プロローグ
不定期連載になると思いますが、よろしくお願いします。
安住進の人生は他人から見れば馬鹿な生き方だったと言える。本人からすれば普通の生き方だったらしいが…。その生き方はあまりにも利口な生き方とは言えないモノだった。
まず、彼は『孤児』であった。生まれてすぐに孤児院の前に捨てられたのだ。だが『幸運』にも彼はすぐに裕福な夫妻に引き取られ『安住進』の名を得たのだ。
安住家での暮らしは進にとってとても恵まれた環境だった。そのうえ、進は幼少のころから文武両道に長け人格者でもあった。しかし進には1つ欠点があった。人の2つは上をいくほどの好奇心の持ち主であったこととと、困った人がいると助けてしまうという進自身が困った人間であった。
興味があることには知識で調べ倒してなお、実際の場所に訪れて自分の目で見るまで止めようとしない。にもかかわらず順番を譲る、席を譲る、自分で出来ることなら全力で手助けしてしまうのだ。それでもどうにかなるのは、なぜか彼は幸運を引き寄せる体質でもあったことだ。宝くじを買えば当たる。危険な目に当ても何故か助かる。また、細々とした幸運は数知れず…そのせいもあって、彼が人を助けるのをやめることはなかった。
これは彼曰く、「俺は幸運に恵まれたから恩返しがしたいんだ」ということだった。
しかし、そんな彼にも最後の日はあっけなく訪れた。
死んだ理由も実に彼らしいものだった。車に轢かれそうになった子供を庇っての事故死だった。
海外に旅行に出かけてコレである。
「…俺、死んだのかぁ」
目の前に広がる景色を眺め、俺はそう言葉をこぼした。
そこは明らかに死んだときの場所とは違い、まるで『花園』であったからだ。
「うむ。見事な死にっぷりじゃったわ」
「…えっと?もしかして神様ですか?」
いきなり目の前に現れた白髪に白髭のおじいさん。
不思議な雰囲気が漂うおじいさんに俺はその言葉を口にした。
「よく分かったのう。まあ、創造神と呼ばれておるよ」
「何となく人じゃないような気がしまして……って、創造神!?」
「一応、神の中の最高権力者じゃよ」
「はあ…」
あまりの驚きでため息が漏れる進だった。
「それにしても、お主…死んだというのに冷静じゃのう」
「まあ、死んだなぁ…と思ったので、逆に冷静に受け止められたというか…」
「確かに…アレで生きてられるとか思えんか…」
本来なら子供が轢かれて終るべき死亡事故だった。それを無理やり横入りした形だったのだから…。
「あの…あの子は?」
「ふむ。それがのう…お主が抱き抱えておったので車に轢かれてもピンピンしておるよ」
「それは…よかったと言えるのでしょうか?」
「まあ、ある程度心には傷を負ったじゃろうが…こればっかりはのう」
「…ですね」
目の前で助けた人間が死ねばなぁ…。でも子供で良かったのか?小さいうちなら忘れてしまうかもしれないし、別の国の人間だしな。
「それで、俺は天国にこれたということでしょうか?」
「急に話が変わったが…まあいいじゃろう。ここは天国ではない。神の国じゃ」
「…え?神の国なんですか?」
「そうじゃ。本来なら死ぬ運命にあった子供を救ってしまったお主の『極大幸運』をこのまま終わらせてしまうのは『惜しい』と思ってのう」
「…はい?『極大幸運』?」
「周りにも幸運を振り撒いてしまうほどの幸運…まあ、それを『極大幸運』と名付けたわけじゃ」
「はあ…」
その割にはあっさり死んだなぁ…。いや…人の運命を無理やり変えたんだから仕方ないのか?
「しかし…同じ世界に生き返らせるわけにもいかん。生まれ変わらせるには色々と問題もあってのう。そこで、別の世界に生まれ変わらせようと思うのじゃが…どうかのう?」
「…それは問題にならないんですか?」
「普通なら問題になるんじゃが…場所が場所なので大丈夫じゃ」
「…どんなところなのか気になります」
「まあ、簡単に言えば…剣と魔法と精霊とスキルの世界じゃ」
「…ゲームの様なところですね」
「反応が薄いのう。まあ、地球の娯楽を基に作った世界じゃからのう」
「え?わざわざ作ったんですか?」
「確か…こちらの時間軸で10年ほど前にな。まあ、向こうでは1万年は経っておるので、それなりに文化は進んでいるが…なにせこちらとは違うのでな。文化的にも中世くらいにしか発展しておらん」
「ますますゲームのまんまですね。もしかして…モンスターもいるとか?」
「それは仕様じゃろうて」
「大丈夫なんですか?」
「まあ、簡単に死なれても困るんでな。それなりにするつもりじゃ」
「…あの、行くのが当然というノリになっているんですが?」
「行かんのか?」
「いや…行くか行かないかと聞かれれば行きたいんですけどね」
「では行くんじゃな?」
「そりゃ、面白そうだし行きますよ」
「それは何よりじゃわい」
せっかく生き返らせてもらえるというのだからこれを見逃す手はないわけで…。まあ、俺の好奇心が疼いたのは言うまでもない。
「まずは『神の恩恵』を与えねばな。集まるにじゃ。『アヴァロンの神たち』よ」
「アヴァロン?」
「君が行く世界の名前じゃよ」
「色々と突っ込みたい名前ですね。止めておきますが…」
多分だが、神様が作った世界にもツッコミどころが多いんだろうなと思う進だった。
「まあ、色々と思うところはあるじゃろうが、まずは神々たちの紹介じゃ」
「…これはまたすごいメンツですね」
目の前に現れたのは美男美女の神様方だった。
「まあ、できたばかりの世界の神なんで若いもんばかりじゃが、実力はちゃんとあるぞ?」
「いえ…そう言う心配はしていません。何と言うか…軽い嫉妬とでも言いますか」
「神の容姿なんてみんなこんなもんじゃて。では、右から紹介しようかのう。武の神『アルメス』、魔法の神『メルディ』、精霊の神『レネシア』、鍛冶の神『ヴァファス』、商の神『シリウス』、狩猟の神『ネミリー』、酒の神『ルイファー』、農業の神『ファシル』じゃ」
「剣と魔法と精霊とスキルの世界だけあって個性的な神々ですね?」
武の神・魔法の神・精霊の神・狩猟の神・農業の神は女神だ。この際男の神は無視だ。どうせなら女神のほうが良いじゃない。…あれ?農業の神と呼ばれた女神様の表情が暗い。
「あの…なんか、農業の神様の表情が暗いんですが?」
「それがのう…ほれ、農業って地味じゃから人気がなくてのう…」
「それで…」
耳打ちするように小声で話をする。しかし、人気云々のところでファシル様の身体がビクッと反応する。どうやら、聞こえたらしい。確かに、農業って良い印象がないよな。
「この中から1人だけ専属の神を選ぶがいいぞ」
「あ…はい。じゃあ…」
そして俺は1人の神様を選んだのだった。
気がつくと目の前には別の景色が広がっていた。




