051 「クソ野郎」
一話1000字程度の短編連作です。3分あれば読めるかと。
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「はっ⁈」
ガバッと起き上がるお手伝いさん。
左頬に謎の痛みを感じつつ、キョロキョロと周りを見てみると、錬金術士が寝ていたあのソファーで横になっていた。
「あ、お手伝い君が起きたー」
「ふぅ……ようやく目が覚めたようだね」
そこには元気そうな錬金術士といぬねこ、そして見知らぬ女性が居た。
見知らぬ女性は肩を出してお腹を出して足まで出して、かなり露出度の高い服を着ているにも関わらず、一見して魔女だと分かるような格好をしていた。
「魔女……?」
どうして魔女がこんな所に? いや、こんな所だからこそ魔女が居るのか?
「いきなりしつれーな奴だなテメーは。それっぽいから魔女風の格好してるだけで、アタシはれっきとした錬金術士だ」
「錬金術士……? って事はもしかして⁈」
「そう、この人が私のお師匠さんなんだよー!」
魔女のように見えるのは見た目だけで、中身は錬金術士の師匠だった。
というか、それっぽいってどんな理由だろう。魔女なんか話に聞いただけで実際に見た事は無いから魔女っぽさというのがあまりよく分からない。
「は、初めまして! ヴィオと言います、よろしくお願いします」
お手伝いさんは錬金術士の師匠に自己紹介をする。
失礼の無いようにするために事前情報が欲しかったのに、早速「失礼な奴」と言われてしまったので何とか失敗を取り戻したいところ。
「おう、テメーの事は弟子から聞いた。助けてもらったお礼に仕事手伝ってんだってな」
眉目麗しい女性から発せられる言葉とはとても思えない口調である。
「はい。手伝っているのは主に雑務ですが」
「ほっほーう? じゃあせっかく来たんだ、テメーみたいなクソ野郎にはここでも雑務をやってもらおうかね」
「お師匠さん、クソ野郎じゃなくてお手伝い君だよー?」
「うっさいな弟子。黙ってろ弟子。コイツはクソ野郎で充分なんだよ」
どうしてか師匠はご機嫌斜めな様子。斜めというよりは、むしろ直滑降とすら言える気が。
錬金術士の師匠なんだから、もっと錬金術士に似ていてふわふわぽわわーんな人を想像していただけに想像と現実の落差が激しすぎて戸惑いを隠せない。
「クソ野郎にはとりあえず、掃除からやってもらおうか」
「そ、掃除……ですか」
この全体的に騒然とした部屋を一人で何とかしろというのだろうか。いくらお手伝いさんが毎日のように掃除していると言っても、錬金術士の家はもともとそれなりに綺麗だったので苦労はなかった。
(これは骨が折れそうだ……)
せめて誰か一人でも手伝ってくれれば話は別だと思うのだが。
「じゃあここはクソ野郎に任せて弟子とクソダヌキはついてきな」
と言うと師匠は錬金術士といぬねこを連れて奥の部屋へと行ってしまった。
結局、部屋の掃除は一人でやる羽目になるお手伝いさんだった。
次回第52話「お掃除は大変」
お楽しみに!




