第10話後編『一つの結末』
「・・・ふふ《私》も100人ばかり消し飛んだか」
統治は再び一人になると、底が見えないほど穴のあいた地面の穴を眺めた。
「この威力・・・ふふふ、世界をも一日で滅ぼすことができるな」
当然ながら、ここまでに力を使った事は今までなかった。
思った以上の自分の力に、統治は歓喜から震えた。
「・・・統治」
声がした。この状態で生きていられる人間などいないはずだ。
ただでさえここは爆心地だ。普通の人間が存在するはずはない。
「パイルマニア・・・そうか、キサマは炎の超人だったな」
「ああ、吸収してむしろパワーアップしたよ」
パイルマニアは統治の横に並ぶと、地面にあいた巨大な闇を見据えた。
「・・・俺が燃やすもん・・・なくなっちまったな」
パイルマニアがつぶやく。
「街なぞまだいくらでもある。これから好きなだけ燃やすがいい」
統治はそう言うと、元の人間体に戻った。
「・・・わかってねぇよな」
「ん?」
「本当、分かってないよあんたは」
パイルマニアは統治の両肩に自分の手を置いた。
「お、おい」
「何もかも吹き飛ばしやがって・・・くそやろう」
ぼっ。統治の体が発火した。
「なっ!? ぎゃああああっ、きざ、キサマ・・・」
「やっぱ人間に戻る時にやるのが一番楽だな」
パイルマニアが統治を抱きしめると、統治の体は灰になって潰れた。
「バカやろう・・・全部灰にしちまいやがって」
パイルマニアの目から涙が溢れたが、すぐに蒸発した。
「本当は、この街を愛してたんだもんな」
声が聞こえた。
「愛していた、燃やしたいほど愛していた」
見知らぬ青年がパイルマニアの横に、いつの間にか立っていた。
赤い髪、鋭い目をした青年。
「・・・なんだお前は?」
「俺は奈月円…とんでもない事になったなぁ」
円は辺りを見回し、人事のように言う。
「もし・・・」
ちらりとパイルマニアを見る。
「もしこの状況が少し前からリセットできるとしたら、お前は止められるだろうか?」
「何・・・?」
円の言葉が理解できない。
「時間が少しだけ戻ったら、お前はこの結末を変える事が出来るか?
もしもの話だよ。どうする?」
「やるさ。俺はこんな結末の為に超人になったんじゃねぇ」
円はその返答に笑みを作る。
「それじゃあ、頼むわ」
奈月円がそう言うと、世界が消滅した。