1 キラキラなはじめまして 【side:アシュー】
「こんにちは、私はシャラフィーヤ・サフィンクスと申します。」
紹介したい子が居ると7歳の時に引き合わされた男の子は俺より2歳上の9歳で、…ほんっっっとうに綺麗な子だった!!
金色の髪に青い瞳、双子の妹が好きな絵本に出てくる王子様みたいだ。
この場に妹がいたら、はしゃいでいただろう。
あいにく風邪を引いて来られなかったが…
7歳の俺は双子の妹とそっくりで、クセの無い艶のある青い髪は胸元まで伸ばしてポニーテールにしている。金色の瞳はまん丸で大きく、猫のようにちょっとつり上がっている。
着る服によっては女の子にしか見えないが、今は紺のスーツ、短パンを履いてどこからどうみても男で妹と間違われる事は無い。
「は、はじめまして…僕はアシュー!アシュー・ロイノードルと申します!」
童話の王子様みたいにかっこいい相手に緊張しながら挨拶をすれば、少し間があった後シャラフィーヤは優しく微笑んだ。
「……よろしくね、アシュー」
「…〜〜〜っ!!!」
ニコッと微笑む姿はもっともっと可愛くて綺麗で…それは見た目だけじゃない。
魔力、オーラ、雰囲気、所作、声色、魂、目には見えず言葉には出来ない何かもとても綺麗で、キラキラした物が大好きな俺は興奮しっぱなしだった。
言わずもがな一目惚れをした。
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初日は会えなかった双子の妹にも、数日後にシャラフィーヤを紹介した。
もしも、シャラフィーヤがミシューを好きになったらどうしよう…と不安で会わせたくは無かったが、シャラフィーヤとは結構な頻度でお互いの屋敷で遊んでいたから、双子の妹にいつまでも会わせないなんて事は無理で…庭でばったり出会った時に紹介した。
だがミシューは初日だけ「ほんと!王子様みたいにかっこいいわね!」とはしゃいだが、二回目以降は普通だった。
シャラフィーヤも特にミシューに恋した雰囲気は無い。
「???」
ミシューと俺は好みまでそっくりだから驚いた。
ミシューも絶対シャラフィーヤを好きになると思っていたのに…。
おやつの時間に聞いてみたら、ミシューはつまらなそうに口角を下げ
「確かに王子様みたいにかっこいいけれど、私にはアシューのキラキラが見えないし、分からなかったわ。私からしたらただの腹黒イケメンよ」
「腹黒???え、どこが???」
俺が首を傾げると、ミシューは呆れたため息を零していた。
後に、俺はこのキラキラについてこう考えた。
よく、恋をすると世界が輝いて見えるというが、そんな感じで俺もシャラフィーヤに一瞬で恋に落ちたから、キラキラして見えたんだと思う。
とりあえず、妹と争わずに済んで良かった。
産まれる前から一緒である片割れのミシューはシャラフィーヤとはまた違った特別な存在だ。
大切で大好きでお互いの事はよく知っている。
配慮や遠慮はなく、ありのままを見せて本心を語り合える。
………だからこそ、喧嘩も遠慮ないのだが。
騎士の剣を奪い、真剣でやり合った時は周りも手が出せずに二人小さな切傷を作りまくり、母親は卒倒した。
父親が慌てて帰宅し、止めに入ってようやくおさまったが、めちゃくちゃ怒られたな…。
もし好きな人の取り合いになったら剣だけではすまないだろう。
(…………)
本当に良かった!
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それから頻繁に会う機会が設けられ、俺はシャラフィーヤに会う度に大好きな気持ちが増え続けた。
だって…シャラフィーヤが…俺をとても甘やかすんだ…。
帰る時間が近づけば悲しくて、「もっと一緒に居たい」と涙目で言えば、「じゃぁかくれんぼしよっか」と両親や使用人達から隠れ、帰る時間を引き伸ばしてくれる。
いつからかそれが帰る前の恒例となっていた。
使用人や両親は大変だっただろうが、俺は彼と二人きりになって隠れる時間はとても楽しかった。
今ではいい思い出だ。
苦手な食べ物があると代わりに食べてくれて、好きな食べ物は分けてくれる。
こまめに手紙や贈り物をくれて、風邪を引けば必ず看病に来てくれた。
たまに人目をすり抜けて俺が一人になった隙に無理矢理どこかへ連れていこうとする変な輩が現れたら、シャラフィーヤが必ず助けてくれて、安心できるまでそばに居てくれて、
剣術や座学が思ったように伸びず、もどかしくて泣いた時は、泣き止むまで慰めてくれた。
そして、
「シューが好きなようにしていいんだよ」
って、甘い言葉をよく言ってくるんだ…
自由に生きていいなんて、貴族としてはダメだと分かっているが……
貴族のマナーやしきたり、伝統、務め、堅苦しい世界の中で、シャラフィーヤのその言葉に何度も助けられ、狭くなりそうになる自分の世界を広げてもらった。
そんな優しくて素敵な人なのだ。
好きな気持ちが止まるはずがない!
いつからか、
シャラフィーヤを"フィー"
俺の名前、アシューを"シュー"
とお互いだけが呼ぶ愛称で呼び合うくらいシャラフィーヤとは一番の仲良しになった。
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シャラフィーヤと出会ってから半年ぐらい経った頃、俺は両親に
「フィーと結婚したい!!フィーと婚約する!!」
と、毎日しつこく駄々をこね続けた。
そして出会って一年後の8歳の時に念願叶い婚約する事が出来た!!
元々二人が相性良さそうなら婚約させるつもりで会わせていたらしいので、あっさりOK。
それならそうと早く言ってくれれば、床に転げ回って駄々をこねるなんてあんな醜態見せる必要なかったのに……。
でも、大好きなシャラフィーヤの特別な存在になれたからヨシとしよう。
この国では同性でも子を成す事が出来る魔法薬が開発された50年前から同性婚が可能になった。
だが、いきなりそうなっても世間の目がありなかなか同性で結婚する者は現れなかった為、まずは貴族が同性婚を行い、民衆に周知させ同性婚が当たり前な雰囲気を少しずつ作り上げていき今に至る。
そういう理由から貴族の同性婚は忌避される事なくむしろ推奨されている。
俺が婚約した8歳くらいの時には、昔は同性婚が無かったと言われる方がビックリなくらい、普通の話になっていた。
50年前、同性婚を可能にし“普通”と認識されるほどの世の中にしてくれた先人達にはとても感謝している。




