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 【Lank2:薬師くすし見習いの悩み】

 妹が熱を出してしまったんです。熱さましを作ろうと思って、師匠にモンスターの出現するファラ草原の泉に生える薬草、《ヒールハーブ》を貰ったんですけど、うっかり失敗して駄目にしてしまって……。

 師匠と妹にバレないように、ヒールハーブを採ってきて下さい。お願いします。


              NPC:エルベルムの薬師見習い テイハ


 クエストを受けよう、と言い出したのはフレアだった。おおよそのヘルプを読み通し、街を歩いて、最低限の初期装備を手に入れ(父親の情報を集められるかと期待していたのだが、そもそもこの世界でも同じ名前とは限らないことを思い出すと、サクッと人に聞いてみる、というのはユキナリには難しかった)、その後街中の依頼掲示板の前での発言だった。

「いきなりランク2のクエスト? まだレベル1で、ロクに戦いもしてないのに」

「採集クエストなら、敵を倒さなくても達成できるじゃない。ドロップアイテムじゃないみたいだしね。今はまだレベル1だから死んでも能力へのペナルティは無いってヘルプにあったし、記憶石で復活してログアウトできるんでしょ? だったら、この世界がどんなゲームなのか知る上でも、別に悪くないと思う」

 そうフレアが自信たっぷりに言うので、フィンブルもまあいいかと首を縦に振った。


【Lank2クエスト:薬師見習いの悩み を受注しました】


「初クエストか……上手く行くといいな」

 フィンブルは依頼掲示板を後に街の圏外を目指しながら、少しだけ嫌な予感を感じていた。



 ホッドミミル広場から探索へと動き出したフィンブルたちは、異常に広い街の隅から隅まで歩き回った。得られた情報によれば、この街の名前は《エルベルム》、中心部の超大樹《ユグドラシル》の根元を取り囲むようになっている、やたらと広いもののそう入り組んではいない街だということだ。樹上の都市フェリエスターデンには2回クラスチェンジを経ないといけないらしい。


 街中で最も安く品揃えのよい店で、フィンブルたちは装備を整えた。初期の所持金は多くはなかったが不足もせず、フィンブルは攻撃速度とクリティカル補正の高い曲刀を、フレアは魔力補正を期待して、アミュレットなどのアクセサリは買わずに短杖をメインアームに選んだ。防具は服を優先して取り敢えず盾は買わず、フィンブルは地味な革の服、日乃は褪せた赤色のローブを選んだ。残りで回復用の薬を買うと、それでだいたいのお金は使い果たされた。因みに、この世界の通貨の単位は《トレノ》だ。


 スキルは二人とも初期状態で二つしかスロットがなく、これがレベルアップとともに解放されていくらしい。フィンブルは《曲刀》と《移動マスタリー》を、フレアは《火属性魔法》と《無属性魔法》を選んだ。


 そして、先ほどフィールドと街を隔てる門に程近いところにある依頼掲示板で、NPCの何度でも受けられるフリークエスト《薬師見習いの悩み》を受注し、現在。フィンブルたちはエルベルム北西の《ファラ草原》の、まだ街から幾らも離れていないあたりを歩いていた。


「あのさー、フィンブル」

 フレアが気だるそうな声でフィンブルに話しかけた。

「何?」

 フィンブルは振り返ってフレアを見た。すると、フレアが息を大きくすって叫んだ。


「なんでこの草原はこんなに広いのよ! 泉なんて影も形もみえないじゃない!」


 その叫びは確かにフィンブルも多少は心の内に秘めていたことだったが。

「おい、フレア。今お前が叫んでくれたおかげで、なんか来るぞ」

「へ?」


 ユキナリの視界の隅をぼんやーり動いていた超巨大ネズミ(だいたい体長1メートルくらい)が、フレアの叫び声(シャウト)に反応してこちらを向いた。フィンブルたち二人を視認して、ききーーーーぃ! と鳴き声を上げる。今のフィンブルと同レベルであることを示す赤いカーソルが表示される。


「あーあ、タゲられちゃったし……。記念すべき初バトルのきっかけがお前の叫びってなんなんだよ」

「う、うるさい! さっさと戦う!!」


 こうして、フィンブルとフレアのエヴォルヴァースに於ける初めてのバトルが幕を開けた。

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