け容赦無用のガチバトルかと思っていたお手伝いさんは怪訝な表情を浮かべてしまう。
「勝敗について定義するだけだ。テメーを行動不能にしたらアタシの勝ち。アタシに一撃でも入れたらテメーの勝ち。あるいは負けを認めさせた方の勝ち。勝敗が決するまで外に出る事は出来ない。以上だ、質問は?」
「間接的な一撃でもいいんですか? 石を投げるとか」
「アリだ。アタシが認めれば、だが」
それだけ聞くとお手伝いさんは「分かりました」とルールに了解の意を伝える。
ドーム状の空間に出入り口はたった一つで、そこから出る事は負けを意味する。
半ばやけくそで、お手伝いさんはこの勝負に挑む。
師匠は暇つぶし程度のつもりかもしれないが手を抜く気は無いらしい。
それにこの無茶苦茶な行動の裏には、自分の弟子である錬金術士に相応しい男か確かめるための試験のような意味が含まれている気がしてならないのだ。
だったらこっちだって手を抜くわけにはいかない。
いくら錬金術士の師匠で、腕が立つと言っても所詮は女性。体力にものを言わせれば勝てない勝負じゃない。
手痛い洗礼は受けたが、仕返しも込めてやる気は充分にみなぎってきた。
「行きます!」
「来いや!」
二人の声が、鋭く響く。
次回第60話「バカだなテメーは!」
お楽しみに!




