058 「バトル」
一話1000字前後の短編連作です。3分あれば読めるかと。
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師匠はスプーンをスコップのように使って岩の地面をサクッと掘った。
まるでプリンをすくうように、何の抵抗もなく小さな穴を開けられた地面。スプーンの窪みには掘られた岩が乗っていると思いきや、何とまん丸とした爆弾に変わっていた。
ちょこんと出た導火線にはすでに火が付いている。
「はいぃ⁈」
硬い岩の地面を難なく掘ってしまった事にも驚きだが、掘った岩が爆弾に変わっている事に何よりも驚いた。
「ほらよ」
ゴミでも捨てるような気軽さで、爆弾をお手伝いさんに向かって放った。
「いぃいぃぃ⁈」
いくら何が来てもいいように身構えていたとはいっても、爆弾が来るとは思っていなかった。
いや、確かに強度実験の例えとして爆弾は挙げたが、あくまで例えであったわけで本気じゃなかった。なのに師匠は心を読んだかのような行動をしてきたのだ。
コロコロとお手伝いさんの足元に転がってくる爆弾。シュー……と小さな音を立てて導火線がどんどん短くなっていく。
岩が爆弾になるなんて、どうやったのかカラクリは分からないがこんな爆弾が爆発するはずがない。
「もちろん本物だぜー?」
と、師匠は言う。
爆発するはずはないが、精巧に出来ていると言うか、精妙に出来ていると言うか、妙に生っぽいと言うか。
非常にヤバイと言うか。
絶妙にヤバイと言うか。
絶対にヤバイ。
「くっ!」
とにかく爆弾から距離を取る。
本物だろうが偽物だろうがヤバイもんはヤバイ。偽物だったら騙されただけだ、ああ良かった。本物だったら距離を取っておいて良かった、だ。
どちらにせよここは離れるのが正解だ!
180°ターンして全力ダッシュ。
(動け体!)
師匠の家に向かう過程で自分の体を酷使していたし、たっぷり眠らせてもらったとはいえ部屋の掃除を終えたばかりで少し疲れている。
そんな時にこの仕打ちである。
向こうは暇つぶしのつもりかも知れないが、それに付き合わされるこっちの身にもなって欲しい。たかが暇つぶしで生きるか死ぬかのデスマッチなんてやってられない。
錬金術士やいぬねこが師匠に会う事を渋っていた理由を身に染みて実感している中、油断して出だしが遅れてしまったためか、爆弾との距離を充分に空ける事は出来なかったらしく背後から突然激しい音と衝撃と熱波が襲いかかってきた。窓もない穴倉に音が反響して激しい耳鳴りに襲われる。
この爆弾は本物だ。
師匠は本物の爆弾を平然と人の目の前に投げたんだ。
「グガァッ⁉︎」
軽々と吹き飛ばされてしまったお手伝いさんは顔面から岩の地面に滑り込んだ。師匠が軽々と掘っていたので実は柔らかいとか、せめて要所要所に柔らかい場所があって偶然そこに吹き飛ばされたとかだったら良かったのに、やっぱりガッチガチに硬かった。
コロコロコロ……。
すぐそこで、何かが転がる音が聞こえる。
慌てて顔を上げて確認すると、新たな爆弾がちょうど目の前に転がり込んできた。
どうやら師匠はお手伝いさんの行動を先読みして爆弾を放り投げていたらしい。
(あ、死んだ)
素直にそう思った。
導火線の火も爆弾の中に吸い込まれるように入っていった。
つまりもうすぐ爆発する。
無駄だとは頭で理解しつつも、本能が生きる事を諦めていなかったのか、腕全体を使うようにして頭を覆って小さく縮こまっていた。
目の前にあるわけだし、どうせ死ぬなら一か八かの大勝負で爆発する前に遠くへ投げ捨てるという選択肢もあったはずなのだが、最初の爆発、たった一度の爆発だけで爆弾に対する恐怖心が全身に刻み込まれてしまって、自分の意思ではとっさに動けなかった。
そして。
爆弾が。
大爆発。
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次回第59話「九死に一生」
お楽しみに!




