35 ブルーライトニング
再開を喜び合うMDSの隊員たちが皮肉交じりの軽口を叩きながらも、互いの無事を喜んでいる。
「隊長~! 遅いよ~!」
一瞬包帯だらけの姿に皆が驚いたが思った以上に元気そうなため、夏恋は半泣きしながら無事を喜んでいる。
「亜麻色と文ちゃんも無事でよかった」
雪乃はほっとしたのか文ぎゅっと抱きしめているが、パトリックの熱烈ラブコールには容赦なく肘内を喰らわせていた。
「兄貴、墜落したって話聞いた時は驚きましたよ!」
「あれは米軍に出してもらったフェイク情報だ。そのほうがお前たちも動きやすいと思ってな」
「やっぱりそうだったか宗像……その雪乃、夏恋、お前たちに話しておきたいことがある」
周囲の邪妖は片付いているため、少しは話す時間はとれそうではあるが……
「半妖殲滅作戦 あの42号作戦の作戦立案と現場指揮を担当したのが、現 霊異庁長官 真喜志 忠信 だ」
「やっぱりそうだったのね!」
「もしかしてお父さんは……」
夏恋に頭を下げながら猪鹿倉は言葉を繋ぐ。
「君のお父さんは俺と一緒に半妖たちを守ろうと命がけで戦ってくれた友人だ。すまなかった、俺だけが生き残っちまいやがった」
「そうだったんだ。お父さんらしいな……」
そのまま声を殺して夏恋は雪乃に抱きついて泣いた。
「一族を殺したあいつを許さない! 仇はとるからねみんな!」
「影海よ、お前も半妖守ろうとして内部粛清されそうになってたな。それを宗像に救われたんだった」
「おっさん、そんなこといいんだよ。それよりおい、顔色が真っ青だぞ」
「俺の事はいい、少し負傷しただけだ」
すぐに部下が駆けつけ手当を始めるが、赤マントの鎌で腹部を裂かれていたらしく出血が激しい。
「恐らく霊異庁内部には相当強力な邪妖共が待ち受けているはずだ、頼む! 俺の替わりに奴を! 真喜志を! てめえらになら…譲って、うっ」
出血多量により意識がかすみ始めているようだ。
「安心しろ猪鹿倉、お前はちゃんと手当受けて休め。この現場は俺たちMDSが預かった」
「そ、そうか。そりゃあ世界で一番信用できる……約束だ」
猪鹿倉や負傷者を搬送する間、糺華の状態と作戦目標が告げれられる。
「では! ぼくらかーら、雪乃さんと 糺華さーん、そして隊長に新装備あげるちゃうネ!」
パトリックと仙葉は雪乃と糺華、宗像の3人を黒助へと連れてきた。
「愛しい愛しいマイスイートハニー雪乃さんに私からのプレゼントでーす!」
「おい、いつぞやみたいにスケスケ下着だったらこの場で永久氷結にしてやるわよ?」
「そ、そんなこともうしませーん! はいこのケースを開けてみてくださーい!」
宗像と糺華も微妙な顔をしているが、予想外の物が現れた。
何やら拳と手首をガードする金属製の篭手にも見えるが形状的に違和感がある。
「これは雪乃さんの氷結能力を注ぐことで、いわゆる氷の剣を構成できる補助デバイスなんだヨ!」
見かねた仙葉がつけるように促す。
採寸したわけでもないのにぴったりはまるあたりに雪乃は微妙な表情をしているが、付け心地は悪くないようだ。
軽く冷気を込めてみると、瞬間的に氷のブレードが展開されている。
しかも転がっていた事務机をいともたやすく切り裂いてしまう。
「分子構造を調整し単分子カッターに似た性質にしてあるので、切れ味も抜群ですよ 装備名は一応、” ケルヴィンブレード” です」
「これすごいわ、仙葉さんありがとう! ケルヴィンブレードか中々いいじゃない」
「ぼ、ぼくがツクッタンダケドナー」
「パトリックもありがとう」
「え? うおやったー!」
宗像は用意してあった専用近接補助アーマーのついたMDS戦闘服に着替え始めている。
皆も弾薬補充や水分摂取、気合のノリも十分だった。
「そしてレイカさーん! とうとう完成したのでもってきたのですよお!!」
「でも私、瘴気の影響でまだ阿修羅姫化ができないんだ」
「むしろそういう時に必要な装備なのです! じゃじゃーん!」
大型銃器並のケースに入っていたのは武骨な……
「ん? なにこれ? 車の部品?」
そう糺華が言うのも無理はなかった。
「おいパトリック、これってもしかしてパイルバンカーか!?」
「そのとーりー! ひげそーりー!」
糺華が手にしてみると、今の筋力でも使えそうな大型の篭手に見えた。
「特殊加工のチタン製 Mg弾核で構成された 大型の杭 パイルを霊力と火薬で撃ち出す退魔兵器です」
仙葉の説明を受けたが頭に? の浮かんでいる糺華。
「ようは、これで敵を打ち抜けってことでしょ?」
「そのとーりー! うまのーりー!」
ケースに入っていたのは20本ほどのパイルが収納された弾帯と腰ベルト装着型の予備弾倉だ。
使い方の指導を受けているが、戦闘センスの塊である糺華はこういうことへの理解が異常に早い。
武骨なパイルバンカーも糺華に装備されれば逆に華麗に見えてしまうのが不思議だ。
オートでパイルのリロードと薬莢排出を行う糺華向けの機構になっており、拳で握れるようなトリガーも操作しやすくカスタマイズされていた。
さすがパトリックの作と言える。
宗像へ手渡された銃の大きさと機械的機能美、漂う凶悪さに皆が若干引き気味なほどであった。
「モデルとなった銃はデザートイーグルではありますが、最終的に全く別物の銃となったよー!」
たしかに銃のデザインは武骨で大きく、サブユニットがついているためもあって、デザートイーグルらしきフォルムの面影が残っていない。
”
まずマグナム弾って言われてる50AE弾ではなく、50Mg弾の製造を一部特許譲渡を条件に依頼しましたですよ。
そしてその内部機構! デザートイーグルがガス圧式のシステムを採用していますが、この銃は根本からその設計思想が異なっていますネ。
使用者の霊力を注入し、オーラポンプアクションを実装し反動軽減に成功したのでーす!
霊力が消費されますが、一撃で仕留めたい大型邪妖などには非常に効果的なったです! 小型霊子力モーター採用で霊力使用による出力の
ばらつきを解決しちゃったヨ! もはや霊力銃というレベルあるね。
オーラコーティングが施された弾頭へさらにMg弾核を仕込み、通常火薬だけではなく発射エネルギーに霊力のオーラススパーク現象を利用するため、まさにおとーさん、いえ隊長向きのオンリーワン! になったネ。
総弾数7発、弾倉は3つ つまり21発までしか用意できていませんね。ですが邪妖相手であれば、AS50並かそれ以上の威力を出すことが可能となったよ!
”
宗像が手にデザートイーグル オーラコーティングカスタムを手に取ると、不思議な現象が起こった。
霊力が銃内の霊力構造を循環し、霊子力モーターに到達すると青白い霊力光が染み出してくるのだ。
「す、すごく綺麗。蒼い雷みたい」
「すごいでーす! 僕にも見えるほどに濃い密度の霊力光が放電のように揺らめいていまーす……思いつきました!」
パトリックは声高らかに叫ぶ。
< ブルーライトニング! >
実際のところ、宗像の心象は最高に紅潮していた。奴に届く武器を手にすることを目指していたからだ。
「パーフェクトだ うぉ……パトリック・ウォーレン!」
手に染み込む重さと霊力フィードバックの心地が最高だった。
パトリックに対する怒りも吹き飛び、構えた際の手応えも銃口の先にまで神経が通っているかのような感覚
まるで自分の腕が延長したような気分に、沸き起こる笑みを隠しきれず口角が上がっている気がした。
そのような思いを抑え込み、冷静なふりをした宗像は腰に専用ホルスターを装着すると、大事そうに専用弾倉と共にブルーライトニング収納したのだ。
ここに準備が整った。
糺華は静子さんが作った切り干し大根を食べ、かなり元気が出てきているようだし、いける! という思いが宗像に溢れてきている。
退魔装備考えるのって楽しいですね。
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