1話 ススム、忘れられた村に降り立つ。
不定期連載ですので、気分次第で上げていきます。
「ここが…アヴァロン?」
目の前には石の壁と家が見える。しかし、家は疎らで町と言うよりも寂れた村と言った感じだ。
それに…。
「よく見ると、道もなんだか…」
舗装されているとは思っていなかったとはいえ、道と言うにはあまりにも無造作に生えた雑草のせいで分かり辛い。まるで、何年も人が通ってないような感じだ。
「しょうがありませんよ。ここは」『忘れられた村』ですから」
「…『忘れられた村』?――って、君は誰?妖精?」
「ススム様をサポートするように神様に遣わされた者です。一応、この世界で通用する姿となっております。あ、名前はススム様がお付けください」
「神様も結構、過保護だな。でも、ありがたく受け取るけどね。それで、どんなサポートをしてくれるの?」
「この世界の常識や生態系の智識などありとあらゆることでサポートさせてもらいます」
「なるほど…ナビゲーターみたいなものか。じゃあ…名前は『ナビ子さん』でどうかな?」
「…ススム様。センス、ありませんね」
「放っといてくれ。で、ナビ子さん。『忘れられた村』って何?」
「あくまで、『ナビ子さん』ですか。まあ、いいです。で、村のことですが…ここは、この辺りを統治する『リガルティア王国』の中でも最果てにある村なんです。ここを任されていた領主が流行り病で死に、引き継いだ新領主が何故かこの村のことを知らされぬまま数十年が経ち…そのまま忘れ去られてしまったのです」
「そうなんだ。と言うか…ここに住んでいる人いないんじゃないか?」
「…どうやら、無人のようですね」
「本当に人がいないのか?なんで神様はこんな場所に俺を寄こしたんだ?」
「多分ですが…スキルのせいかと思われます」
「スキルって…この『農業スキル』のこと?」
「そうですね」
そう…俺は農業の神を選んだのだ。
だってさ…めっちゃ沈んでたから…どうにかしたいって思うじゃん。
人(神)助けスイッチが入った俺は迷わず農業の神でファシル様を選んでいたのだ。
「神が与えるスキルは『農耕スキル』や『酪農スキル』など限定的なスキルが普通なのですが…ファシル様、選んでもらえたことがよほど嬉しかったらしく…神が使うスキルを与えてしまったんですよ」
「…え?農業スキルって神様が使うスキルなの?」
「そうなります。農業スキルは農業関係の全てを司るスキルなんですよ」
「それって…色んな意味で大丈夫なんですかね?」
「まあ…創造神様からも了承されましたから一応は大丈夫だと思うんですが…とにかく村の様子の確認をなされてはどうですか?」
「まあ…それもそうか」
太陽の傾きからまだ午前中だということは分かったので、ざっと村の中を探索する。家は10軒ほどしかない。井戸も枯れており、農地だった場所も荒れて使い物にならない。村を守る石壁も所々が崩れていた。
…むぅ。使えそうな建物が無いなぁ。みんな所々穴が開いたり半壊している。直そうにも材料も大工の心得もない。人が生きていくための『衣・食・住』がここには全く無いことになった。
「なあ…いくら農業スキルがあってもこれじゃあ…」
「まずは、ステータスの確認をしましょう」
「ステータスってゲームのまんまじゃん」
「この世界ではステータスは普通仕様なんですよ」
「創造神様、ゲームに影響され過ぎだなぁ…」
「とりあえず、『ステータス確認』と言ってみてください」
「『ステータス確認』」
おっ。目の前にタブレットくらいの画面が出てきた。そこには俺のことが書かれていた。
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『ススム・アズミ』 23歳 セントヒューマン(聖人) 異世界からの訪問者
LV:1
HP:1007
MP:1009
EP:1003
ちから:782
たいりょく:842
すばやさ:690
ちのう:773
こううん:10000
肉体強化 極大幸運 超豊穣
農業スキル(LV:1)
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「…なあ、ナビ子さんや」
「何でしょうか?」
「この世界では、レベル1のステータスでHPが1000超えってあるんですかね?」
「…ありえませんね。普通は2桁ですよ」
「…だよね。何で俺のはこんな桁外れに?」
「創造神様が簡単に死なれたら困ると…それで、普通の人間枠からちょっとはみ出したと…」
「それで『聖人』っておかしいよね。もうツッコミどころだらけだよ」
「とりあえず、農業スキルをタップしてください」
とりあえず言われた通りタップすると画面が切り替わった。
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農業スキル…農業に関する知識を持ち、『生産物』を作って糧を得ることが出来る。農地を広げることや生産物を作ることでスキルポイントを得る。スキルポイントで『商品』を購入してよりよい生活をしましょう。
農業商店 スキルポイント:100000000
農業用具
肥料
飼育用具
食物の種
植物の種
動物の種
飲み物の種
調味料の種
香辛料の種
加工食品の種
油の種
武具の種
薬品の種
服飾の種
建物の種
家具の種
生活用具の種
魔道具の種
魔法の種
精霊の種
スキルの種
鉱石の種
???の種
整地
農産加工
畜産加工
売買
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「明らかにおかしい項目がある」
「これが、神が使う農業スキルなんですよ。このスキル1つで生活できる環境が整うでしょう?」
「それはそうだけど…。それで、スキルポイントが…1億ポイントあるんですが…」
「ファシル様のプレゼントだそうです。何も無い場所で1から始めるわけですから特別に…と」
「ありがたく使わせてもらおう。とにかくまずは農地を作るために農業用具を購入しないと…」
農業用具をタップするとまた画面が切り替わる。
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農業用具
鍬…5ポイント
鉄の鍬…15ポイント
鋼の鍬…25ポイント
銀の鍬…50ポイント
金の鍬…100ポイント
ダイヤの鍬…200ポイント
ミスリルの鍬…500ポイント
アダマントの鍬…700ポイント
ヒヒイロカネの鍬…1000ポイント
オリハルコンの鍬…3000ポイント
神鋼の鍬…10000ポイント
鎌…5ポイント
鉄の鎌…15ポイント
鋼の鎌…25ポイント
銀の鎌…50ポイント
金の鎌…100ポイント
ダイヤの鎌…200ポイント
ミスリルの鎌…500ポイント
アダマントの鎌…700ポイント
ヒヒイロカネの鎌…1000ポイント
オリハルコンの鎌…3000ポイント
神鋼の鎌…10000
如雨露…5ポイント
魔法の如雨露(病気耐性)…1500ポイント
魔法の如雨露(追加効果)…1500ポイント
魔法の如雨露(栄養増加)…1500ポイント
魔法の如雨露(旨味増加)…1500ポイント
魔法の如雨露(神憑り)…5000ポイント
農業スキルのレベルが上がると種類が増えます。
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「とりあえず農具は最高のモノを選んで…ジョウロはこの『魔法の如雨露(神憑り)』でいいか」
「迷わずに最高級品を選びましたね。まあ、その方が後々楽なんですが…」
選択した3つをタップすると、目の前の地面に選んだ3つが現れる。
神鋼系の農具は煌びやかな光沢を放っており、魔法のジョウロは青光りしている。
「それでは、まずは『整地』しちゃいましょう」
「整地?そう言えばそんな項目があったな…」
農業スキルの項目から『整地』をタップしてみると、説明文には「土地をならして、雑草などを除去して土壌を整える」と書かれており、使用ポイントは10000らしい。ポイントは多めだが広さは無限に指定できるのだ。
俺は、村を含む30万平方メートルを指定する。すると建物が消え、石や雑草もなくなり平面の大地が出来上がった。ただし、大地の形は変わらないのでなだらか波型になっているところもある。
「さあ、早速どんどん耕していきましょう」
こうして、俺の異世界での初めての農作業は始まったのだった。