特別編15 「メリークリスマス!2年目」
1000字前後の短編連作です。
本編は毎週火曜日更新中!
「ね〜ね〜お手伝い君起きて! 起きてってば〜!」
「ん、うぅ〜……」
地震のような浮遊感の感じられる揺れに目を開けてみれば、ふわふわもこもこに身を包んだ錬金術士が顔を覗き込ませながら体を揺さぶっていた。
窓の外は空が白み始める程度の暗さで、明らかに日も昇りきっていない早朝。
「なんですか……こんな早くに……」
しかたなく身を起こし、眠気眼をこする。
普段は錬金術士の朝食を用意するために彼女より早く起床するが、今日に限っては興奮して寝付けなかったのかもしれない。
「クリスマスなら逃げたりしませんから、もう少し寝かせてください……」
「逃げないからって向こうから来てくれるとは限らないでしょ〜! こっちから会いに行くの! 支度して〜!」
「会いに行くって……」
支度しろと言われても、何をどう支度すればいいのやら。クリスマスは行事であって、会いに行けるようなものではない。
よくよく見てみれば、錬金術士が着ているふわふわもこもこは外着だ。どうやら外に出ようと言うらしい。
「おりゃ〜!」
「いぃひぃ?! 寒い!」
突然お手伝いさんの毛布をひっぺがし、布団の中の暖まっていた空気が一気に冷えて、冷たい外気がお手伝いさんの体を包み込む。
剥がされた布団の中には、ちゃっかり犬にも猫にも見える動物、いぬねこも身を丸めて眠っていたが、そんなことはお構いなし。
瞬く間に身震いを起こし始める体に鞭打って、しかたなく、本当にしかたなく起床する。
いつものコートを着込んで、その冷たさに改めて身震いしながらも、多少はマシになる。
「ほらお手伝い君、早く早く〜!」
「分かりましたからそんな引っ張らなくても!」
錬金術士に強引に手を引かれて玄関を飛び出す。その手はとても暖かかった。
「ほらほら見てみて! すごくない〜!?」
「うわぁ……!」
目の前に広がる光景に、開いた口がふさがらない。
お手伝いさんを出迎えてくれたのは、朝焼けに眩しく映る一面の銀世界。
いつもの見慣れた草原が、雪原に美しく変貌を遂げていた。
「雪だ! 一面が雪化粧してるじゃないですか!」
「すごいでしょ〜? お手伝い君と、この景色の朝焼けを見てみたくなって」
「それで妙に急いでたんですか」
起こされた時は何事かと思ったが、確かにこの景色は素晴らしい。共有したくもなるというものだ。
「ね〜ね〜、『せ〜の』で今やりたいこと言わない?」
「……分かりました、いいですよ」
「よ〜し! じゃあ……せ〜のっ——」
正直なところ寒いし「部屋に戻って寝直したい」と言いたいが、きっと錬金術士ならこう言うだろう。
「「——かまくら作りたい!」」
ピシャリと揃う一声。
食い意地の張った彼女のことだ、これくらい予想するのは容易いこと。
「お鍋でも用意しておきますか」
「そこまで読まれてたか〜」
照れ臭そうにはにかむ錬金術士。
協力して作ったかまくらで食べるお鍋は、また格別の美味さだった。




