8話 我が家へようこそ
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「ハア、ハア、ハア…やっと見つけた」
『匂い』に惹きつけられてアタシは『ココ』に辿り着いた。目の前に広がる沢山の食べ物。しかしそれはどう見ても自然の物ではない。
「バレないように少しだけ貰っていこう」
自分に言い聞かすようにそう言うと食べ物を取っていく。
『アイツら』のためにも…。
「しかし…これはいったい誰が?」
周りを見渡しても人の住む家が見当たらない。あるのはとてつもなくデカイ『巨大樹』だけ。なのにどう見ても人の手で耕したと分かる広大な土地。普通ならこんな異常な場所は少しでも早く立ち去るべきだろう。なのに…とても居心地が良い感じがするのだ。
「とにかく…アイツらのところに帰らなくては…」
赤い月が照らす中、アタシはこの場を後にするのだった。
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「さーて、今日も1日いっぱい働きますか」
「やるっキュ」
「それにしても…結構派手に荒らされましたね~」
「だね~。こりゃ、全部取ってから新たに植え直した方が早いね」
「では、取ってしまいましょう」
昨日植えた野菜たちを採取していく。…あれ?
「これ…」
途中でスッパリと斬られたような感じで作物が取られてる?
「スライムって枝も食べるの?」
「雑食性ですから何でも食べれますが…どうしたんですか?」
「いや…これ、斬られたっぽい感じだったからさ」
「そう言えば、こっちのもここのも…同じですね」
「こっちにもあるっキュ」
「どうやら、スライム以外に野菜を取った者がいるみたいだね」
多分、寝ている間に盗んだんだろう。しかし、それはモンスターではない。モンスターなら魔法の柵によって入れないからだ。それにこの切り口は…。
「刃物のような鋭いもので斬ったって感じだし…人が入り込んだのかな?」
「可能性は高いですが、亜人の方がより上かと…」
「亜人?そう言えば魔法の柵を植えるときにそんな表示を見たっけ?」
「亜人とは、この世界における人間以外の二足歩行ができる知能人を表します。獣人やエルフ・ドワーフにポックル人に竜人やリザードマンに魔族などがその代表ですね」
「へー。アヴァロンにはそんな種類が豊富にいるんだな。会ってみたいもんだ」
「ここがもう少し発展したら近くの村や町を見て周るのも良いのではないでしょうか?」
「そうだな。急ぐこともないし、まずはここで色々やっていこう。でも、その前に畑を荒らす者を特定しないとね」
「そうですね」
話が決まったところで俺はもち米を植えに行き、ライムが種植えをナビ子さんが水くれをしていく。もち米を植え終わった俺はまた何種類あの野菜を交配させたり農業スキルの種を何種類か植えたりして午前の仕事は終わった。昼食後は、薬品の種で作った新しいポーションでの野菜交配をしてはそれをライムに植えてもらいナビ子さんは水やりをするという流れを繰り返し、気づけば夕方まで仕事をしていた。
「疲れましたです~」
「ライム、頑張った~キュッ」
「2人ともお疲れ様。今日1日で昨日の5倍は作物ができたね~」
「せっかくですから、今日作った野菜で湯職を作りましょう」
「食べたい~キュッ」
「そうだな。じゃあ…『カレー』でも作るか」
俺の予想通りなら畑を荒らした者『たち』も腹を空かせているだろうから多めに作ろう。午前中に植えた種の中に生活用具の種から『寸胴鍋』を植えておいたのだ。それと野菜を数種類採取して家路に着いた。
「ナビ子さんはいつ戻りサラダを作ってくれ。ライムは玉ねぎを微塵切りにしてフライパンで飴色になるまで炒めてくれ」
「わっかりました」
「やるキュッ」
「俺はそれ以外の野菜と肉を一口サイズにカットしていく…と」
家カレーは、豚肉と鶏肉の2種類を使い、カレー粉も3種類使って味を深めるようにしている。
カットした人参・じゃがいもは一度レンジで温めておく。これは熱を通すことで煮込む時間を短縮させると同時に煮崩れを防ぐ効果もある。肉も一度焼いて余計な油を抜く。まあ、これは好みなので油が好きならそのまま煮込むほうが良いだろう。寸胴鍋に水を入れ沸騰させたところに全部の具材を入れて煮込んでいく。香辛料の種で作った『カレー粉』を入れて焦げつかないようにかき混ぜていく。煮込みはライムに任せて、俺はご飯を炊いていく。そう言えば加工食品の種で『福神漬け』も作ったっけ?アイテムボックスのリストを確認し、福神漬けを取り出す。
「サラダ、出来ました」
「んじゃ、2/3はアイテムボックスにしまうな」
「こっちも完成~キュッ」
「よし。ご飯も炊けたぞ」
カレー皿にご飯を盛りカレールーをかけて福神漬けを添えれば『カレーライス』の出来上がりだ。
サラダにはシーザーサラダドレッシングをかける。
「では―――」
「「いただきます(キュッ)」」
パクリと一口。カラッ。うまっ。ん~……これ!これだよ。カレーはこうじゃないとね。
「辛いけど美味いです!」
「ブワッとするけど美味いキュッ」
「ちょい辛が良いね~。それに肉の旨味が出てるなぁ」
「この福神漬けと言うものが別の辛みがあるのにカレーに合います」
「このサラダも美味しいキュッ」
「クスッ。…おかわりは?」
「「いただきます(キュッ)」」
俺とナビ子さんは2杯、ライムは3杯食べた。香辛料の効いた本格カレーはそれはそれで美味いのだが、やっぱ家カレーには敵わないよな。まあ、これはどの家庭でもそうだろう。
食べ終わった俺たちはそれぞれ寝るまでの時間を普通に過ごす。来るのは夜中だろうからね。
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「……」
暗闇の中、アタシは『あの場所』へと向かった。
危険なのは承知の上だがあの食べ物にはそれだけの価値がある。美味いというのもあるが、アレを食べてから身体が軽く力が湧いてきたのだ。アイツらも元気になったし、少々危険でも取りに行く価値は十分にある。
「…な、何だこれは…?」
目の前に広がる風景にアタシは驚くと同時に恐怖した。
そこには目の前を覆いつくす作物があったのだ。たった1日でこれほどの作物が実るはずはない。だとすればこれは魔法の類いだろう。と言うことはやはりこの作物たちは―――。
「やっと来たね」
「――ハッ!?」
「警戒しなくていいよ。…と言っても、信じてもらえないと思うけど。でも、分かるだろう。もしも危害を加える気なら君はもう死んでいるからね」
「…そうですね」
「聞きたいことがいくつかあるだけど、いいかな?」
「…何?」
うむ。まだ警戒しているみたいだな。まあ、しょうがないか。このまま聞きたいことを聞いていこう。
「まず1つ目。昨日もここから作物を取っていったのは君で良いんだね?」
「そうです」
「2つ目。どうしてもっと取らなかったんだい?」
「…必要以上に取るのは気が引けたから…」
「つまり、盗むことに抵抗はあったわけだね」
「…ただ、言わせてもらえば民家が見えなかったから自然に生えたかもって思ったのも事実です」
「それならしょうがないね。じゃあ、3つ目。君の他にも食べた人がいるよね?何人いるの?」
「…5匹です」
「え?動物?ペットってこと?」
「いえ…私と同じ獣人です」
「…え?獣人って『匹』って言うの?」
「この世界では一般的そうなってます」
何だろうね?この違和感わ。まあ、今このことを深く聞くと話が進まないし、とりあえず今は置いておこう。
「じゃあ、最後の質問。どうして君たちはこんなところにいるんだい?」
「…アタシたちは、捨てられたんです」
「…そうか。俺の予想は当たってたか…」
こんな捨てられた場所に人はいないはずだ。もしも旅人ならこれ幸いと全部取っていくだろう。だが、盗まれた数は極わずかだった。だとすれば、この予想は簡単に思いつくわけで…。
「じゃあ、迎えに行こうか」
「え!?」
「放っておくわけにいかないだろう。捨てられたってことは君くらいの小さい子なんだろう?だったら保護しないとな」
「…あの、アタシたちじゃ奴隷になれないわよ?」
「奴隷?ナビ子さん」
「はい。この世界には奴隷制度があります。でも、奴隷にできるのは14歳からなんです」
「へ~、そうなんだ。ちなみに君の歳は?」
「…13歳です」
「なるほどね。じゃあ、行こうか。案内してくれるかい」
「だから…」
「別に奴隷にするつもりはないよ。言ったろ。放っておけないって」
「助けたいって言えばいいじゃないですか」
「だって、厳密には助けるつもりじゃないからなー…」
そう。保護はするが、助けるためじゃない。まあ、悪いようにはしないさ。
「…こっちよ」
案内されるままに進んでいく…が、こうも暗いとなぁ。
「くそ。なんか照らすもの持ってくれるんだった」
「それなら任せてキュッ。…『明かり(ルース)』」
ライムがそう口にすると、透明な球体の中に火が灯り辺りを照らした。
その範囲は円にして50メートルは照らしているだろう。これなら、安全に歩ける。
「ありがとうな、ライム。それじゃあ、急ごうか」
「そうですね」
「ん…」
獣人の女の子を先頭に俺、ナビ子さん。ライムの順でついて行く。
急いでいくのは獣人の子たちが心配と言うだけではない。この明かりだとモンスターを引き寄せる可能性が高いからだ。
「そう言えば、名乗ってなかったね。俺の名前はススムだ」
「ワタシはナビ子です」
「ライムっキュ」
「アタシは…ヴェルビアターラ」
「長い名前だな。ヴェルって呼んでいいか?」
「…それでいいです」
「分かった。じゃあ、そう呼ぶようにするな」
なんとなく苦笑いしていたヴェルだが了解は得たので良いだろう。
その後無言で歩くこと10分。森の入り口に着くとヴェルが駆け足である茂みに近づいた。
「みんな、出てきて」
「…お姉ちゃん~」
「お腹空いたよ~」
「食べ物~」
「えっぐ、えっぐ…」
「…(ぐー…)」
茂みから一斉に飛び出してきたのは、まだ年端もいかない小さい子供(獣人)たちだった。
「これで全員?」
「はい」
「じゃあ、帰ろうか」
「え?あの…どういう?」
「ここで話しているとモンスターに襲われるかもしれないから、自宅で話すほうが良いだろう」
「分かったわ…」
ヴェルと話をまとめたところで俺は子供たちに近づいた。
「よし。みんな行くぞ。歩けるか?」
「…えっぐ、えっぐ…」
「ようし、じゃあ、肩車だ」
「…あう。わあっ。高~い」
「ああっ。良いな~」
「俺も俺も」
「じゃあ、順番でな」
「さあ、行きましょう」
ナビ子さんの言葉で歩き出す一行。途中、肩車を交代しながら帰宅だったの15分ほどかかった。
「ここが、俺たちの家だ」
「あの巨大樹が家だったなんて…」
「さあ、入って。まずは食事にしよう」
「わ~い。食べ物~」
「お腹空いた~」
「お家に入って良いの?」
「ああ。今日からは君たちの家でもあるからな」
「わ~い」
「お家~」
「お、おい…」
『入れよ、ヴェル」
「良いのか?」
「言ったろ。今日からここが君たちの家だ」
「…ありがとう」
涙ぐみながら感謝の言葉を口にするヴェル。俺は照れ臭くなりそのまま家に入るのだった。




