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美醜が逆転した世界で、俺は美女のヒモになる  作者: だれか
1章レイナ・ラーヴァンテ

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2.ギルド(改稿後)


 宿に案内された後、俺は一日休んだ。疲労もある程度抜けたところで、これからのことを考えることにした。


 どうやって生活していくか――それも重要だが、やはり気になるのは、俺をこの世界へ呼び出したであろう“紙”の持ち主の意図だ。


 何も理由がなければ、わざわざ呼び出すはずがない。何かを成してほしいから呼んだのだろう。


 しかし、あの紙には具体的な目的は書かれていなかった。


 ならば、これから何をするかは自分で決めるしかない。


 生活だけならどうにでもなる。補助金もあるし、仕事も選ばなければいくらでもあるだろう。


 確認したところ、大銀貨一枚は日本円にしておよそ十万円ほどの価値があるらしい。宿代は補助で賄われるため、最低限の生活には困らない。


 だが、将来を考えるなら、何らかの仕事に就くべきだろう。


 どうせなら、この世界ならではの仕事がいい。


 ――昨日、冒険者という職業があることを聞いた。


 冒険者ギルドを通して依頼を受け、魔物を討伐する仕事だという。


 前の世界で運動らしい運動もしてこなかった俺に務まるかは分からないが、それでも興味はある。


 強い魔物は無理でも、簡単な依頼ならこなせるかもしれない。


それに――何より重要なのは、この世界の特異性だ。


 街を歩く人間は、今のところすべて女性だった。


 しかも、その容姿はどれもお世辞にも整っているとは言い難い。


 つまり――不細工ばかりだ。


 もしかすると、この世界は男性が少ないだけでなく、美醜の基準すら逆転しているのではないか。


 そう考えた理由はもう一つある。


 堂々と顔を晒して歩く女性たちの一方で、仮面や布で顔を隠し、こそこそと歩く者もいたのだ。


 もし彼女たちが、こちらの世界の基準で美人なのだとしたら――筋は通る。


 今度、仮面の女性を見かけたら確かめてみるか。


 ――もし美醜が逆転しているのだとしたら。


 俺の人生は大きく変わるかもしれない。


 俺は自分でも相当な不細工だと自覚している。だが、それが逆転するなら――。


 ……モテる人生が始まるかもしれない。


 ……いや、さすがにあの憲兵のような見た目は遠慮したいが。


 そんな都合のいいことばかりを考えつつも、結局は現実を受け入れるしかない。


 とりあえず今日は、冒険者ギルドへ向かうことにした。





「少しいいだろうか」


「はい、なんでしょう……え、男性?」


 憲兵に聞いた場所を頼りに辿り着いた冒険者ギルドは、外観も中も、想像通りといった雰囲気だった。


 中にはいかにも荒くれ者といった空気が漂い、受付には女性が座っている。


 ただし――その場にいる者は全員、女性だった。


 そして、見た目もまた例外なく……お世辞にも整っているとは言い難い。


 特に受付嬢は酷い。


 昨日案内してくれた憲兵よりも、さらに見た目が厳しい。


 やはり――この世界は美醜が逆転しているのかもしれない。


 そんなことを考えながら、比較的“マシ”に見える受付嬢へ声をかけた。


 最初は笑顔で対応していた彼女も、俺が男だと気づいた瞬間、憲兵と同じように驚く。


「この通り男なんだけど、冒険者登録って出来る?」


「はい、それは可能ですが……え、冒険者になるんですか?」


 やはり、男性が冒険者になるのは珍しいらしい。


「出来るならお願いするよ」


「……かしこまりました。登録の前に、能力値を測定させていただきますが、よろしいですか?」


「能力値?」


「はい。戦闘に関する能力です。それを測定しないと登録できませんので……」


「分かった。測ってくれ」


「ありがとうございます。では、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「あぁ……」


 しまった。名前を考えていなかった。


 本名でもいいが――せっかくなら、新しい人生として名前を変えてもいい。


「……シュナイダーで」


「シュナイダーさんですね。少々お待ちください」


 あっさり受け入れられた。


 偽名でも問題ないのか、それとも深く気にされないのか……。


 どちらにせよ、都合はいい。


 それにしても、能力値の測定とは何だろう。


 科学技術は発展していなさそうだが、代わりに魔法的な技術があるのだろうか。


「準備が整いました。こちらに指をお入れください」


「分かった」


 差し出されたのは、拳より少し大きな半球状の装置だった。


 言われるままに指を入れると、チクリと軽い痛みが走る。


 ――血を採取しているのか。


「完了しました」


「能力値は……?」


 自然と緊張が走る。


 異世界ならではの“何か”を期待していたが――。


「……F−です」


「……それは、どのくらいなんだ?」


「……最も低い評価になります」


 想像以上に、はっきりとした最底辺。


 まあ、運動もろくにしてこなかった人間が、いきなり高評価なわけがない。


 それでも――どこかで、少しは期待していた。


 だが現実は、そう甘くない。


「F−でも登録は出来るのか?」


「はい。ただし、討伐系の依頼は受けられません。主に採取や雑務が中心になります」


「討伐は無理か……」


 冒険者としての花形には手が届かない。


 だが、仕方がない。


 まずは鍛えるしかない。


「あの……そもそも男性の方なら、討伐依頼を受ける必要はないのでは?」


「……どういう意味だ?」


「男性は補助金もありますし、女性に守られて家で過ごすのが一般的です」


「……そうなのか」


 やはり、この世界では男性の立場が特殊らしい。


 ならば――それも一つの生き方なのかもしれない。


「それに、貴方は見た目も良いですし、モテると思いますよ。……よければ、私が養ってあげてもいいですが」


「え? いや……それはちょっと」


 思わず言葉に詰まる。


 ありがたい申し出ではあるが――この見た目の彼女と一緒に生活するのは、正直、遠慮したい。


 どう断るか考えていると――


「なんだい。あんた、男のくせに討伐依頼を受けたいのかい?」


 横から、低く威圧的な声が割り込んできた。


 振り向くと、そこにはギルド内で最も厳つい外見の冒険者が立っていた。


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