特別編24 「メイドの日」
一話1000字前後の短編連作です。
本編は毎週火曜日更新中!
「ごほーしします!」
「はい?」
錬金術士がまた突拍子も無い事を言い出した。
ご奉仕します? 先生が? ……ハッ。
お手伝いさんは心の中で、鼻で笑った。笑い飛ばした。
「だから〜、今日は私がごほーしするの〜!」
「そうは言ってもですね先生……じゃあ具体的に何をするんですか?」
この際ハッキリと言わせてもらうが、伝説の錬金術士と言われている彼女でも、こと錬金術以外においてはてんでダメだ。ダメダメだ。
そんな人が他人にご奉仕など、できるはずがない。
「お手伝い君のお世話です!」
「僕ペット扱いですか……?」
お世話という意味ではむしろお手伝いさんが錬金術士を世話している。もちろんペットという意味ではない。
しかし普段の役割を逆転させれば、いちおう錬金術士がやりたいこともできるだろう。
そもそも彼女が何かを言い出したら、本人が納得するまでやらせないと終わらないので、お手伝いさんは早々に諦めのため息を漏らした。
「じゃあ、先生の『ごほーし』とやらを見せてもらいましょうか」
「いいでしょう! まずはこれだよ〜! じゃじゃ〜んっ!」
自前の効果音とともにふわふわな白衣のポケットから取り出したのは、ねじって小さくなった輪っかに布が絡みついた謎のアイテム。
「それは?」
「ふふ〜ん……ま〜見てて」
ニヤリと笑うと、錬金術士は小さくまとまっていたそれを宙に放り投げた。輪っかがバッと広がり、大きなリングに。布はリングを一周するカーテンだった。
リングの直径は1mほど。カーテンの長さは1.5mほどで、錬金術士の体がリングとカーテンの内側にあり、首から上しか見ることができない。
「せ〜のっ――」
合図とともに床に落ちるリング。
「えっ?!」
目にした光景に思わず驚愕の声を上げてしまった。
現れた錬金術士の格好が、ふわふわの白衣からひらひらのメイド服へと一瞬のうちに変貌していたのだ。
まるで、白と黒の舞踏会。
動くたびにゆらめくフリルと、広がる短いスカート。白いニーソックスとスカートの間から覗くわずかな肌色は艶めいて、露出した肩もなまめかしい。
(カーテンの中で着替えていた? でも少なくとも片手はリングを持っていなければいけないから残りの片手で着替えることになる。でもでも仮に両手を使えたとしてもここまで早く着替えるなんて――、)
お手伝いさんの頭の中は一気にパニック状態に。
「ごしゅじんさま〜? 眉間にしわが寄ってますよ〜?」
お手伝いさんの眉間を人差し指でぐりぐりするが、彼は帰ってこない。
「肩が凝ってますね〜。揉んであげましょう〜」
言うほど凝っていなかった肩を揉んでも、帰ってこない。
「少し熱があるようですね〜。冷ましましょう〜」
額に手を当てると結構熱かったので、バケツで水をぶっかけたが、帰ってこない。
――はずもなく。
「つっめたぁっ?! いきなり何するんですか?!」
「だってお手伝い君反応ないんだもん〜……」
「すみません、見とれちゃんって――」
「え……?」
「――じゃなくて、驚いてしまって! どうなってるんですかそれ! さっきの!」
慌てて本音を誤魔化して、床に落ちているリングを指差す。
「すごいでしょ〜? 早着替えできるアイテムを作ってみたの〜。仕組みは秘密♪」
可愛らしくウインクして見せるが、彼女は一つのミスを犯していた。
「秘密ですかそうですかわかりましたそれについては言及しないことにしましょう。――じゃ、水浸しになった床の掃除をお願いしますねメイドさん。ご奉仕してくれるんでしょう?」
「しまった〜……!」
頭を抱えて失態を嘆く錬金術士。
色々と見ていられなかったので、結局二人で片付けたのだった。
短いスカートで四つん這いされた日にゃ見ていられないでしょうな。手際も悪いでしょう。ドジっ子メイド……王道で実によろしい!
でも「ドジっ子がよくメイドになれたな。試験とかどうなってん?」とか思っちゃうのは自分だけでしょうか?




