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魔法の石と消えた村  作者: 白桜
第1章
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第8話 森の先には

 「……何か怒ってるのか?」

 「怒ってそう……。」


 瑜磨(ユマ)未依(ミイ)は先行く梦羽(ユメハ)の背中を見てヒソヒソ話す。


 梦羽は一度もこちらを向かず、歩いていた。彼女が草木を軽く踏んでくれているおかげであとから歩いている兄妹は歩きやすい。歩いていくとだんだん視界が広がっていく。


 「着きました。ここです。」


 目の前には自然に出来たことを思われる滝があった。今いる場所から数百メートル先には高さ数メートルの崖があり、その上から水が流れていて、その下には泉が出来ていた。そこから少し離れた場所には小川も、大きな岩もある。森の中だからか、静かで葉の揺れる音と水の音しかしない。


 「おぉー……。」


 「瑜磨くんはこっちで服を脱いで服を渡してください。未依ちゃんは私と一緒に洗うのを手伝ってください。」


 梦羽はてきぱきと指示を出し、兄妹はそれに従う。


 瑜磨は滝の近くにある岩の側で脱ぐ。


 「…服を着たままでもいい気がするが……。」

 「風邪引きます。」


その言葉は正論だったため、瑜磨は渋々脱いでいく。脱いだ服を岩にかけてそれを未依が取り、小川で洗う。瑜磨は服を全て脱ぎ終わり、かけ終わると滝の中に入っていく。


 「うわ…血が……。」


 透明だった泉の水がベトベトだった赤黒い液体と混ざり合い、濁る。その代わりに瑜磨の髪からそれはなくなった。


 「でも、滲みるな。」


 肩の傷に水があたるとツキンと滲みたが、血が出てくることはなかった。梦羽の手当てのおかげだろう。


 瑜磨は冷たい水で髪を洗い、水浴びという名の一時の己の自由時間を楽しんだ。



 一方の女子達はコートやズボン、シャツを洗っていた。1番血がついていないズボンを水に浸す。酷くついているコートとシャツを先に洗うことにした未依と梦羽。


 「酷いですね…これ……。」


 未依はシャツを広げると胸元には縦に広がる血の痕。それは白狼と瑜磨の血が混ざってあることを目の前で見たため知っている。


 「そうですね。」


 梦羽はそれだけ言うと水に手とコートを入れてごしごしと洗う。その間は目の前の血を落とすことに必死になって沈黙の場が数十分続いた。しかし、そのおかげで血が大分落ちたが水だけでは完全に落ちるわけではなかった。


 梦羽は緩んだ気を引き締めるために息を吐いた。


 梦羽は荷物の中から瓶を取り出した。中に入っているそれは彼女がよく使っている白い液体だった。


 「それ、何ですか?」


 「これ?これは特別な材料で作った洗剤。その名を画期的洗剤!」


 どや顔をした梦羽は画期的洗剤を血がついてある箇所に数量垂らした。すると泡が立ち、白かった泡が血を浮かせ、赤くなっていく。


 「そろそろかな?」


 頃合いを見て泡を水で洗い流せば綺麗に血はなくなった。


 「おぉ〜♪」


 未依は目を輝かせ、綺麗になったコートを見つめる。


 「後は…縫いますかね……。そうだ!未依ちゃん使います?」


 梦羽は未依に画期的洗剤見せる。何かあっては困るので注意事項を述べた後に渡した。ぽっかり空いた穴を縫うために荷物から裁縫道具を取り出した。


 「さて、縫おっと……。」


 そう言うと糸と針を出し、切れた部分を縫っていく。思っていたよりも穴が大きく、梦羽は首を捻りながら縫う。


 一方の未依は早く落としてしまうと画期的洗剤の量を大量にかけてしまう。するとモコモコと洗剤は泡立ち、シャツからはみ出て未依を包み込む。


 「ゆ、梦羽さっ……!」


 「はい?……ええっ!?」


 縫っていた梦羽が振り返れば未依の首から下は泡に埋まっていた。


 慌てた様子でシャツを未依から取ろうと手を伸ばす梦羽。しかし白く大量になった泡のせいでシャツが何処にあるのか分からず、上手く掴めなかった。そのまま梦羽も巻き込まれてしまった。


 「梦羽さっ……、」


 __ガルルルァァア……!!


 耳に入るは先程も聞いた白狼(ハクウルフ)の雄叫び。何処にいるのだろうか、あちこちに聞こえて場所がイマイチつかめない。


 そんなときに梦羽が泡から苦しそうに顔を出した。


「何で今……!あぁ……、もう嫌だ……!」


 梦羽はその一言二言を呟くとまた泡の中に入ってしまう。


 「梦羽さん!」


 「未依、梦羽、さっきの雄叫びは…ってどうしたそれ。」


 瑜磨はきれいさっぱり綺麗に洗い終わって爽やかな笑みを浮かべていた。


 ……ただし、裸でだった。


 「お兄ちゃん、服着てよ!そして白狼達をやっつけて!僕達は今は戦えないし!代わりの服あるでしょ!?」


 「服?……わかった。」


 瑜磨は自分の荷物を漁り、綺麗に畳んであった服を着る。そして岩場に置いてあった愛刀、紅凍刄(コウトウハ)を鞘から抜き出し、走り出した。


 陰から出てきた白狼数匹を息も吐かせないほど早く斬っていくが、血飛沫がかからないように体を回転させながら斬っていく。


 そうして戦っていくと数分の内に白狼らは死に、緑の草木が赤く染まった。


 「ふぅ……。で、何してるお前らは。」


 「ごめん、梦羽さんが貸してくれた洗剤の量を間違えて……。」


 顔を覗かせた未依の言葉に瑜磨はぽりぽりと頭をかき、未依と梦羽の腕を掴み泉に投げ入れた。


 「うわっぷ!!」

 「きゃぁあ!?」


 泉に浸かったおかげで泡が一気に消えてスッキリしたが、二人は水浸しになった。


 「いたた……。も〜!何なのさお兄ちゃん!!お陰で濡れちゃったじゃないか!」


 「じゃあ言わせてもらうがあのままが良かったか?」


 「……イエ、申シ訳アリマセンデシタ。アリガトウゴザイマス」


 未依はあのまま泡だらけでいたらと想像して首を横に振り、他にも方法があったら……と頬を膨らませ、不満を爆発させて水面を叩く。対して梦羽は白狼について考えていたために静かだった。


 


 未依と梦羽が水浸しになってから5分後。3人は歩いていた。


 濡れていた服はどうしたかと言うと、梦羽が持つ『ストーン』の『ローグクオーツ』の力を使って乾かした。


 瑜磨の着ていた服はバックの中だが、穴が空いてしまったシャツは直したところで凸凹しててかっこ悪いと捨てた。


 「もったいない!」と梦羽がブツブツ言う隣でポイと捨てて火で燃やした。


 「も〜……。もったいないのに。」

 「……お兄ちゃん、さっきの火って何処から出したの?」


 「え?火なんか出してたか?」


 瑜磨は噛み合わない会話に「気のせいだろ」と言って終わらせ、先を歩いていく。後に続く未依と梦羽。


 数時間後。3人は無事に森を抜けて、やっと道らしい道が目の前に見えた。未依が望遠鏡を取り出し、道の先を見る。


 「あれ!何か街が見えるよ!」


 「貸せ。」


 瑜磨が未依から望遠鏡を奪い取り、先を見る。確かにそこには建物が建っていて、うっすらだが人影も見えた。


 「よし、行くぞ。」


 望遠鏡を未依に返し、歩いていく瑜磨。未依は望遠鏡をバッグにしまうと歩き出した。その兄妹の後を追いながらも心ここに非ずの梦羽。


 「道がかなり続いてる。望遠鏡で見てたら近そうだったのに。」


 未依は両腕を頭に乗せながら近くにあった石を蹴り飛ばとコロコロと転がった。その石はカツンと軽い音をたてて十センチ程の大きめの石にぶつかり、道の横の芝生の坂をかけていく。


 「いっ……!」


 人の声が聞こえた。


 「何かに当たった?」


 しかし、人が出てくる気配が無く、兄と梦羽に置いていかれそうだったために小走りで二人の後を追った。


 「って……。(スネ)やったじゃねぇか。……よし。」


 石が脛にあたった男はムクリと体を起こし、未依達の後ろ姿を見た。口元に手を当ててニヤリと笑った。


 


 「「凄い……!」」


 未依と梦羽は目を輝かせた。道の先にあった街は見たことのないもので溢れかえっていたからだ。


 高い建物が並ぶその街には地面にタイルが敷いてある。タイルによって土や石はないからか、素足で歩いている人もいた。


 だが、街を歩く人々は皆見たことのない綺麗な服を着ていた。



 「ん?ここは何て言う街だ?」


 「ここはサキワラ街と言いますよ。旅のお方。」


 瑜磨が声に驚いて振り返ればそこには目鼻立ちがしっかりしている白髪の美女が立っていた。微笑みながらお辞儀する。その時にチラリと美女の素足が見え、瑜磨を除いて近くにいた男性達は頬を染めた。


 「あの、美しい貴女が着ているものは何ですか?」


 「まぁ、お口が達者な可愛いお嬢さん。これは着物と言って、サキワラ街に住む人皆着ているのですよ。」


 「そうなんですね!」


 梦羽は頬を赤く染めながら今にも跳び跳ねる位に興奮した。着物について教えた白髪の美女も頬を赤く染めていた。


 「もし良かったら着てみます?」


 「いいのですか!?」


 美女は「ええ」と一言言い、梦羽の

手首を掴んで歩き出した。


 「お嬢さんと一緒に来たお2人様もどうぞ♪」


 瑜磨と未依は何かありそうだと警戒しながらも後をついて行った。

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